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「確かに教授は面白いですよね。実は俺も教授のファンです」
「ならファンクラブを作りましょうか?」
「それは面白そうですね」

 私の言いたいことをズバリと言い当てられただけではなく、微笑みながら共感もしてくれ和気あいあいとなる。

 外見体育会系なのに中身は文学系? フランダー教授を尊敬しているのがよく分かるロッシュ先輩。
 彼もまた気になるのは、モブキャラだからなんだろうか?

「そこの二人。何をこそこそ話してる?」
「たいしたことではないので、お気になさらないでください」
「だね。ちょっとした世間話ですよ」

 まさかファンクラブを結成したなんて言えるはずもなく、二人で口裏を合わせるようにたいしたことではないと返答。不満気な視線を向けられてもすまし顔でその場をやり過ごす。

「……。具体的な話を始める」

 最後に睨まれ沈黙後、話題は変わりホワイトボードに字を書き始める。
 ホッと胸をなでおろし何気なく視線をロッシュ先輩に向けると、私とまったく同じで小さく笑ってしまった。

「出発は夏休みの一週間後の七日」
「終業式すぐじゃないんだ」
「補習があるからな。それとお前達も宿題があるだろう? 一週間で済ませておくこと」
『…………』

 一週間後の真相を聞いた瞬間、私達は声を失い硬直した。

 宿題。
 私にとっては懐かしい響きではあるけれど、一週間で夏休みの宿題をするのは無理難題。
 この人は鬼か何かなのか?

「は、一週間で出来る訳ねぇだろう? お前達だってそうだろう?」
「はい。そんなの無理です」
「さすがに一週間はちょっと無理ですね」
「そうですね。せめて後三日あればなんとかなりますけど」
『は?』

 不服を感じたのは私だけではなく全員が不満を漏らすけれど、カイリだけちょっと違ったらしい。共感できない台詞に耳を疑い、カイリを一斉に注目。

 あと三日って十日で全部終わらせられる。
 この子イケメン彼氏もいるし、かなりのリア充なんじゃ?

「それ以上は延期できない。終わらなかったら諦めろ」
「あ、いいこと思いつきましたわ。夏休みの宿題を前借りしてもらいましょ」

 教師だしからぬ発言に、私の悪知恵は瞬時に働く。

「どうやって?」
「そこはフランダー教授に頼んでもらうのです」

 私達生徒にだけ負担が掛かるのは納得がいかないから、彼にもそれなりの負担を掛けさせることにした。

「なぁ?」
「そうですわね。一週間早く出してもらえれば、大丈夫だと思います」

 焦るフランダー教授なんてお構いなしに話を進める。このぐらいやらせたって罰は当たらない。
 宿題の量が分からないけど、夏休みの約二ヶ月。エミリーは優秀だから二週間あればなんとか終わるはず。

「それなら俺も終わるかと思います。教授お願いします」
「仕方がない。掛け合ってみる」
「オレはそれは無理なんだが……」
「私は微妙です」

 渋々教授は頷くけれど、ケイトとアーサーはそれでも自信なさげだった。

 ここに来て双子でもだいぶ違いがあるみたい。今の所カイリが完璧で圧勝なんだけれど、きっとケイトにもすごい特技がありそう。シナリオだと言葉をハモらせてるだけで、まったく同じクローンにしていた。

「ケイト、一緒に頑張ろうよ」
「そうですわ。もし分からないとこがあったら教えますよ」
「だったらオレも一緒にしてもいいか?」
「そうだね。みんなで勉強会をしよう」

 なぜかアーサーとロッシュ先輩も話に加わり、五人一緒に宿題をやる方向になる。
 アーサーだけだったら冗談じゃないと言えたんだけれど、ロッシュ先輩がやる気みたいなのでまぁいいかと私は思ってしまった。双子はどうだか分から

「皆さんありがとうございます。精一杯頑張ります」
「楽しみですね。勉強会」
「ええ、そうね」

 大歓迎のようで滅茶苦茶張りきている。だから私も一緒に盛り上がって楽しむことにした。
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