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中学校編
冬休みの地獄と悪魔
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球技大会の翌日から、また始まった。
いつもの『無視』だ。
さらにそれはあからさまで『三浦のせいで負けた』
『あいつさえゴールを決めたらな』『あいつさえいなければ』
三浦とすれ違いざまに言う者、三浦を睨み付けながら言う者、それは様々だったが一貫しているのは「球技大会で負けたのは三浦のせい」と言う、三浦への怒りの感情だった。
三浦は日々口数が減り、声も小さくなり、元気がなくなって行った。クズ組の中本と藤枝、そして龍一はいつも三浦を気にかけ、側から離れないようにつるんだ。殴られたり蹴られたりはしないので、クズ組がケアするだけで何とか三浦の精神状態は保たれていたように思えた。
だが数日後、担任の教師から『突然だが三浦は転校することになった』と聞かされる。驚いたクズ組は放課後に三浦の家を訪ねるが、既に引っ越した後だった。龍一がクズ組の心中を代表するように口を開いた。
『シロ…救えなかったな』
三人は誰も居なくなった空き家の前で暫く呆然とした。
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三浦が転校した事でクズ組の交流もすっかりなくなってしまい、クラスの中では龍一はまた1人になってしまう。しかし唯一の救いは吉田だった。彼だけは定期的に龍一のクラスに来ては、いつものように『あははあはは』と笑うのだった。
言い方は悪いが、やっと龍一は勉強に集中できる精神状態となり、得意の深夜の勉強を開始した。ほとんど勉強を中断していたので、また一から復習を始めた。
時は過ぎ、雪がちらつき、冬休みとなった。
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中学3年の冬休みと言えば、受験への追い込みでしかないと言っても過言ではない。さすがの龍一も毎日勉強をしていたが、12月24日はクリスマスイブ、12月25日はクリスマス、12月31日は大晦日、1月1日は元旦と、数々のイベントが龍一の邪魔をしてくる。それでなくてもやたらと親族や父親の会社の仲間が集まる家だと言うのに、こうなると入れ代わり立ち代わり毎日のように人が来る。
龍一にとっての地獄の始まりである。
父親の事も、母親の事も理解しておらず、ただただめんどくさい、ウザいとしか思っていない龍一にはなぜ人が集まるかをわかっていなかった。人が来るとお金使って普段家では出ないような食事を出し、飲まないのに人の為だけに高いお酒を買って、めちゃくちゃに荒れた帰宅後の後片付けをする、それを繰り返し、今月も苦しいと言っては朝、昼、晩の食事は納豆になる。正直バカじゃねぇの?と思っていた、この日は無理だと言い続ければやがて人は来なくなるから面倒な接待もしなくていいのに…と言う考えしかなかったのだ。
ヘッドフォンで歌を聞きながら勉強するが、デリカシーのない親族ばかりなので、ノックも無しに龍一の部屋に入り込む。『なんか映画観せてくれ龍!』そう言っては龍一の部屋で酒を飲み、映画が終わるまで居座ったりもする。
『クソっ!何なんだよ』
イライラして勉強どころではなく、結局連日、親戚ラッシュが終わる深夜に勉強するしかなかったのだった。クリスマスイブと言ってもケーキもなく、クリスマスと言ってもケーキはない、親戚に料理を振舞うからケーキを買うお金が無いのだ、龍一にはそれも腹正しかった、クリスマスと言えばケーキ、普段ケーキなんか食べられないのでクリスマスのケーキは本当に楽しみだったのに親族のせいで食べられない、腹が立って腹が立って仕方がない『なんでクリスマスに納豆なんだ!』と叫びたいところだったが、少しばかり心が成長した龍一はグッと堪えて納豆に卵を落とし、ちょっとだけ豪華にしてクリスマス納豆を楽しんだ。
当然ながら夜は親族が来るので良い食事になるのだが、親族の『彼女は出来たのか?』『どこの高校に行くんだ?』『将来何やる気でいるんだ?』というクソみたいな質問責めにあうのがうんざりだった、適当に答えたとしても『彼女の1人くらい作らないと!』『勉強してんのか?あそこ行ったって何にもならないだろう』『そんな仕事で食っていけるわけないだろう』という次のお決まりの台詞が用意されている、この一連の流れに付き合うのが本当に嫌だった龍一は『お腹空いていない』と言って夜食の席を拒否し、ヘッドフォンをして勉強を始めるが、お腹はグーグー鳴っていた。
クリスマスプレゼントなどあるわけもなく、期待などしていなかったが、気前のいい叔父さんが来ると、龍一に『好きなモノ買え』と言って5.000円をくれる、中学3年生に5.000円は大金だ、欲しいものを買ってくれるより、現金でもらう方がよっぽど嬉しい気持ちではあった。
そして大晦日がやってくると、悪魔の兄弟たちがやってくる、28日くらいからやってきて、正月をまたいで3日くらいまでロングランで龍一を苦しめる。だが、お年玉をくれるからそこは楽しみな龍一でもあった。案の定12月28日に四男の弥生 潤一(やよい じゅんいち)と五男の弥生 昂一(やよい こういち)が現れた。寝泊りは上の階の姉の家だが、退屈なもので龍一の部屋に朝から夜まで居座っては映画を観たりゲームをして過ごすのだからたまったものではない。龍一も付き合わされるが、龍一の強さに両兄が敵わず、勝つまでやるぞ!と熱くなる。わざと負けると『わざとだろ』とキレる、本物の輩だからどうにもならない。
勉強しなくてはならないのに環境がそうさせない、龍一の精神は追い込まれて行き、吉田の家で勉強しようと目論むが『年末年始はどこの家も忙しいんだからやめろ』と怒られる。いや実際問題そうだろうか、相手に確認をし、吉田自身に問題が無ければ数時間一緒に勉強するのは可能ではないだろうかとも思ったが、年末に人の家に行くのもなぁ…とも感じる龍一だった。
勉強したいと申し出ている龍一の心中を察することなく、まるで監禁した龍一の脱出を阻止したかのように悪魔の両兄たちは『龍!ゲーム付き合え!』と言っては数時間ぶっ通しで龍一に戦いを挑むのだった。
中学3年と言う若さでも、毎日数時間のゲームと深夜から朝までの勉強を繰り返していると目もかすみ、意識も朦朧としてくるわけで、12月30日の夜は勉強が出来ずに倒れるように眠ってしまった。
いつもの『無視』だ。
さらにそれはあからさまで『三浦のせいで負けた』
『あいつさえゴールを決めたらな』『あいつさえいなければ』
三浦とすれ違いざまに言う者、三浦を睨み付けながら言う者、それは様々だったが一貫しているのは「球技大会で負けたのは三浦のせい」と言う、三浦への怒りの感情だった。
三浦は日々口数が減り、声も小さくなり、元気がなくなって行った。クズ組の中本と藤枝、そして龍一はいつも三浦を気にかけ、側から離れないようにつるんだ。殴られたり蹴られたりはしないので、クズ組がケアするだけで何とか三浦の精神状態は保たれていたように思えた。
だが数日後、担任の教師から『突然だが三浦は転校することになった』と聞かされる。驚いたクズ組は放課後に三浦の家を訪ねるが、既に引っ越した後だった。龍一がクズ組の心中を代表するように口を開いた。
『シロ…救えなかったな』
三人は誰も居なくなった空き家の前で暫く呆然とした。
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三浦が転校した事でクズ組の交流もすっかりなくなってしまい、クラスの中では龍一はまた1人になってしまう。しかし唯一の救いは吉田だった。彼だけは定期的に龍一のクラスに来ては、いつものように『あははあはは』と笑うのだった。
言い方は悪いが、やっと龍一は勉強に集中できる精神状態となり、得意の深夜の勉強を開始した。ほとんど勉強を中断していたので、また一から復習を始めた。
時は過ぎ、雪がちらつき、冬休みとなった。
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中学3年の冬休みと言えば、受験への追い込みでしかないと言っても過言ではない。さすがの龍一も毎日勉強をしていたが、12月24日はクリスマスイブ、12月25日はクリスマス、12月31日は大晦日、1月1日は元旦と、数々のイベントが龍一の邪魔をしてくる。それでなくてもやたらと親族や父親の会社の仲間が集まる家だと言うのに、こうなると入れ代わり立ち代わり毎日のように人が来る。
龍一にとっての地獄の始まりである。
父親の事も、母親の事も理解しておらず、ただただめんどくさい、ウザいとしか思っていない龍一にはなぜ人が集まるかをわかっていなかった。人が来るとお金使って普段家では出ないような食事を出し、飲まないのに人の為だけに高いお酒を買って、めちゃくちゃに荒れた帰宅後の後片付けをする、それを繰り返し、今月も苦しいと言っては朝、昼、晩の食事は納豆になる。正直バカじゃねぇの?と思っていた、この日は無理だと言い続ければやがて人は来なくなるから面倒な接待もしなくていいのに…と言う考えしかなかったのだ。
ヘッドフォンで歌を聞きながら勉強するが、デリカシーのない親族ばかりなので、ノックも無しに龍一の部屋に入り込む。『なんか映画観せてくれ龍!』そう言っては龍一の部屋で酒を飲み、映画が終わるまで居座ったりもする。
『クソっ!何なんだよ』
イライラして勉強どころではなく、結局連日、親戚ラッシュが終わる深夜に勉強するしかなかったのだった。クリスマスイブと言ってもケーキもなく、クリスマスと言ってもケーキはない、親戚に料理を振舞うからケーキを買うお金が無いのだ、龍一にはそれも腹正しかった、クリスマスと言えばケーキ、普段ケーキなんか食べられないのでクリスマスのケーキは本当に楽しみだったのに親族のせいで食べられない、腹が立って腹が立って仕方がない『なんでクリスマスに納豆なんだ!』と叫びたいところだったが、少しばかり心が成長した龍一はグッと堪えて納豆に卵を落とし、ちょっとだけ豪華にしてクリスマス納豆を楽しんだ。
当然ながら夜は親族が来るので良い食事になるのだが、親族の『彼女は出来たのか?』『どこの高校に行くんだ?』『将来何やる気でいるんだ?』というクソみたいな質問責めにあうのがうんざりだった、適当に答えたとしても『彼女の1人くらい作らないと!』『勉強してんのか?あそこ行ったって何にもならないだろう』『そんな仕事で食っていけるわけないだろう』という次のお決まりの台詞が用意されている、この一連の流れに付き合うのが本当に嫌だった龍一は『お腹空いていない』と言って夜食の席を拒否し、ヘッドフォンをして勉強を始めるが、お腹はグーグー鳴っていた。
クリスマスプレゼントなどあるわけもなく、期待などしていなかったが、気前のいい叔父さんが来ると、龍一に『好きなモノ買え』と言って5.000円をくれる、中学3年生に5.000円は大金だ、欲しいものを買ってくれるより、現金でもらう方がよっぽど嬉しい気持ちではあった。
そして大晦日がやってくると、悪魔の兄弟たちがやってくる、28日くらいからやってきて、正月をまたいで3日くらいまでロングランで龍一を苦しめる。だが、お年玉をくれるからそこは楽しみな龍一でもあった。案の定12月28日に四男の弥生 潤一(やよい じゅんいち)と五男の弥生 昂一(やよい こういち)が現れた。寝泊りは上の階の姉の家だが、退屈なもので龍一の部屋に朝から夜まで居座っては映画を観たりゲームをして過ごすのだからたまったものではない。龍一も付き合わされるが、龍一の強さに両兄が敵わず、勝つまでやるぞ!と熱くなる。わざと負けると『わざとだろ』とキレる、本物の輩だからどうにもならない。
勉強しなくてはならないのに環境がそうさせない、龍一の精神は追い込まれて行き、吉田の家で勉強しようと目論むが『年末年始はどこの家も忙しいんだからやめろ』と怒られる。いや実際問題そうだろうか、相手に確認をし、吉田自身に問題が無ければ数時間一緒に勉強するのは可能ではないだろうかとも思ったが、年末に人の家に行くのもなぁ…とも感じる龍一だった。
勉強したいと申し出ている龍一の心中を察することなく、まるで監禁した龍一の脱出を阻止したかのように悪魔の両兄たちは『龍!ゲーム付き合え!』と言っては数時間ぶっ通しで龍一に戦いを挑むのだった。
中学3年と言う若さでも、毎日数時間のゲームと深夜から朝までの勉強を繰り返していると目もかすみ、意識も朦朧としてくるわけで、12月30日の夜は勉強が出来ずに倒れるように眠ってしまった。
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