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第98話:カメハメハへ飛ぶ
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――――――――――海洋上空にて。スイフト男爵子息マイク視点。
「海の上を飛んでいるのは、すごく気分がいいにゃ」
「そうだねえ。でも海面に反射する光がちょっと眩しいな」
オレの一学期の総合スコアは一八位だった。
二〇位以内に入ったのは初めてだ。
これも聖女パルフェをはじめとする成績優秀な人達との勉強会のおかげ。
聖女パルフェの話を聞いていると、何でもできるような気になってくるから不思議だ。
「かなり島影がハッキリしてきたように思えます」
「近いにゃ」
「もうすぐだな。多分あと一〇分くらい」
今日はモアナ嬢とその侍女キキさんとともに、聖女パルフェの飛行魔法でカメハメハに向かっている。
当然のようにオレはお供だ。
何で? いや、最近あまり疑問にも思わなくなってきた気がするけれども。
「私、嬉しいにゃ!」
「そーかそーか。カメハメハは遠いもんねえ」
夏季休業期間は一ヶ月しかない。
カメハメハへ普通に行こうと思えば、片道だけでもそれくらいかかってしまう。
ところが聖女パルフェが飛行魔法を全速で飛ばせば、数時間で着いてしまうとのことだった。
当然王都コロネリアにずっといるつもりだったモアナ嬢とキキさんは大喜びだ。
「まさか里帰りできるとは思いませんでした」
「パルフェには感謝にゃ」
「あたしもカメハメハ行きたかったんだよ。一度行っとけば、次からは転移魔法で飛べるしな。便利な世の中になったもんだ」
「聖女様だけだよ!」
聖女様パルフェは転移魔法をちょくちょく使っているみたいだ。
でもここまでの大掛かりな魔法となると他に誰も使えないし。
便利な世の中って言われても理不尽だ。
「一度行かなきゃ転移魔法は使えないのかにゃ?」
「いや、実はそーでもないんだけど、危なくて」
危ない、とは?
「ある座標付近の様子をアバウトに知るっていう、風属性の魔法があるんだよ。この魔法の座標設定の回路は転移魔法にも使われてるものだけど」
「ちょっと関係がよくわからない」
「転移先の情報がわかんなくても転移魔法は使える。けど例えば飛んだ先に何かあったらぶつかるじゃん? 最悪岩壁でもあったら、石の中にいるみたいな状況になる」
「えっ? 怖い」
「でしょ? だから転移先座標の様子を調べてから転移するようにしてるんだよ。その調べる魔法は一度行った場所じゃないと使えないの」
そういうことだったのか。
「まーでもその調べる風魔法もハッキリ見えるわけじゃないから、今まであんまり使い道がなかったんだよ。こんなふうに活躍の場面ができるとはなー。先のことはわからんねえ」
先のことはわからんというのは我が身に染みる。
高等部に進学した時に、学業スコアや魔法の習得が今みたいになることを想像できていたか?
聖女パルフェには感謝しかない。
「声がカメハメハに届いているかも知りたいしな」
「そうだにゃ!」
国防結界を出たところで、聖女パルフェがカメハメハに向けて遠隔で声を飛ばす魔法を使っていた。
「距離と方向で大雑把に撃った魔法だからなー。魔道的に邪魔になるものは途中になかったとは思うけど」
「伝達の魔法も、正確な位置に届けられるものなのですか?」
「さっきの理屈になるけど、座標がわかっていれば」
「人にも伝えられるんだろう?」
「人指定はちょっと難しくなるよ。その人の魔力を正しく把握していないといけない。練度の高い感知魔法を必要とするね」
「座標は難しくないのか?」
「そっちは知ってりゃ使える魔法だな。ネッサちゃんは知ってるみたいだぞ? 教科書にもちょろっと理屈が載ってた」
いろんな魔法を知っていると、あっちにもこっちにも応用が利くんだなあ。
オレもせっかくだからたくさん覚えてみよう。
「カメハメハにゃ!」
「スピード落とすよ」
ついに到着だ。
海岸から内陸へ。
飛んでるオレ達を指差している人が多い。
しかし歓迎されてるみたいだな?
「声届いてて、状況がわかってるっぽいな。じゃ、そう驚かせることもないだろ」
「王宮はそのまま真っ直ぐ飛んでくれれば突き当たるにゃ」
「オーケー」
やがて丘の上にやたらと広い木造平屋の建物が見えてくる。
これが王宮か。
ウートレイドとは全然違う。
南国らしい異国情緒を感じさせるなあ。
「どこでもいいから、庭に降りてくれにゃ」
「わかった」
フワリと王宮の庭に着地する。
すぐさま近衛兵らしき者達に取り囲まれた。
キキさんと何か言い合ってるけど、カメハメハ語なのだろう。
何を言ってるかはわからない。
どこかへ連れて行かれるようだ。
「聖女様、何と言ってたの?」
「どーも伝達の魔法が胡乱な技術に思われたみたいだな。どえらいデカい声で届いたみたいで、国民皆が驚いたから取り調べるって」
「どういうメッセージだったんだ?」
「『カメハメハの皆さん、こんにちは。ウートレイドの聖女パルフェだよ。にこっ。今日モアナちゃんと侍女さん連れてそっち行くね』って」
「まともだなあ」
「そーだよねえ?」
聖女パルフェが首かしげてる。
いや、伝達の魔法もそうだけど、あのバカげた長距離飛行魔法を知らなきゃ簡単にそっち行くってこと自体が信じられないか。
どうも聖女パルフェのやってることに慣れちゃうと常識が崩壊するけど。
大きな広間に通された。
あっ、モアナ嬢が飛びついてったのは御両親、つまりカメハメハの国王夫妻かな?
大喜びしてる。
よかったなあ。
「取り調べって、ただの顔合わせじゃん」
「本当に取り調べされたかったの?」
「そーゆーわけじゃないけど、貴重な経験の機会かなと」
聖女パルフェの感覚はどこかおかしい。
人生楽しそうだなあ。
あっ、モアナ嬢が国王夫妻と思われる方を連れて来た。
聖女パルフェと話をしてるが?
「やたっ、ありがとう!」
「何だって?」
「すぐ御飯の用意をしてくれるって。お腹減っちゃったから助かるなー」
聖女パルフェは魔力を消費するとお腹がすくみたいだからな。
あっ、本当にすぐ料理が運ばれてきた。
「カメハメハの近海で取れた魚にゃ。久しぶりで嬉しいにゃ」
「そーか。王都コロネリアだと、新鮮な魚は食べられないもんねえ」
オレも実は魚はほとんど食べたことがない。
どれどれ、香ばしいいい匂いがするぞ、あむり。
焼いて塩を振っただけだと思うけど美味しい!
薬味の摩り下ろしたダイコンと合う!
魚の揚げ物も美味しい!
「これは何だろ?」
「イモだにゃ。イモを茹で潰してつなぎを加えて焼き固めたものだにゃ」
「へー。見たことないものだった」
ウートレイドでいう、パンみたいなものらしい。
所変わると品変わるなあ。
「メッチャフルーツが豊富だねえ」
「いろんなフルーツが採れるんだにゃ。お酒も造られているんだにゃ」
「お酒? フルーツの?」
「飲むかにゃ?」
「あたしは飲まないけど、お土産に少しもらってってもいいかな? 有力者に配っとくよ。そーするとカメハメハの果実酒を輸入しようぜってことになるかもしれない」
聖女パルフェは変なことを考えてるなあ。
仲良くするためには貿易も大事って思ってるんだろうか?
酒は腐らないから商売に向いているもんな。
「ごちそーさま。満足です!」
「パルフェ、どうだったにゃ?」
「美味しかった美味しかった。サイコーだな」
聖女パルフェとモアナ嬢がニコニコしている。
姉妹みたいだな。
外見が似てるってわけじゃないけど。
「今日は帰るね。三日後に迎えに来るよ。その時殿下達も連れて来る」
侍女キキさんの通訳で皆ビックリしてるけど、転移魔法だもんなあ。
常識では測れなくても理解だけしてください。
「じゃーねー」
「海の上を飛んでいるのは、すごく気分がいいにゃ」
「そうだねえ。でも海面に反射する光がちょっと眩しいな」
オレの一学期の総合スコアは一八位だった。
二〇位以内に入ったのは初めてだ。
これも聖女パルフェをはじめとする成績優秀な人達との勉強会のおかげ。
聖女パルフェの話を聞いていると、何でもできるような気になってくるから不思議だ。
「かなり島影がハッキリしてきたように思えます」
「近いにゃ」
「もうすぐだな。多分あと一〇分くらい」
今日はモアナ嬢とその侍女キキさんとともに、聖女パルフェの飛行魔法でカメハメハに向かっている。
当然のようにオレはお供だ。
何で? いや、最近あまり疑問にも思わなくなってきた気がするけれども。
「私、嬉しいにゃ!」
「そーかそーか。カメハメハは遠いもんねえ」
夏季休業期間は一ヶ月しかない。
カメハメハへ普通に行こうと思えば、片道だけでもそれくらいかかってしまう。
ところが聖女パルフェが飛行魔法を全速で飛ばせば、数時間で着いてしまうとのことだった。
当然王都コロネリアにずっといるつもりだったモアナ嬢とキキさんは大喜びだ。
「まさか里帰りできるとは思いませんでした」
「パルフェには感謝にゃ」
「あたしもカメハメハ行きたかったんだよ。一度行っとけば、次からは転移魔法で飛べるしな。便利な世の中になったもんだ」
「聖女様だけだよ!」
聖女様パルフェは転移魔法をちょくちょく使っているみたいだ。
でもここまでの大掛かりな魔法となると他に誰も使えないし。
便利な世の中って言われても理不尽だ。
「一度行かなきゃ転移魔法は使えないのかにゃ?」
「いや、実はそーでもないんだけど、危なくて」
危ない、とは?
「ある座標付近の様子をアバウトに知るっていう、風属性の魔法があるんだよ。この魔法の座標設定の回路は転移魔法にも使われてるものだけど」
「ちょっと関係がよくわからない」
「転移先の情報がわかんなくても転移魔法は使える。けど例えば飛んだ先に何かあったらぶつかるじゃん? 最悪岩壁でもあったら、石の中にいるみたいな状況になる」
「えっ? 怖い」
「でしょ? だから転移先座標の様子を調べてから転移するようにしてるんだよ。その調べる魔法は一度行った場所じゃないと使えないの」
そういうことだったのか。
「まーでもその調べる風魔法もハッキリ見えるわけじゃないから、今まであんまり使い道がなかったんだよ。こんなふうに活躍の場面ができるとはなー。先のことはわからんねえ」
先のことはわからんというのは我が身に染みる。
高等部に進学した時に、学業スコアや魔法の習得が今みたいになることを想像できていたか?
聖女パルフェには感謝しかない。
「声がカメハメハに届いているかも知りたいしな」
「そうだにゃ!」
国防結界を出たところで、聖女パルフェがカメハメハに向けて遠隔で声を飛ばす魔法を使っていた。
「距離と方向で大雑把に撃った魔法だからなー。魔道的に邪魔になるものは途中になかったとは思うけど」
「伝達の魔法も、正確な位置に届けられるものなのですか?」
「さっきの理屈になるけど、座標がわかっていれば」
「人にも伝えられるんだろう?」
「人指定はちょっと難しくなるよ。その人の魔力を正しく把握していないといけない。練度の高い感知魔法を必要とするね」
「座標は難しくないのか?」
「そっちは知ってりゃ使える魔法だな。ネッサちゃんは知ってるみたいだぞ? 教科書にもちょろっと理屈が載ってた」
いろんな魔法を知っていると、あっちにもこっちにも応用が利くんだなあ。
オレもせっかくだからたくさん覚えてみよう。
「カメハメハにゃ!」
「スピード落とすよ」
ついに到着だ。
海岸から内陸へ。
飛んでるオレ達を指差している人が多い。
しかし歓迎されてるみたいだな?
「声届いてて、状況がわかってるっぽいな。じゃ、そう驚かせることもないだろ」
「王宮はそのまま真っ直ぐ飛んでくれれば突き当たるにゃ」
「オーケー」
やがて丘の上にやたらと広い木造平屋の建物が見えてくる。
これが王宮か。
ウートレイドとは全然違う。
南国らしい異国情緒を感じさせるなあ。
「どこでもいいから、庭に降りてくれにゃ」
「わかった」
フワリと王宮の庭に着地する。
すぐさま近衛兵らしき者達に取り囲まれた。
キキさんと何か言い合ってるけど、カメハメハ語なのだろう。
何を言ってるかはわからない。
どこかへ連れて行かれるようだ。
「聖女様、何と言ってたの?」
「どーも伝達の魔法が胡乱な技術に思われたみたいだな。どえらいデカい声で届いたみたいで、国民皆が驚いたから取り調べるって」
「どういうメッセージだったんだ?」
「『カメハメハの皆さん、こんにちは。ウートレイドの聖女パルフェだよ。にこっ。今日モアナちゃんと侍女さん連れてそっち行くね』って」
「まともだなあ」
「そーだよねえ?」
聖女パルフェが首かしげてる。
いや、伝達の魔法もそうだけど、あのバカげた長距離飛行魔法を知らなきゃ簡単にそっち行くってこと自体が信じられないか。
どうも聖女パルフェのやってることに慣れちゃうと常識が崩壊するけど。
大きな広間に通された。
あっ、モアナ嬢が飛びついてったのは御両親、つまりカメハメハの国王夫妻かな?
大喜びしてる。
よかったなあ。
「取り調べって、ただの顔合わせじゃん」
「本当に取り調べされたかったの?」
「そーゆーわけじゃないけど、貴重な経験の機会かなと」
聖女パルフェの感覚はどこかおかしい。
人生楽しそうだなあ。
あっ、モアナ嬢が国王夫妻と思われる方を連れて来た。
聖女パルフェと話をしてるが?
「やたっ、ありがとう!」
「何だって?」
「すぐ御飯の用意をしてくれるって。お腹減っちゃったから助かるなー」
聖女パルフェは魔力を消費するとお腹がすくみたいだからな。
あっ、本当にすぐ料理が運ばれてきた。
「カメハメハの近海で取れた魚にゃ。久しぶりで嬉しいにゃ」
「そーか。王都コロネリアだと、新鮮な魚は食べられないもんねえ」
オレも実は魚はほとんど食べたことがない。
どれどれ、香ばしいいい匂いがするぞ、あむり。
焼いて塩を振っただけだと思うけど美味しい!
薬味の摩り下ろしたダイコンと合う!
魚の揚げ物も美味しい!
「これは何だろ?」
「イモだにゃ。イモを茹で潰してつなぎを加えて焼き固めたものだにゃ」
「へー。見たことないものだった」
ウートレイドでいう、パンみたいなものらしい。
所変わると品変わるなあ。
「メッチャフルーツが豊富だねえ」
「いろんなフルーツが採れるんだにゃ。お酒も造られているんだにゃ」
「お酒? フルーツの?」
「飲むかにゃ?」
「あたしは飲まないけど、お土産に少しもらってってもいいかな? 有力者に配っとくよ。そーするとカメハメハの果実酒を輸入しようぜってことになるかもしれない」
聖女パルフェは変なことを考えてるなあ。
仲良くするためには貿易も大事って思ってるんだろうか?
酒は腐らないから商売に向いているもんな。
「ごちそーさま。満足です!」
「パルフェ、どうだったにゃ?」
「美味しかった美味しかった。サイコーだな」
聖女パルフェとモアナ嬢がニコニコしている。
姉妹みたいだな。
外見が似てるってわけじゃないけど。
「今日は帰るね。三日後に迎えに来るよ。その時殿下達も連れて来る」
侍女キキさんの通訳で皆ビックリしてるけど、転移魔法だもんなあ。
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「じゃーねー」
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