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『魔の森』の守り人

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 魔物を他国領に追い払うのは国際法に反するです。
 でも他国に逃げた魔物を狩るのは、領域侵犯になりますので不可能。
 実際に魔物を隣国に追ったため賠償問題になったとかいう話は聞いたことがないです。

 マリア様が諦め顔だ。

「仮にマリアダルで越境魔物が増えたとしても、バハーランドに責任を負わせることはできないと思うわ。のらりくらりと躱されてしまうでしょう」
「責任の追及は後でもいい。現実問題として越境してくる可能性が非常に高い魔物への対処が先だ。知りつつ放置するのは無責任極まる」
「ごもっともです」
「魔物退治に一日の長がある獣人の力を借りたいのだ」

 ……そういうことでありましたか。

「スマイリー嬢の協力が欲しい」
「そこで何故私の協力と言うことになるですか?」
「調べは付いているでござる。スマイリー嬢の髪色は、獣人の血が入っているのでござろう?」

 発言したのは情報収集に当たっているというコタロー様です。
 小柄で黒髪で生意気そうなところがキュンとくるです。

「『魔の森』の守り人たるビーズ男爵家は獣人へ影響力を及ぼすことができ、中でも髪色に獣人の血が強く出ているスマイリー嬢は獣人とツーカーだとの調査結果でござる」
「はい、確かに。できれば内緒にしてもらいたいであります」
「うん、くだらない差別は我らの望むところでもないからね」
「御配慮痛み入りますです」

 都会では亜人差別があると聞きますです。
 もちろん『魔の森』を管理するために亜人との関係を密にしているビーズ男爵家領ではそんなことありません。
 が、無用なトラブルは避けたいです。

「スマイリー嬢の手引きで、ビーズ男爵家領の獣人戦士二〇〇人を派遣してもらえないだろうか。具体的には街道沿いバハーランドとの国境の峠を守ってもらいたい」
「……条件次第で可能かと思いますです」

 最も激戦になることが予想される場所です。
 生半可な条件では了承できないですが、ブライアン殿下にどれほどの権限があるです?

「一般騎士の給与の二割増しでどうだい?」
「お話になりゃしませんです」

 チェスター様以外は驚いていらっしゃいます。
 獣人戦士は並みの騎士の倍は強いですよ?
 死地に近い場所に追いやって給与二割増しとは片腹痛いです。
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