上 下
25 / 56

25

しおりを挟む
「みなさん、お待たせしました」
「その顔だと無事に武器を頼めたようだな」
「ええ、おかげさまで」
「それでユウタは工房に籠って、社長にここまで連れてきてもらったんだな」

 友太先輩を理解しているようで、鼻で軽く笑らい言い当てられる。

 それなりに付き合いがあらば、分かりやすい性格だからお見通しなんだよね。
 この感じだと呆れられてる感じではなさそうだから、案外二人は知人以上の仲良しの関係なのかも?

「君はあたしのことを知っているのか?」
「『輝きの丘商会』の社長は今や有名人ですよ。創設七年で一流商会に育て上げた若き女社長。獣人族では美人と聞いていたが、人間でも美人枠に入りそうだな」
「ありがとう。それが本当ならば光栄なんだが、何か裏があるんだよな?」

 なぜかフランダー教授はリーダーを褒めちぎるけれど、あまりにもデフォルト過ぎて逆に怪しまれる。 リーダーも産みの親の一人だから、フランダー教授を良く知っている。
 心理戦は通用しない。

 裏がなかったら、こんな褒めちぎらないもんね。
 フランダー教授は、一体なんの取引をしようとしてるんだろ?

 リーダーもビジネス体制に入って、たちまち周囲がピリピリしだす。

「何も裏はありませんよ。ただ少しビジネス話をしたいと思いましてね? 私達は神話と言われる禁忌を犯した愛の神クードの牢獄場所を探しだし、コンタクトを取ろうとしてるんです」
「あ、出資のことなら安心しろ。あたしはエミリー嬢のパトロンになった」
『!!』

 さっそく話を切り出すフランダー教授だったけれど、リーダーはそう言い私を抱き寄せる。
 みんなの前だからエミリー嬢なのか。新鮮でくすぐったい。
 しかし三人は揃いも揃って、顔を青ざめプリーズ。

 ?

「みんなどうしたの? 良かったんでしょ?」

 ヌクも私同様戸惑い首をかしげる。

「誤解するな。エミリー嬢に投資をしたり、相談相手になるだけだ。……朋子すまん。どうやらやましい方のパトロンを想像してるらしい」
「!! そんなのあるはずがないでしょ? 汚らわしい」

 赤面化するリーダーに耳打ちされ、ショックのあまり声をあらげた。
 十八禁にした覚えがない。
 確かにパトロンはそう言う意味もあるけれど、誤解されるなんて夢にも思わなかった。

「も申し訳ありません。そうですよね。お嬢様に限ってそれはないですよね」
「……百合展開は好」
「は、なんか言いました?」
「いいえ」

 カイリの知りたくない特殊な趣味を知ってしまう。

 百合がお好みって、この子の彼氏はイケメンだよね?
 見る専?

「私も謝るよ。すまなかった。だとしたら未来の聖都王妃だから先行投資?」
「いいや。昔幼い彼女に命を助けられたことがあってね。その時の恩返しだよ」
「なるほど」

 一番あってはいけない予想を立てられ発狂しそうになるも、リーダーのおかげでそれっぽい筋書きに納得してもらう。
 ヌクのおかげで私に気づいたにしとこう。
 嘘でも未来の王妃だから、投資にならなくって良かった。

「これからよろしくお願いしますね? キツネのお姉様」

 幼い時出会った設定なので、敢えて可愛らしい呼び名で呼んでみる。するとリーダーは耳をピンと立て、嬉しそうな表情を浮かべた。

「ああ。こちらこそ。一人記録係を同行させて構わないだろうか?」
「それはありがたい。申し遅れたましたが、私の名はスワン フランダーと言います」
「これはどうも。あたしのも渡して置きます」

 名刺と言う概念がこの世界にもあるようで、二人はかしこまり名刺交換をする。

 何それ?
 私も欲しいんですが。

「エミリー嬢にも渡しておくな」
「ありがとうございます」

 心を読まれて私にもくれる。

 輝きの丘商会
 CEO
 アヤネ クサラギ
 ビットハム タフィリル571  カガヤキビル

 名刺を見て、初めてこの地の地名を知る。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...