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第六話

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メロウはまっすぐにマスターを見つめた。

彼もまた、メロウをじっと見据えている。


「・・・そこから、父親とその友人の行動は速かった。彼らの死体を埋め、部屋を片付け、誰かに気づかれる前に、彼女を大陸から連れ出す・・・・。三人はすぐに家を出ました。行き先は、父親の故郷である東の大地」


ゆっくりと順を追いながら紙をなぞり、メロウは少し強めに、人さし指でトンッ!とカウンターを叩いた。


「わたしは、彼女たち三人が訪れたという東の大地へと赴きました。そこで、出会いました・・・実際に、彼女たちと過ごしたという村の人々に」


少し興奮気味に、メロウは目を閉じる。


「そして、彼女の父親にも会うことが出来ましたよ」



そう言った瞬間、カタン!と、どこかで何かが倒れるような小さな音が鳴った。
普段なら気にも止めないくらいの音が、静かな店内に響いた。


「それで!」


その後の静寂を打ち消すかのように、突然マスターが大きく声を上げる。
そしてすぐにハッとし、コホンと咳払いをこぼした。


「・・・君はその父親とやらに、話を聞くことは出来たのかい?」


メロウは首を横に振った。


「彼は政府により投獄されていましたから。面会を許可されても、特別何かを語ってくれることはありませんでした」


その言葉に、マスターはため息を漏らす。

「そうか・・・・」


俯くマスターを横目に、彼は続けた。


「村の人の話によれば、わたしが訪れる一年半ほど前に彼女たちはまた旅立ってしまっていたようです。彼女の父親だけは残り、その後訪れた政府の役人によって連れていかれたそうで」


ふいに、メロウは一枚の紙を指さす。
そこには写真が印刷されていた。



「その村の人が、唯一彼女の父親と友人が写った写真を持っていました。とても古いカメラで撮ったようなので、あまりハッキリとはしていませんが・・・この黒い髪の背の高い方が、彼女の父親です。そしてその横に写っているのが、友人である・・・村の人達が、ゲンナイと呼んでた人物です」


メロウの指の先には、明るいブラウンの髪を後ろで小さく束ねた男が写っていた。


「父親は政府の役人が来ることを察し、自らを囮にして友人に彼女を託したのだと思います。とても信頼していたのでしょう・・・村の人も、誰一人として彼らを悪く言う人はいませんでしたし」


マスターが、その写真を見ることは無かった。
俯きながら、目を閉じている。


「このゲンナイと言う名・・・はじめは偽名を使ったのだと思いました。でも、彼女の父親と違い、友人の方は見た目も明らかに東の大地出身でありません。それなのに、こんなに分かりやすい偽名を使うでしょうか?」


メロウの口調が、淡々と速くなっていく。


「そうではなく、きっと彼が伝えた名前を、東の大地の人達はうまく発音出来なかった・・・だとしたら、このゲンナイという東の名のようなものは、元々なんと言う名だったのか・・・・」



マスターが、遮るように口を挟んだ。

「君は途中から、あえて〈マスター〉と呼び変えたね」

メロウが頷く。




「ええ、ミスターグッドナイト」
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