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しおりを挟む「あれ、朝?」
いつも通り小鳥のさえずりで目が覚める。眠たい目を擦りながら起き上がり、カーテンを開ける。日の陽ざしが差し込み清々しい朝だ。
「ヌク、出ておいで」
全身の伸びをしたら、さっそくヌクを呼び出して見る。
すると足元に魔法陣が描かれピカッと光り輝けば、何か茶色い物が飛び出し床に着地。
一瞬夢だったら悲劇だと思ったけれど、そんなのは心配無用だった。
可愛いヌクが尻尾を大きく振り、つぶらな瞳で私を見上げている。
「朋ちゃん、おはよう。これからよろしくね」
「ヌク、おはよう。こちらこそよろしく」
笑顔で挨拶を交わす。
その後昔のようにじゃれ合い幸せな時間を過ごしていると、双子の足音が聞こえドアの前で止まる。双子の部屋は私の隣だ。
『お嬢様、おはようございます。朝食に行きましょう?』
声をハモらせ元気の良い双子。
いつもの時間に私を呼びに来てくれたんだけれど、私と言えばまだ寝巻のまま。少し戯れていたはずが、一時間近く経っていた。
…………
ヤバい。早く支度をしなければ。
「ヌク、双子を出迎えてくれる? 私は急いで支度をするから」
「うん、分かった」
何も考えずにお願いして、私はパウダールームへ駆け込む。
ハンガーラックに掛けてある制服に、超特急で着替え開始。
寝る前に用意しておいて良かった。
さすがお姫様の寮部屋だけあって、とにかく豪華で無茶苦茶広い。
メインで使う寝室は20畳以上。8畳は軽くあるウォークインクローゼットと、パウダールーム。トイレとバスルームは別。
私の前世での家より広く、寮部屋とはとても思えない。
「おはよう。エミリーちゃんは急いで支度をしているから、中に入って待っててくれる?」
「あれ、ヌク? おはよう。久しぶりだね」
「おはよう。お嬢様がそう言ったの?」
「うん、そうだよ」
「ではお言葉に甘えて」
声だけでも驚きを隠せない様子がまるわかり。
この様子だとエミリーは部屋に招き入れたことがなさそう。エミリー自身も距離を取っている……私のせいでもあるのか。
「待たせてごめんなさい」
「お嬢様、イメチェンですか? すごく似合います」
「いつもと違って凛々しいです」
「そう? ありがとう」
十数分後、支度を終えた私は双子の元に行くとまず髪型を絶賛される。目を輝かせてる辺り本当っぽい。
今日は時間がないため縦ロールにする暇がなく、簡単なポニーテールにしてみました。
私も双子同様エミリーのポニーテールは、最強だと思ったね。
これを機にいろんなヘアースタイルを試してみよう。きっとエミリーはどれも似合いそうだろうな。
「お嬢様、昨日は本当にすみませんでした。私変な勘違いをしていたみたいです」
「勘違いじゃないって。だってカイリはオーランドとデートを何回かしてたんでしょ? そもそもあいつの本命は、レオ様じゃなかった?」
「え、それ本当?」
話題はいきなり昨日の話に変わるけれど、雲行きは怪しくなり思わず口を挟んでしまう。
てっきりカイリの小さな片想いだと思っていたら、デートを重ねていた?
脈アリって言うか、すでに両思いだったり??
シャーロットもレオが本命なのに、つまみ食いを始めた?
そんなシナリオどこにもなかったはずだけれど、いじめ過ぎて壊れてバグった?
「デートと言うか二人で遊びに行っただけです」
「でも来週の誕生日ディナーの約束をしてるそうです。それってそう言うことですよね?」
「ええ、そうね? でもそうなるとあれは、勉強を見てもらっていただけかも知れないわ」
少しでも可能性を持たせようとの肩を持つけれど、可能性は極めて低い。
あの二人は絶対に良い感じだった。
だけど確か貴族の重婚は男女とも認められているけれど、平民は認めていない設定にしていたはず。
それともリアルではよくなった?
?
貴族のオーランドも重婚は可能だから、別に二股してても良くないか?
「だと良いんですけど」
「お嬢様、何呑気なことを言ってるんですか? あの女には自分の身分を」
「あ、それを言ったら最悪嫌われる可能性大よ」
怒りをあらわにして考えなしに突っ込む気満々のケイトを、冷静な眼差しを向けながら引き留める。
何度も言うようだけどシャーロットにこれ以上刺激しないで。
「確かに。ならオーランドに聞いてみますか?」
「それは辞めて。今日私から話してみるから。それより食堂に早く行かないと」
「そうよね? 行きましょう」
カイリのおかげでケイトの暴走はブレーキが掛かり、私達は食堂に向かった。
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