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「はっ!?」
「朋ちゃん、良かった。やっと目を覚ましたんだね?」
「ヌク? え、どう言うこと?」

 目を覚まし異変に気づきガバッと起きると、そこにはヌクがいて顔をなめ盛大に喜んでくれる。
 まったく情況が読めない。

「朋ちゃんは、三日間眠ったままだったんだ。エミリーちゃんのクリスタルは徐々溶けているけれど、まだ呼びかけに応じてはくれないの。だからボク心配で心配でたまらなかった」
「三日間……。あれは前世の死ぬ間際の記憶? 間際と言っても半年以上あったけど」

 事情を話されても実感がすぐには飲み込めずに、激痛が走った頭の後ろをそっと触る。
 痛くもないし、たんこぶもなさそう。

 …………。
 冷静になって考えてみると、私の死に方ってあまりにも間抜け過ぎる……。
 まさか踏んだのはバナナの皮とかじゃないよね? 今思えば感触はバナナの皮に似ていたような? イヤあんな所にバナナの皮が落ちてるはずがないか。
 バナナの皮に滑って階段から落ちて死んだとかだったら、笑い話というか伝説になりそうで怖い。

 お父さん、お母さん、弟妹達。最後までお騒がせな娘(姉)でごめんなさい。
 花音、せっかくの記念日(仮)をぶち壊してごめんなさい。

「辛いこと思い出しちゃたね」
「え、あうん。……でも良かったこともあったよ。クード神の居場所が判明したよ。今って朝?」

 私の死んだ理由を失ヌクにでさえ打ち明けられず、重要な話に話題を変える。

「そうだよ。きっともうすぐ──」
「ヌク、お嬢様の様子はいかがでしょうか?」

 ドアの向こうから、カイリの声が聞こえてくる。
 とにかく沈んだ声で、元気もない。

「朋ちゃん、出迎えてあげなよ」
「うん、そうだね。──カイリ、ケイト、おはよう。心配掛けてごめんなさい」

 ヌクに背中を押され私もそれが良いと思ったから、急いでドアを開け双子を確認し深々と謝り迎入れる。私を見るなり双子はキョトンとなるも、すぐ我に返り大粒の涙を流し私に抱きつく。

「おじょうじゃま」
「良かったです。すごく心配だったんです」

 嘘偽りもない本心からの言葉。
 双子は本当にエミリーを大切にしてくれている。
 そう思ったら胸の奥が温かくなり、涙があふれ双子をギュッと抱き返す。
 殻に閉じこもっていたエミリーが少しだけ動き始めたのか、双子との幼い記憶が蘇る。


 双子との出会いは三歳の時。最初は双子との関係なんて分からなくって、対等の友達だったんだと思う。
 なんでも言い合えて、毎日泥だらけになるまで遊んでいた。迷子になって三人で大泣きして、誰のせいだと言い合い喧嘩したことも何度かあった。
 だけど私が悪い時でも、怒られるのはいつも双子だけ。いつしか私と双子は対等じゃなくなり距離も出来て、気がついたらご主人と侍女の関係になってしまった。
 悲しいと思いながらも、何もできず溝は余計に広がっていくだけだった。


 あ、そうか。私は本当にエミリーだったんだね?
 厳しい両親に育てられなかったら、前世の私のような自由奔放な性格になっていたのかも。今でもそんな自分になりたいと思っていたから、前世の私が産まれたのかも知れない。
 一つ気になることと言えば、レオへの恋心。私のタイプじゃないんだけれど、どうして持っているんだろう? 幼い時に許嫁と言われたから洗脳された?
 まぁ私も幼い時は白馬に乗った王子様に憧れてたから、その可能性は充分にあるな。

「カイリ、ケイト。私達昔のような友達に戻りましょう?」
「昔のような友達ですか?」
「ええ、対等な友達。昔はよく喧嘩をしたじゃない?」
「してましたね。ですが私達はお嬢様の侍女ですよ。喧嘩なんてとんでもないです」
「対等ではない友達は駄目ですか?」

 この流れならいけると思ったのに意外にもそこはガードが固く、冷静に拒否されただけじゃなくそうじゃない提案を打診される。
 これ以上強引に言えば、ただの押し付けになってしまう。

 対等ではない友達なんて、それはもう友達とは言わないんだけれど。

「そうね。着替えてくるから座って待ってて」
『分かりました』

 今日の所は諦めて次の機会にチャレンジしてみる。
 それとも特に言わなくてもこの調子を続けていれば、自然と対等な友達になれるのだろうか?

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