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 次に意識が戻った場所は、保健室らしき部屋のベッドの上。深いため息をつき、身を起こす。

 これから私はどうすれば良いんだろうか?
 何もしなければ私は後半年もしないうちに、女魔王の魂が覚醒してしまう。
 もしゲーム前に前世の記憶が蘇っていれば、聖女候補を辞退し魔王学園ではなく貴族学園に入学していた。そしたら魔王は別の人になって、私は生き延びられた。
 …………。
 …………。
 まてよ。ひょっとしたらワンチャン可能性はあるかも知れない。

 この世界の産みの親である私は、もちろんエミリーにも愛着がある。
 DLCでエミリールートの企画書を作ってみた物の、会議で冷たく需要がないと言われ中身も読まれずボツされた。
 エミリーの人気は壊滅的で、キャラグッズを作ることさえ許してもらえない。
 人気投票は万年最下位。 
 しかしこの状況を打破するためには、無理矢理にでもエミリールート突入させる。

 シャーロットと本音をぶつけ話し合えば、あっと言う間に絆が深まり出来上がり。二人の聖女が誕生し、二人はレオと結婚。(この世界の貴族は重婚可)めでたしめでたしとなるわけだ。
 私の目指したいのは二人の聖女誕生。レオとの結婚はどうでも良いから、そこはとんずらすればいい。聖女として世界各地を巡り、一人たくましく質素に生きていく。

 そんじゃ方針も決まった所で、早速シャーロットの好きな洋菓子を持って謝罪しに行こう。
 あの子は清純派主人公で心優しいから、きっと誠心誠意謝れば許してくれるはず。


「レオ様、いけません。エミリー様は、まだお目覚めになっていないのです」
「そんなの叩き起こせばいいだけだろう? 今日と言う今日は許さない」

 支度していると部屋の外が騒がしいかと思えば、レオの怒り狂った怒鳴り声が聞こえる。必死に誰かが静止させようとするも、払い除けたのか誰かが倒れる音がした。
 これは間違えなく婚約破棄イベント①発生で、そうなるとエミリールートも確実に消滅する。
 ゲームだと夏期休暇前の設定なんだけれど、これは現実だから少し早まっている?
 それにしても事情が事情なだけにエミリーを叩くのは仕方がないとしても、関係のない第三者に暴力を振るうなんてありえない。
 こんな奴が未来の王様なんて、聖都の行く末が心配。
 まぁそうさせたのは、私なんだけれど。

「レオ、落ち着いて下さい。倒れる前のエミリーの様子が少しおかしかったんです。それにいくらなんでも女性の部屋に無断で入るのは、絶対にダメだと思います」

 イベントとは違ってシャーロットが一緒らしく、さっきの私の不可解な行動を気にして止めに入る。

 本当にこの子はなんて優しい子なの?
 一部のプレイヤーからだとかあざといとか言われているけれど、今はその性格で私は救われた。
 これで私の生存ルートは、まだ首の皮一枚繋がっている。

 泣くほどうれしいです。

「シャーロットは優しいな。俺はそんなお前だから好きになったんだ。だからこそお前今まで散々コケにして来たあの女が許せない。あんな女が聖女のはずがない」
「レオ……」

 よく分からないけれど、二人の世界に突入したらしい。

 …………。
 すでにこの二人は恋仲なんだ。
 それなら婚約破棄は喜んで……
 胸が痛くなり、悲しくて涙があふれだす。

 ????
 私はレオが好きなの?
 確かにエミリーはレオを愛していた。
 だけど王女の立場とプライドが邪魔して正しい対応が分からず、冷たい態度をとり続けていた。
 それがレオには愛がなく政略だと感じて、だんだんと彼女を拒み距離を取った。
 エミリールートではそのすれ違いも解消されたからこそ、レオは二人の愛を受け入れて結婚する。

 ……あれ?
 そう言えば私、今世の記憶がまったくなくない? あるのは前世の記憶だけ。
 つまり前世の記憶が蘇ったから消去されたパターン?
 意外に面倒?


「シャーロットだけれど、エミリー起きている?」
「とっくに起きているわ。……入ってきていいわよ」

 イチャイチャタイムは終了したのかノックされ確認を取るから、なるべく違和感がないようエミリーを演じつつ招き入れる。
 でも威圧するのではなく、なるべく自然に歩み寄ろう。

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