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人質
しおりを挟む肉体的・精神的に痛い表現があるので、苦手な方はお戻りください。
*******
ここへ来て1週間になる。
今は穏やかに俺に接しているフロレンツも、そろそろ何かしてくるだろう。
何しろ俺には媚薬が全く効かないし、いい加減イラついているのは間違いない。
リオン、ルディ、ラースも身の回りに気をつけて欲しい。
それに軟禁状態の俺の精神状態もどうにかなりそうだ。
何か気晴らしになる事をしたいとダメ元でフロレンツに相談した。
「それじゃあ、俺とイイ事しようよ。」
今は食後のお茶を一緒に取っている。
俺は拒絶がはっきりと伝わるようにきっぱりと断り、睨みつけた。
「ふーん、そうなんだ。」
そう言うとフロレンツはいきなり立ち上がり、一番近くにいたリオンの腕を取ってうつ伏せにテーブルに押し付けた。
その拍子にガチャンと大きな音を立てて、零れた飲みかけの紅茶がテーブルの上に広がる。
「それじゃぁ、代わりにこの子に相手してもらおうかな。」
「なっ!」
「アルフォンス様、僕は大丈夫ですから・・・」
リオンは気丈に何でも無いように振舞っていたが、フロレンツがリオンの体を弄ってからズボンの中へと手を入れて、ねっとりとお尻を撫で回すと、とたんにリオンの顔色が青くなり、身体を捩った。
でもフロレンツの方が力があるので身動きが取れない。
「・・・お前って本当に最低。
分かったよ、今晩待っててやるからリオンを離せ。」
とたんにフロレンツの表情が明るくなった。
「そっちからお誘いしてくれるなんて嬉しいね。必ず行くよ。」
フロレンツは直ぐにリオンを離すと、嬉しそうに鼻歌を歌いながら、その場から立ち去った。
フロレンツが立ち去るのを確認してから、俺と、ルディとラースはリオンに駆け寄った。
「ごめんなさい、アルフォンス様、ありがとうございます・・・」
「リオンは悪くないよ。
大丈夫、大丈夫だから。」
俺は泣いてしまったリオンを抱きしめ、癒しをかけて、四人で部屋へ戻った。
フロレンツが俺にリオン、ルディ、ラースを付けたのは、俺が三人を見捨てる事など出来ないと踏んだからだろう。
だから今まで俺が三人を囲い込んでいても何も言われなかったのか。
こういう時に利用する為に。
「嫌なやつ!」
俺は泣きたい気分になって、胸のペンダントを握った。
部屋へ戻ってからは何もする気が起きなくて、ひたすら部屋をうろついた。
「アルフォンス様、お座りになったらいかがですか?」
ルディがお茶を用意してくれ、必ず俺を助けると言ってくれたが、それも落ち着いてなんかいられなかった。
夕食時も喉を通らなくて、食後にフロレンツから「約束通りに部屋に行くから、一番気に入った夜着を着て待っていて欲しい」と言われた時は吐き気がした。
仕方が無いのでリオン、ルディ、ラースを部屋から出し、腹立たしいのでお風呂ではなく、綺麗になる魔法を使って体を清め、一番気に入った夜着(いつものブラウスとズボン)を着て待つ事にする。
一時間ほどすると部屋にフロレンツが現れた。
「おやおや、これは色っぽくないね。」
フロレンツは俺の格好を見て開口一番にそう言った。
「ああ、これが俺の一番お気に入りの夜着ですので。」
「まあいい、どうせ脱がせてしまうから。」
俺が憎まれ口を叩いてもフロレンツは負ける事無く言い返してきて、平気で俺の隣へぴったりくっついて座る。
「やっぱり本物は綺麗だねぇ。
特にこの瞳。俺も似たような感じだけど、お前の方がずっと綺麗だ。」
そう言ってフロレンツが俺の顔を撫でると、俺はもう鳥肌が立って凄かった。
我慢していると顔中にキスをされ、服のボタンを外される。
ボタンの多い服を選んで良かった。外すのにかなり苦労している様だ。
「ひゃっ!」
それまで唇へのキスはなんとか逃れていたが、隙をついて首筋に吸い付かれた時は気持ち悪くて声を出してしまった。
それをフロレンツは感じたと勘違いしたのだろうか、ボタンを外すのを途中で止め、ブラウスの裾を引き出し、その中へ手を入れて肌を撫で回してきた。
「うわ、止め・・・」
反射的に押し戻すと俺の方が力があったらしく、少し体を離す事が出来た。
「そんな事していいの?ここで止めたら続きはあの三人にしてもらうよ。
誰がいいかなぁ?三人一緒がいいかな?
ああ、あの子達がやられてるところが見たいの?変態だねぇ。」
「え?」
動揺した俺は座っていたソファーに押し倒されて、さんざん口にねっとりとしたキスをされて、時間を掛けて体を舐め回された。
俺は三人の事を思って目を瞑って我慢していたが、流石に大事なところに触れられた時は我慢できなかった。
「や、やだ止めて、ルネ・・・」
俺は胸のペンダントをぎゅっと握り締める。
「ん?ルネって誰?こんな時に違う人の事を考えるなんて酷くない?」
そういうとフロレンツは俺の肩を思いっきり噛んだ。
「!!いたっ!痛い!痛い!」
俺が痛みで暴れても、フロレンツはなかなか離れない。
それどころか歯がどんどん肩に食い込んでいった。
「痛い!止めて!離して!!」
ついに皮膚が噛み千切られて血が流れ出し、俺は痛みと嫌悪で泣き叫んだ。
どれ位たったのだろう。
されるがままに身体を触られていると大きな音がして、ドアが勢い良く開きラースが入ってきた。
「アルフォンス様!」
「来るな!俺は大丈夫だから・・・」
その時ガン!と、衝撃が響いてきて、フロレンツが俺から離れて脇に倒れた。
その後ろには息を切らせて短剣を構えた、見た事のない痩せた男。
「大丈夫ですか?俺はドリス様の『影』です。」
「母上の・・・」
「遅くなってすみません。
結界に阻まれて、なかなか屋敷の中へ入れなかったのです。」
男はキルシュからワイバーンにくっついて来たのだが、腕輪がないので屋敷内へ入れず、たまたま庭に現れた三人に理由を話して中へ入れてもらったのだそうだ。
「誰でも良いから俺を助けて欲しかった。」と言う三人を俺は「偉かった。」と撫でてあげた。
その後、俺は肩を治療して、立ち上がって着替えようと思ったが、手が震えて何も出来ず、結局ルディに手伝ってもらった。
その間に男がフロレンツを縛り上げる。
「アルフォンス様、『鳥』を見つけましたよ!」
暫くすると、リオンとラースが連絡用の魔石を二つ見つけてきた。
ラースに教えてもらって、グーテベルクとキルシュへ連絡をする。
「ねぇ、ここから一番近い国境はどっち?」
俺は男に質問した。
「グーテベルクでございます。
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「解った。サンド、俺たちを案内してくれ。」
「僕たちもですか?足手まといになりますよ。」
とラースが言うと、ルディとリオンも「行けません。」「困らせてしまいます。」と続けた。
でも、俺はどうしても連れて行きたかった。
自己満足かもしれないけれど、そうしたかったんだ。
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