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君を探して
探検
しおりを挟む「出られない……」
翌日、ガリエナと二人で、このハーレムと呼ばれている場所を一日かけてじっくりと回ってみた。
結果、存在が分かった出入り口は2つだけ。
1つはここで使う物資を運び入れる質素な階段。
もう1つは王が利用する豪華な扉だ。
この場所は古代遺跡の中にあるらしく、その扉や外周には、古代語がびっしりと書いてあって、それが結界の役割を果たしている。
解読できれば結界を解いて外に出られそうだが、それには何年かかるのか考えただけで頭が痛くなった。
一番嫌なのが、王に生命を握られていると言うところだ。
この中で何か行われても外には絶対にバレないだろうし、最悪、殺されても秘密裏に処理されてしまうだろう。
生活するにしたって、王の気分ひとつでここにいる者たちの生活は変わってしまう。
早く外に出たい。
フィオを取り戻すためにも、こんな所でモタモタしているわけには行かないのだ。
「……でも、この国はそこまでしてここを維持する必要があるのか? 」
「確かに厳重すぎるよな」
今、僕とガリエナはハーレムの外周に沿って作られた廊下にいた。
僕が石の床に腰を下ろすと、熱心に古代語を読んでいたガリエナも向かいに腰を下ろす。
「そもそも、みんな何でここに入れられたんだ? ハーレムって言っても、王なんか滅多に来ないらしいじゃないか」
僕がそう言うと、ガリエナもうーんと唸る。
「もしかしたら、本当に何かを封印してるとか? 」
これが、この古代文字の結界を見た僕たちの推理である。
こう言った結界は、古代遺跡に良く見られるのだ。
そしてそこには必ず何かが封印、もしくは封印しようとした跡が残っていた。
「ありえるな。ちょっとそこら辺の女の子にでも聞いてみるか」
ガリエナはいたずらそうにニッと笑うと、立ち上がった。
「は? 」
僕はびっくりしてしまった。
まさかこんな状況で女の子と遊ぶ気なのか?
いや、こいつの事だ。
一時の快楽の為の場所や時間は関係ない、ヤりたい時にヤる、もしくは行為のスパイスにするつもりなのかも――。
「いや、何考えてるのか丸分かりなんだけど。本当に話を聞くだけだって、信用無いな」
ガリエナの声が低くなった。
こいつが怒るなんて珍しい。
「前から聞きたかったんだけど、お前、オレの事どう思ってるの? 」
「下が緩いチャラ男」
「ひっど、オレそんなに遊んでないけど! 見た目で判断するの止めてくれる? 」
「だってさ、実際に僕みたいのまでナンパしてきただろう? 」
「あーーーーー」
ガリエナは叫びながら両手で顔を覆った。
僕たちが出会った時の事を思い出したようだ。
僕より4つ年上のガリエナと出会ったのは、僕が王宮魔術師団の入団式だ。
その時、右も左も分からなかった僕をいきなりナンパしてきたのは今でも忘れない。
「あれは、お前だからだぞ」
指の間からこちらを窺うように覗き見たガリエナの顔は赤かった。
別に僕だけじゃなく、その後ほかの奴にも声を掛けていたような気がするけれど、どっちにしても今となっては黒歴史だよな、と思いつつも揶揄うのが止められない。
こいつとは、こうやって何でも言い合ってじゃれるのが楽しいのだ。
「じゃあ、仕事中でも関係なく女の子に声掛けてるのは何なんだよ」
「あれは任務。オレの本当の役割は現地での情報収集だ、遊んでる訳じゃないぞ」
「そうなのか、気付かなかった。気付かせないお前すごいな。それじゃ俺に付いてきたのも任務なのか? 」
「……違う」
ちょっと不機嫌になったガリエナの瞳がじっと僕を射る。
その瞳が真剣過ぎて、僕は少し慄いてしまった。
なんで、そんな表情をするんだよ。
「オレは……お前が弟みたいで放っておけないんだよ」
「そ、そうか。こんな所まで付いて来てくれてありがとうな」
「ああ。今だってさ、そんなに脚広げて座って、やらしー下着が見えてるぞ」
「うわっ!」
僕は慌てて立ち上がり、股を隠した。
いや、隠したところで尻も半分透けているんだが、下着まで女物なのをすっかり忘れていた。
「ははっ、油断しすぎ。そう言うの気を付けろよ。まぁ、フォーレに頼むって言われてるから任務って言えば任務かもな」
ガリエナは僕の頭を数回ポンポンと叩くと、またニッと笑う。
「さて、情報収集といきますかね。ジルヴァーノは今夜もローズに連絡を取る気なんだろ? 早く寝な」
そう、僕はローズから淫魔は夢を渡れると聞いたので、昨夜は会いたいと思いながら寝たのだが会えなかった。
騙されたのか、それともここの結界は夢にまで影響するのだろうか。
そもそも夢の中でローズの呼び方が分からないので、眠りが浅くなって何だか疲れてしまった。
それにここでは一見、自由にさせられている様だが、こうしている間も人の気配がする。
どこかで僕たちの行動を監視してるのだろう。
そういうのも疲れる一因だ。
ガリエナは大丈夫なのだろうか。
ひらひらと手を振って廊下を去っていくガリエナを見送りながら、僕は無性にフィオに会いたいと思った。
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