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最終章
良い夢
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「それにしても凄いな」
足元で伸びきっている騎士を蹴飛ばしながら僕は感嘆の声を上げた。
この騎士はさっきフィオに切りかかって来た奴だ。
ローズの話だと、淫魔たちが能力を使って敵方全員を眠らせたらしい。
人数が多く、完全に夢に取り込むまで時間が掛かったそうだが、全員が良い夢を見ている事は間違いないと言う。
それはそうとして、こちら側は精根尽き果てる寸前だったから助かった。
味方は全員無事だったが、疲労の色が濃く怪我もしているので、今は奥から出て来た者たちに介抱されている。
僕は彼らを労いつつローズたちと顔合わせさせたが、ハーレムにも魔族の血を引いた者がいたので、それ程怖がられる事は無かった。
そして十分休むように言い残し、その場を後にする。
これから王と話し合いの場が持たれると言う。
侍女に綺麗なローブへ着替えさせられて、連れて来られた場所は城の正面玄関だった。
いつの間にか設置された長机と椅子には花が飾られていて、魔道具で作られた頑丈な結界で遮断されていた。
僕はその魔道具に目を留めた。
「これは父が作った物では……」
懐かしい魔力の流れ。
もう随分長い間父には会っていない。
皆、今頃どうしているだろうか?
僕のせいで肩身の狭い思いをしていないだろうか……。
「ジルヴァーノ様」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにはエドモンドが立っていた。
「魔族の方から屋敷へ使いがやって参りましたので、私も一緒に連れて来て頂きました。まさか、私をクビにしたりなさいませんよね? 」
「もちろんだよ」
少し不安そうだったエドモンドは、僕がそう言うと明るく笑って綺麗な礼をした。
僕の方こそ、これからもお願いしたい。
小さい頃からずっと一緒にいるエドモンドは僕の家族同然なんだから。
そして、屋敷の皆も変わらず元気にしていると聞いて安心した。
エドモンドは父と魔道具開発部のパシュカーレからの手紙も預かってきてくれていて、父からは「好きにやると良い」と言うような事が書いてあったが、パシュカーレからは「ちゃんと出勤してこない者はお役御免。しかし、良い発明は買い取るので相談するように」と書いてあり、いつも通りすぎて笑ってしまった。
リチェルカーレの王子からも「上手く行ったらそのうち遊びに行くよ」と言伝されたそうだが、これは非公式にでもリチェルカーレが公認してくれると言う事なのだろうか?
今まで『魔王討伐』を掲げていた国だけに信用は出来ないな。
それを言ったら僕もそうなんだけれど。
手紙に目を通していると、ディミトラの王と第一王子が、リトス姫と第二王子のミネア、ガリエナ、ダグラスに囲まれて連れて来られた。
彼らだけは眠らされなかったらしい。
王と第一王子は未だにこの状況が飲み込めないのか、きょろきょろと辺りを見回して落ち着かなかった。
「魔王さま、いらして下さってありがとうございます。今から国の移譲についての話し合いを行いたいと思います」
ミネアに真ん中へ座る様に促された。
席に着き、リトス姫とミネアが差し出した紙に目を通すと、この国を魔族側へ明け渡す条件や保証、決まり事、法律について書かれていた。
いつの間にこんなものを作ったのだろうかと思うくらい詳細に書かれている。
「これは?」
「あれから私なりに色々調べ、こちらの草案を宰相と共に作成しました。国の制度などで変わって来る部分もあるでしょうし。魔石資源が無くなった後の復興状況にもよりますね」
ミネアが進み出て説明してくれた。
この王子、少々気弱だが、文官としての才能はあるらしい。
このまま補佐になって欲しいものだ。
「その辺は追々教えてくれ。とりあえず、王族に国政の権利を手放してもらいたい。一番手っ取り早いのは全員処刑してしまう事だが……」
僕が視線を送ると、王と第一王子は顔色を悪くして、助けを求めるようにリトス姫とミネアを見た。
「……私、お二人がなさった事は許せませんわ。もう王族であることも恥ずかしい、魔王さまの方へ付かせて頂きます」
「私は一国民として、この国を正しい方向へ導きたいと思っています。前々から思っていたのですが、この国は貧富の差が大きい。奴隷制度などの悪習も失くしたいと思います。それを実行するに王族の存在ははっきり言って邪魔ですね」
二人にそう言われて、二人はがっくりと肩を落とした。
「もう反撃しようなんて考えない方が良いぞ。こちらの援軍も到着したし、この状況を見たら僕たちに敵う訳がないのも分かるだろう? 」
辺りを指し示すと、そこには未だ眠ったままのディミトラの騎士や兵士がいる。
皆、ローズの言う通り良い夢を見ているのか、穏やかな顔つきだ。
「さぁ、さっさと進めようか。僕としては君たちが野垂れ死にしようが関係ないのだが、少しでも良い環境で生き残りたいのならサインしてもらいたい。国政の方は素人だが、もちろん協力してくれるのだろう? 」
ミネアの方を見ると力強く頷いてくれた。
魔族側は、ここに来た時点で僕に従うと言う事だそうだ。
出された書類にサインしようとするとローズが待ったをかけた。
「この状況を皆に見てもらいましょう」
パチンと指を慣らすと、そこら辺で眠っていた者たちが起き上がり始めた。
ゆっくりと起き上がった兵士たちは目の前に王がいるのを見て、慌てて姿勢を正した。
その中から騎士団長が進み出て来たが、こちらに結界があるので近付く事ができない。
「騎士団長、どうか助けてくれ」
王は未だにこの状況から抜け出そうとしている。
懇願されてた騎士団長は結界を剣で断ち切ろうとしたが、何度やっても弾かれてしまい、終いには肩で息をして、その場に跪いてしまった。
「ところで王」
跪く騎士団長を見ている王へ僕は声を掛ける。
「魔石資源の無くなったこの国をあなたは導く事ができるのか? ここはもう魔族が闊歩する国になったが、あなたは制御できるのか? 他国との交渉も国民への説明もこの戦いの後始末も全て僕が代わって、しかも、あなたたちの生活まで保障してやろうというのに」
今まで通りの生活は保障しかねるがな、と心の中で付け加える。
そう言うと、王は渋々ペンを取った。
それを見て、騎士団長は泣き崩れていたが、他の者たちはどこかホッとしているように見えた。
*******
それからは怒涛の日々だった。
国政はミネアとリトスに任せきりだったが、外交は僕が出ない訳に行かない。
人も足りなくて、ディミトラ王国だった頃の優秀な文官や武人を雇い直し、国民から広く人材を集めた。
そんな僕のやり方に反発する貴族も多かったが、他所から来た僕には貴族の事など知る由もない。
今では殆ど価値は無いが、貴族と言う地位を取り上げないだけでもありがたい事だろうに、どうしても嫌だ言うなら出ていけと脅せば大体大人しくなった。
良かったのは、このは小さく不毛な砂漠地帯が多かったので土地持ちの貴族が少ない事か。
そして、その土地持ちの貴族が住む地方にも人を派遣して状況を調査したり、魔石産業以外の新しい事業を模索したりした。
他にも大切な事として、奴隷制を廃止したり、鉱山を閉めたり、とにかくやる事が一杯で手が回らない。
一番大変だったのが魔族と人間の常識のすり合わせだったが、これは警備兵に魔族と人間の両方をよく知っている者を雇う事で何とかなった。
皆、一丸となって頑張ってくれたのだが、それでも一時期、国内が混乱した。
しかし魔族が闊歩する国と言う事で恐れられて、他の国に攻め込まれることはなかった。
国の名前も決まった。
僕はディミトラのままで良いと思ったのだが、世間的にそういう訳にはいかないらしい。
仕方ないので国名は『アルベロ魔王国』とした。
アルベロはこの国が始まる切欠となった。
王家に伝わる物語でも『全ては一人の樹の精霊が現れたことからはじまる』と書かれているそうだ。
そして僕は教会のドームで日の光を受けてキラキラ輝いている、樹の姿のアルベロを見て思い出した。
あのゲームのタイトルが『アルベロ国物語』だった事を。
そう、あれはリチェルカーレの話じゃなかったのだ。
しかし、それももうどうでも良い。
だって側にはフィオがいる、僕は幸せになった。
結局ゲームはゲームだったのだ。
――そして、魔王は全てを破壊する者ではなく、人間と魔族が共に暮らせる新しい時代を作る者になった。
足元で伸びきっている騎士を蹴飛ばしながら僕は感嘆の声を上げた。
この騎士はさっきフィオに切りかかって来た奴だ。
ローズの話だと、淫魔たちが能力を使って敵方全員を眠らせたらしい。
人数が多く、完全に夢に取り込むまで時間が掛かったそうだが、全員が良い夢を見ている事は間違いないと言う。
それはそうとして、こちら側は精根尽き果てる寸前だったから助かった。
味方は全員無事だったが、疲労の色が濃く怪我もしているので、今は奥から出て来た者たちに介抱されている。
僕は彼らを労いつつローズたちと顔合わせさせたが、ハーレムにも魔族の血を引いた者がいたので、それ程怖がられる事は無かった。
そして十分休むように言い残し、その場を後にする。
これから王と話し合いの場が持たれると言う。
侍女に綺麗なローブへ着替えさせられて、連れて来られた場所は城の正面玄関だった。
いつの間にか設置された長机と椅子には花が飾られていて、魔道具で作られた頑丈な結界で遮断されていた。
僕はその魔道具に目を留めた。
「これは父が作った物では……」
懐かしい魔力の流れ。
もう随分長い間父には会っていない。
皆、今頃どうしているだろうか?
僕のせいで肩身の狭い思いをしていないだろうか……。
「ジルヴァーノ様」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにはエドモンドが立っていた。
「魔族の方から屋敷へ使いがやって参りましたので、私も一緒に連れて来て頂きました。まさか、私をクビにしたりなさいませんよね? 」
「もちろんだよ」
少し不安そうだったエドモンドは、僕がそう言うと明るく笑って綺麗な礼をした。
僕の方こそ、これからもお願いしたい。
小さい頃からずっと一緒にいるエドモンドは僕の家族同然なんだから。
そして、屋敷の皆も変わらず元気にしていると聞いて安心した。
エドモンドは父と魔道具開発部のパシュカーレからの手紙も預かってきてくれていて、父からは「好きにやると良い」と言うような事が書いてあったが、パシュカーレからは「ちゃんと出勤してこない者はお役御免。しかし、良い発明は買い取るので相談するように」と書いてあり、いつも通りすぎて笑ってしまった。
リチェルカーレの王子からも「上手く行ったらそのうち遊びに行くよ」と言伝されたそうだが、これは非公式にでもリチェルカーレが公認してくれると言う事なのだろうか?
今まで『魔王討伐』を掲げていた国だけに信用は出来ないな。
それを言ったら僕もそうなんだけれど。
手紙に目を通していると、ディミトラの王と第一王子が、リトス姫と第二王子のミネア、ガリエナ、ダグラスに囲まれて連れて来られた。
彼らだけは眠らされなかったらしい。
王と第一王子は未だにこの状況が飲み込めないのか、きょろきょろと辺りを見回して落ち着かなかった。
「魔王さま、いらして下さってありがとうございます。今から国の移譲についての話し合いを行いたいと思います」
ミネアに真ん中へ座る様に促された。
席に着き、リトス姫とミネアが差し出した紙に目を通すと、この国を魔族側へ明け渡す条件や保証、決まり事、法律について書かれていた。
いつの間にこんなものを作ったのだろうかと思うくらい詳細に書かれている。
「これは?」
「あれから私なりに色々調べ、こちらの草案を宰相と共に作成しました。国の制度などで変わって来る部分もあるでしょうし。魔石資源が無くなった後の復興状況にもよりますね」
ミネアが進み出て説明してくれた。
この王子、少々気弱だが、文官としての才能はあるらしい。
このまま補佐になって欲しいものだ。
「その辺は追々教えてくれ。とりあえず、王族に国政の権利を手放してもらいたい。一番手っ取り早いのは全員処刑してしまう事だが……」
僕が視線を送ると、王と第一王子は顔色を悪くして、助けを求めるようにリトス姫とミネアを見た。
「……私、お二人がなさった事は許せませんわ。もう王族であることも恥ずかしい、魔王さまの方へ付かせて頂きます」
「私は一国民として、この国を正しい方向へ導きたいと思っています。前々から思っていたのですが、この国は貧富の差が大きい。奴隷制度などの悪習も失くしたいと思います。それを実行するに王族の存在ははっきり言って邪魔ですね」
二人にそう言われて、二人はがっくりと肩を落とした。
「もう反撃しようなんて考えない方が良いぞ。こちらの援軍も到着したし、この状況を見たら僕たちに敵う訳がないのも分かるだろう? 」
辺りを指し示すと、そこには未だ眠ったままのディミトラの騎士や兵士がいる。
皆、ローズの言う通り良い夢を見ているのか、穏やかな顔つきだ。
「さぁ、さっさと進めようか。僕としては君たちが野垂れ死にしようが関係ないのだが、少しでも良い環境で生き残りたいのならサインしてもらいたい。国政の方は素人だが、もちろん協力してくれるのだろう? 」
ミネアの方を見ると力強く頷いてくれた。
魔族側は、ここに来た時点で僕に従うと言う事だそうだ。
出された書類にサインしようとするとローズが待ったをかけた。
「この状況を皆に見てもらいましょう」
パチンと指を慣らすと、そこら辺で眠っていた者たちが起き上がり始めた。
ゆっくりと起き上がった兵士たちは目の前に王がいるのを見て、慌てて姿勢を正した。
その中から騎士団長が進み出て来たが、こちらに結界があるので近付く事ができない。
「騎士団長、どうか助けてくれ」
王は未だにこの状況から抜け出そうとしている。
懇願されてた騎士団長は結界を剣で断ち切ろうとしたが、何度やっても弾かれてしまい、終いには肩で息をして、その場に跪いてしまった。
「ところで王」
跪く騎士団長を見ている王へ僕は声を掛ける。
「魔石資源の無くなったこの国をあなたは導く事ができるのか? ここはもう魔族が闊歩する国になったが、あなたは制御できるのか? 他国との交渉も国民への説明もこの戦いの後始末も全て僕が代わって、しかも、あなたたちの生活まで保障してやろうというのに」
今まで通りの生活は保障しかねるがな、と心の中で付け加える。
そう言うと、王は渋々ペンを取った。
それを見て、騎士団長は泣き崩れていたが、他の者たちはどこかホッとしているように見えた。
*******
それからは怒涛の日々だった。
国政はミネアとリトスに任せきりだったが、外交は僕が出ない訳に行かない。
人も足りなくて、ディミトラ王国だった頃の優秀な文官や武人を雇い直し、国民から広く人材を集めた。
そんな僕のやり方に反発する貴族も多かったが、他所から来た僕には貴族の事など知る由もない。
今では殆ど価値は無いが、貴族と言う地位を取り上げないだけでもありがたい事だろうに、どうしても嫌だ言うなら出ていけと脅せば大体大人しくなった。
良かったのは、このは小さく不毛な砂漠地帯が多かったので土地持ちの貴族が少ない事か。
そして、その土地持ちの貴族が住む地方にも人を派遣して状況を調査したり、魔石産業以外の新しい事業を模索したりした。
他にも大切な事として、奴隷制を廃止したり、鉱山を閉めたり、とにかくやる事が一杯で手が回らない。
一番大変だったのが魔族と人間の常識のすり合わせだったが、これは警備兵に魔族と人間の両方をよく知っている者を雇う事で何とかなった。
皆、一丸となって頑張ってくれたのだが、それでも一時期、国内が混乱した。
しかし魔族が闊歩する国と言う事で恐れられて、他の国に攻め込まれることはなかった。
国の名前も決まった。
僕はディミトラのままで良いと思ったのだが、世間的にそういう訳にはいかないらしい。
仕方ないので国名は『アルベロ魔王国』とした。
アルベロはこの国が始まる切欠となった。
王家に伝わる物語でも『全ては一人の樹の精霊が現れたことからはじまる』と書かれているそうだ。
そして僕は教会のドームで日の光を受けてキラキラ輝いている、樹の姿のアルベロを見て思い出した。
あのゲームのタイトルが『アルベロ国物語』だった事を。
そう、あれはリチェルカーレの話じゃなかったのだ。
しかし、それももうどうでも良い。
だって側にはフィオがいる、僕は幸せになった。
結局ゲームはゲームだったのだ。
――そして、魔王は全てを破壊する者ではなく、人間と魔族が共に暮らせる新しい時代を作る者になった。
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