29 / 33
頑張ると決めた
しおりを挟む
「……恋人ごっこって?」
「そのまんま。私とお兄様は、お父様とお母様が戻ってくるまで兄妹じゃなくて恋人として過ごすの」
「兄妹でそれをやる意味がわからないんだが……」
「深く考えちゃだめ! ちょっとした遊びよ。お兄様とふたりの日々も終わるから、最後に変わった遊びをしたいなって。それだけ」
ついこの間も、お兄様と同じような会話をした。反応が逆になっているけど。
私は困った反応を見せるお兄様を強引に押し通し、半ば強制的に恋人ごっこを始めることにした。
実際にしたことを再度やれば、お兄様がなにか思い出してくれるかもしれない。
「……これって、主になにをする遊びなんだ?」
「恋人がするようなことをするだけの遊びよ。簡単でしょ?」
「恋人がするような――恋人って、なにするんだ?」
「それは……そう! あのね、本があるの! 〝恋人ができたら読む本〟っていうタイトルの! それを参考にして、また一つずつやっていきましょ!」
「また、って。俺、一度ミレイユとこの遊びをしたことあるのか」
「一度っていうか……普段からそうだったというか……。まぁ、とにかくその本があればお兄様もわかりやすいと思うから探しましょ。最後に持ってたのはお兄様なんだけど、書庫に戻してない?」
「ごめん。全然覚えてない。そんな本があることも知らなかった」
私も初めて見つけたときは、こんな本があるのかと驚いたものだ。
お兄様と一緒に本を探すが、書庫に本は置いていないようで、今度はお兄様の部屋の本棚を探してみた。
しかし、一向に見つかる気配がない。このままでは本を探している間に恋人ごっこ期間が終わりそうな気がして、私は本を諦めることにした。
「私が覚えてる範囲で、少しずつ試していきましょう!」
「そこまでしてやらなきゃいけないことなのか」
「いいじゃない。付き合ってよ。かわいい妹の頼みでしょう?」
「……ずるいなぁ。そう言われると断れないだろ」
くしゃくしゃとお兄様が私の頭を撫でる。……お兄様に頭を撫でてもらうの、久しぶりだ。昔は毎日してもらってたけど、記憶がなくなってからは一度もこういったスキンシップはなかったから。
慣れているはずなのに、たったこれだけのことがうれしくて、顔が熱くなるのがわかった。
「……ミレイユ、どうしたの? そんなに顔を赤くして」
「だ、だって、お兄様が、私に触れてくれたから」
「その反応、恋人ごっこ中だからか? だとしたらミレイユは将来女優になれるな。うますぎる」
「ちがうわ! これは素の反応っていうか、演技で赤くなってるわけではないの」
「……そうなのか。判断が難しい遊びだな。ミレイユはピュアだな。こんなよくあるスキンシップで照れちゃうなんて。あはは。かわいい」
他人事のように笑うお兄様に、今までお兄様が私にしてきた過激なスキンシップを全部教えてやりたいものだ。
その日は本を探すだけで一日を消費してしまったので、私は次の日から、前回やったのと同じことを順番にしていくことにした。
◇◇◇
「やあ、ミレイユ 」
「……久しぶりだな」
「エクトル様! それにイヴァン様も!」
ある日、エクトル様がイヴァン様を連れて屋敷まで来てくれた。
マリンにお茶を用意してもらい、私の部屋にふたりを招いておしゃべりをする。
「調子はどう? リアムは相変わらずみたいだけど…」
「うーん。ぼちぼち、です」
「なにか記憶が戻るようにしてることとかあるのか?」
「はい。今は恋人ごっこと称して、以前までの私たちと同じようなことを頑張ってお兄様にもしてもらってるんですけど、お兄様は積極的ではないというか……」
「恋人ごっこって……君たち兄弟はごっこ遊びが好きだなぁ」
私としては、ごっこなんてもうしたくないのだけど、今はほかにいい術が思いつかない。
元々ゲームでも私とお兄様のルートのメインはこの恋人ごっこだったし、意味のあるものと信じて今はやっている。
「俺が知らぬ間にいろいろあったみたいだな。あんな愛想のいいリアムは初めて見た。……夢に出てきそうだ」
「あはは。それはとんだ悪夢だね。僕も未だに慣れないよ」
イヴァン様はメインキャラのひとりだったのに、かなり久しぶりの再会となってしまった。
屋敷に来た際にさわやか笑顔でお兄様に挨拶されたことが相当衝撃的だったようだ。あの瞬間のイヴァン様の驚き顔が面白すぎて、思い出すと笑いがでてくる。
「でも俺としては、またこうしてエクトルとミレイユと一緒にゆっくり茶を飲めたことをうれしく思う。一時期はエクトルの独占欲が強すぎて、俺ですらミレイユに中々会わせてもらえなかったからな」
「えっ、そうなんですか? 初耳です」
「よしてくれイヴァン。僕も自分に驚いたくらいだ。まさか自分にこんな知らない一面があるとは思っていなかったからね」
「ミレイユも大変だな。寄ってくる男が特殊なやつばかりで」
哀れみの目を送ってくるイヴァン様。私の趣味がそもそも特殊だということは言わないでおこう。
「そういえば、週末はミレイユの誕生日だね。例年通り、屋敷でパーティーは開くのかい?」
「はい。その予定です」
誕生日当日は、いつもオベール家主催で客人を招き、誕生日パーティーを開くのが毎年恒例となっている。
今年は当日までお父様とお母様がいないという異例の事態で、マリンが着々と準備を進めてくれているようだ。
「イヴァンと一緒に参加させてもらうよ。楽しみにしてる」
「ありがとうございます。うれしいです」
「それと……ミレイユ 、顔が少し疲れてるから、無理は禁物だ。なにかあったら周りの人に相談すること。いい?」
「……はい。わかりました」
「うん。わかればよろしい」
よしよし、とエクトル様に頭を撫でられる。お兄様よりもぬくもりを感じる手に、私は少しだけ泣きそうになりながら笑った。
「そのまんま。私とお兄様は、お父様とお母様が戻ってくるまで兄妹じゃなくて恋人として過ごすの」
「兄妹でそれをやる意味がわからないんだが……」
「深く考えちゃだめ! ちょっとした遊びよ。お兄様とふたりの日々も終わるから、最後に変わった遊びをしたいなって。それだけ」
ついこの間も、お兄様と同じような会話をした。反応が逆になっているけど。
私は困った反応を見せるお兄様を強引に押し通し、半ば強制的に恋人ごっこを始めることにした。
実際にしたことを再度やれば、お兄様がなにか思い出してくれるかもしれない。
「……これって、主になにをする遊びなんだ?」
「恋人がするようなことをするだけの遊びよ。簡単でしょ?」
「恋人がするような――恋人って、なにするんだ?」
「それは……そう! あのね、本があるの! 〝恋人ができたら読む本〟っていうタイトルの! それを参考にして、また一つずつやっていきましょ!」
「また、って。俺、一度ミレイユとこの遊びをしたことあるのか」
「一度っていうか……普段からそうだったというか……。まぁ、とにかくその本があればお兄様もわかりやすいと思うから探しましょ。最後に持ってたのはお兄様なんだけど、書庫に戻してない?」
「ごめん。全然覚えてない。そんな本があることも知らなかった」
私も初めて見つけたときは、こんな本があるのかと驚いたものだ。
お兄様と一緒に本を探すが、書庫に本は置いていないようで、今度はお兄様の部屋の本棚を探してみた。
しかし、一向に見つかる気配がない。このままでは本を探している間に恋人ごっこ期間が終わりそうな気がして、私は本を諦めることにした。
「私が覚えてる範囲で、少しずつ試していきましょう!」
「そこまでしてやらなきゃいけないことなのか」
「いいじゃない。付き合ってよ。かわいい妹の頼みでしょう?」
「……ずるいなぁ。そう言われると断れないだろ」
くしゃくしゃとお兄様が私の頭を撫でる。……お兄様に頭を撫でてもらうの、久しぶりだ。昔は毎日してもらってたけど、記憶がなくなってからは一度もこういったスキンシップはなかったから。
慣れているはずなのに、たったこれだけのことがうれしくて、顔が熱くなるのがわかった。
「……ミレイユ、どうしたの? そんなに顔を赤くして」
「だ、だって、お兄様が、私に触れてくれたから」
「その反応、恋人ごっこ中だからか? だとしたらミレイユは将来女優になれるな。うますぎる」
「ちがうわ! これは素の反応っていうか、演技で赤くなってるわけではないの」
「……そうなのか。判断が難しい遊びだな。ミレイユはピュアだな。こんなよくあるスキンシップで照れちゃうなんて。あはは。かわいい」
他人事のように笑うお兄様に、今までお兄様が私にしてきた過激なスキンシップを全部教えてやりたいものだ。
その日は本を探すだけで一日を消費してしまったので、私は次の日から、前回やったのと同じことを順番にしていくことにした。
◇◇◇
「やあ、ミレイユ 」
「……久しぶりだな」
「エクトル様! それにイヴァン様も!」
ある日、エクトル様がイヴァン様を連れて屋敷まで来てくれた。
マリンにお茶を用意してもらい、私の部屋にふたりを招いておしゃべりをする。
「調子はどう? リアムは相変わらずみたいだけど…」
「うーん。ぼちぼち、です」
「なにか記憶が戻るようにしてることとかあるのか?」
「はい。今は恋人ごっこと称して、以前までの私たちと同じようなことを頑張ってお兄様にもしてもらってるんですけど、お兄様は積極的ではないというか……」
「恋人ごっこって……君たち兄弟はごっこ遊びが好きだなぁ」
私としては、ごっこなんてもうしたくないのだけど、今はほかにいい術が思いつかない。
元々ゲームでも私とお兄様のルートのメインはこの恋人ごっこだったし、意味のあるものと信じて今はやっている。
「俺が知らぬ間にいろいろあったみたいだな。あんな愛想のいいリアムは初めて見た。……夢に出てきそうだ」
「あはは。それはとんだ悪夢だね。僕も未だに慣れないよ」
イヴァン様はメインキャラのひとりだったのに、かなり久しぶりの再会となってしまった。
屋敷に来た際にさわやか笑顔でお兄様に挨拶されたことが相当衝撃的だったようだ。あの瞬間のイヴァン様の驚き顔が面白すぎて、思い出すと笑いがでてくる。
「でも俺としては、またこうしてエクトルとミレイユと一緒にゆっくり茶を飲めたことをうれしく思う。一時期はエクトルの独占欲が強すぎて、俺ですらミレイユに中々会わせてもらえなかったからな」
「えっ、そうなんですか? 初耳です」
「よしてくれイヴァン。僕も自分に驚いたくらいだ。まさか自分にこんな知らない一面があるとは思っていなかったからね」
「ミレイユも大変だな。寄ってくる男が特殊なやつばかりで」
哀れみの目を送ってくるイヴァン様。私の趣味がそもそも特殊だということは言わないでおこう。
「そういえば、週末はミレイユの誕生日だね。例年通り、屋敷でパーティーは開くのかい?」
「はい。その予定です」
誕生日当日は、いつもオベール家主催で客人を招き、誕生日パーティーを開くのが毎年恒例となっている。
今年は当日までお父様とお母様がいないという異例の事態で、マリンが着々と準備を進めてくれているようだ。
「イヴァンと一緒に参加させてもらうよ。楽しみにしてる」
「ありがとうございます。うれしいです」
「それと……ミレイユ 、顔が少し疲れてるから、無理は禁物だ。なにかあったら周りの人に相談すること。いい?」
「……はい。わかりました」
「うん。わかればよろしい」
よしよし、とエクトル様に頭を撫でられる。お兄様よりもぬくもりを感じる手に、私は少しだけ泣きそうになりながら笑った。
0
お気に入りに追加
849
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?
hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。
待ってましたッ! 喜んで!
なんなら物理的な距離でも良いですよ?
乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。
あれ? どうしてこうなった?
頑張って断罪劇から逃げたつもりだったけど、先に待ち構えていた隣りの家のお兄さんにあっさり捕まってでろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。
×××
取扱説明事項〜▲▲▲
作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想、動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+
皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。
9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ(*゚ー゚*)ノ
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢は断罪回避のためにお兄様と契約結婚をすることにしました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
☆おしらせ☆
8/25の週から更新頻度を変更し、週に2回程度の更新ペースになります。どうぞよろしくお願いいたします。
☆あらすじ☆
わたし、マリア・アラトルソワは、乙女ゲーム「ブルーメ」の中の悪役令嬢である。
十七歳の春。
前世の記憶を思い出し、その事実に気が付いたわたしは焦った。
乙女ゲームの悪役令嬢マリアは、すべての攻略対象のルートにおいて、ヒロインの恋路を邪魔する役割として登場する。
わたしの活躍(?)によって、ヒロインと攻略対象は愛を深め合うのだ。
そんな陰の立役者(?)であるわたしは、どの攻略対象ルートでも悲しいほどあっけなく断罪されて、国外追放されたり修道院送りにされたりする。一番ひどいのはこの国の第一王子ルートで、刺客を使ってヒロインを殺そうとしたわたしを、第一王子が正当防衛とばかりに斬り殺すというものだ。
ピンチだわ。人生どころか前世の人生も含めた中での最大のピンチ‼
このままではまずいと、わたしはあまり賢くない頭をフル回転させて考えた。
まだゲームははじまっていない。ゲームのはじまりは来年の春だ。つまり一年あるが…はっきり言おう、去年の一年間で、もうすでにいろいろやらかしていた。このままでは悪役令嬢まっしぐらだ。
うぐぐぐぐ……。
この状況を打破するためには、どうすればいいのか。
一生懸命考えたわたしは、そこでピコンと名案ならぬ迷案を思いついた。
悪役令嬢は、当て馬である。
ヒロインの恋のライバルだ。
では、物理的にヒロインのライバルになり得ない立場になっておけば、わたしは晴れて当て馬的な役割からは解放され、悪役令嬢にはならないのではあるまいか!
そしておバカなわたしは、ここで一つ、大きな間違いを犯す。
「おほほほほほほ~」と高笑いをしながらわたしが向かった先は、お兄様の部屋。
お兄様は、実はわたしの従兄で、本当の兄ではない。
そこに目を付けたわたしは、何も考えずにこう宣った。
「お兄様、わたしと(契約)結婚してくださいませ‼」
このときわたしは、失念していたのだ。
そう、お兄様が、この上なく厄介で意地悪で、それでいて粘着質な男だったと言うことを‼
そして、わたしを嫌っていたはずの攻略対象たちの様子も、なにやら変わってきてーー
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる