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最終章:魔界
終わりの時(5)
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再びエネルギーが流れ始め・・・
私たちはその流れに逆らいながら、必死でコアの中心にとどまろうとしていて・・・
魔界から流れ込む激しいエネルギー流の中で、私は最大の攻撃魔法を・・・全ての魔力を使って・・・
膨大な魔力の火球が私たちを包み・・・それは魔道を内側から破壊し・・・
私たちの周囲の全てが崩壊していきます。
あらゆるものが形を失い、全体は部分へと、部分は分子へと、分子は原子へと、原子は素粒子へと、素粒子はエネルギーへと・・・
崩壊の連鎖が続き、全方位の物体が原始の混沌へと還元されていき・・・
いえ、崩壊するのは物質だけではありません。
空間すら細分化されて、純粋な情報の断片と化し、時間さえ分断され、無秩序な波動へと変化し、・・・
もはやそこに構造はなく、因果関係も消失し、存在の痕跡が徹底的に失われていき・・・
強力な光の魔球はその周囲を完全に初期化しながら、外へ外へと膨らんでいくのです。
それが、どの程度まで広がっていったのか、私にすらわかりませんでした。
しかし、その崩壊の拡大とともに、時空の再構成が始まったのです。
一体何がそこに創造されるのか、予想することすらできません。
何がそこに作り出されるのか・・・何がそこに構築されるのか・・・
たとえそれが不確定な未来の選択だとしても、その再構成は確実に進んで行くのです。
そして、その再構成の圧力が内部へと・・・外側から内側へと・・・私たちの周囲へと・・・
無限大の力が、私たちさえをも再構成しようとして・・・
防御魔法でも守りきれません。それは、私の魔力などで抗えるような力ではないのです。・・・
絶対的な力・・・刃向かうことを一切受け付けない完全な力・・・
私たちの存在は次第に押しつぶされていきます。
二人が存在しえる空間は次第に小さくなっていき・・・
私は必死でした。
何とかして、私たちの体を守ろうとして・・・何とかして、私たちの存在を維持しようとして・・・何とかして、二人を・・・
その時、私はルークを見ました。
彼は驚いたような表情で周囲の変化を見ていました・・・が、私の方を振り向いて、にっこりと笑ったのです。
・・・なんて幸せそうな表情を・・・ルークがあんな顔を見せるなんて・・・
長い間一緒に旅をしてきましたが、彼がそれほど幸せそうな顔をしたことは今までに一度もなかったのです。
いえ、私は人間にそんな表情ができるとは思っていなかったのです。
転生する前の世界でも、転生した後の世界でも、それほど幸せそうな顔をした人間に会ったことがないのです。
私も思わず微笑みました。
その微笑みは、彼が私に与えてくれたものなのか、私の心が生み出したものなのか、あるいはその両方なのか・・・
私は幸せな気分でした。
もうこれ以上の幸福など、この世に絶対に存在しないと断言できるほどの・・・
私は決心しました。
瞬間移動の魔法・・・
どこに行くのかわかりません。でも、どこかへ・・・
二人一緒に行けるのかどうかもわかりません。でも、必ず再会できるはず・・・
私は瞬間移動の魔法を・・・
でも、なぜか、私たちはどこへも行かないのです。
私たちの体はどこへも移動しないのです。
・・・失敗した!・・・
どうしてなのでしょうか。
私の魔力が不足しているのでしょうか。
あるいは、この魔道の中では移動の魔法が使えないのでしょうか。
それとも、空間の再構成が起きている最中に、その異常な状態遷移を突き抜けて移動することなどできないのでしょうか。
私はもう一度試しました。
しかし、ダメでした。
・・・私たちはここで、このまま終わっていく・・・
私は何とかしようとして・・・何度も何度も魔法を・・・でも・・・
私はルークを見ました。
ルークに謝ろうとしました。
・・・ごめんね・・・ルーク、ごめんね・・・最後に失敗しちゃった・・・
いえ、それを言葉にする必要などありませんでした。
ルークも状況を理解していたのです。
彼もわかっていました・・・私たちが移動できないということが・・・
私たちが、次第に縮小していく防御魔球の中に閉じ込められてしまったということが・・・
ルークも少し不思議そうな表情で私を見ていましたが、やがて、彼は私を優しく抱きしめたのです。
その時の彼は、やはりさっきと同じように、幸せそうに笑っていたのです。
幸福に満ちた笑顔のまま、彼は私を抱きしめたのです。
最後の最後で失敗した私を・・・
一番重要な時にし損じた私を・・・
彼の目には悲しみなど微塵もなく、後悔もなく、怒りもなく、失望もなく・・・
ただ喜びでいっぱいになった目で彼は私を見つめ、私を抱きしめ・・・
空間は次第に小さくなっていき・・・もはや、そこには私たち二人が存在しえる領域すらなく・・・
私とルークは・・・
その時、彼の持っていた剣が微かに光り・・・
私たちはその流れに逆らいながら、必死でコアの中心にとどまろうとしていて・・・
魔界から流れ込む激しいエネルギー流の中で、私は最大の攻撃魔法を・・・全ての魔力を使って・・・
膨大な魔力の火球が私たちを包み・・・それは魔道を内側から破壊し・・・
私たちの周囲の全てが崩壊していきます。
あらゆるものが形を失い、全体は部分へと、部分は分子へと、分子は原子へと、原子は素粒子へと、素粒子はエネルギーへと・・・
崩壊の連鎖が続き、全方位の物体が原始の混沌へと還元されていき・・・
いえ、崩壊するのは物質だけではありません。
空間すら細分化されて、純粋な情報の断片と化し、時間さえ分断され、無秩序な波動へと変化し、・・・
もはやそこに構造はなく、因果関係も消失し、存在の痕跡が徹底的に失われていき・・・
強力な光の魔球はその周囲を完全に初期化しながら、外へ外へと膨らんでいくのです。
それが、どの程度まで広がっていったのか、私にすらわかりませんでした。
しかし、その崩壊の拡大とともに、時空の再構成が始まったのです。
一体何がそこに創造されるのか、予想することすらできません。
何がそこに作り出されるのか・・・何がそこに構築されるのか・・・
たとえそれが不確定な未来の選択だとしても、その再構成は確実に進んで行くのです。
そして、その再構成の圧力が内部へと・・・外側から内側へと・・・私たちの周囲へと・・・
無限大の力が、私たちさえをも再構成しようとして・・・
防御魔法でも守りきれません。それは、私の魔力などで抗えるような力ではないのです。・・・
絶対的な力・・・刃向かうことを一切受け付けない完全な力・・・
私たちの存在は次第に押しつぶされていきます。
二人が存在しえる空間は次第に小さくなっていき・・・
私は必死でした。
何とかして、私たちの体を守ろうとして・・・何とかして、私たちの存在を維持しようとして・・・何とかして、二人を・・・
その時、私はルークを見ました。
彼は驚いたような表情で周囲の変化を見ていました・・・が、私の方を振り向いて、にっこりと笑ったのです。
・・・なんて幸せそうな表情を・・・ルークがあんな顔を見せるなんて・・・
長い間一緒に旅をしてきましたが、彼がそれほど幸せそうな顔をしたことは今までに一度もなかったのです。
いえ、私は人間にそんな表情ができるとは思っていなかったのです。
転生する前の世界でも、転生した後の世界でも、それほど幸せそうな顔をした人間に会ったことがないのです。
私も思わず微笑みました。
その微笑みは、彼が私に与えてくれたものなのか、私の心が生み出したものなのか、あるいはその両方なのか・・・
私は幸せな気分でした。
もうこれ以上の幸福など、この世に絶対に存在しないと断言できるほどの・・・
私は決心しました。
瞬間移動の魔法・・・
どこに行くのかわかりません。でも、どこかへ・・・
二人一緒に行けるのかどうかもわかりません。でも、必ず再会できるはず・・・
私は瞬間移動の魔法を・・・
でも、なぜか、私たちはどこへも行かないのです。
私たちの体はどこへも移動しないのです。
・・・失敗した!・・・
どうしてなのでしょうか。
私の魔力が不足しているのでしょうか。
あるいは、この魔道の中では移動の魔法が使えないのでしょうか。
それとも、空間の再構成が起きている最中に、その異常な状態遷移を突き抜けて移動することなどできないのでしょうか。
私はもう一度試しました。
しかし、ダメでした。
・・・私たちはここで、このまま終わっていく・・・
私は何とかしようとして・・・何度も何度も魔法を・・・でも・・・
私はルークを見ました。
ルークに謝ろうとしました。
・・・ごめんね・・・ルーク、ごめんね・・・最後に失敗しちゃった・・・
いえ、それを言葉にする必要などありませんでした。
ルークも状況を理解していたのです。
彼もわかっていました・・・私たちが移動できないということが・・・
私たちが、次第に縮小していく防御魔球の中に閉じ込められてしまったということが・・・
ルークも少し不思議そうな表情で私を見ていましたが、やがて、彼は私を優しく抱きしめたのです。
その時の彼は、やはりさっきと同じように、幸せそうに笑っていたのです。
幸福に満ちた笑顔のまま、彼は私を抱きしめたのです。
最後の最後で失敗した私を・・・
一番重要な時にし損じた私を・・・
彼の目には悲しみなど微塵もなく、後悔もなく、怒りもなく、失望もなく・・・
ただ喜びでいっぱいになった目で彼は私を見つめ、私を抱きしめ・・・
空間は次第に小さくなっていき・・・もはや、そこには私たち二人が存在しえる領域すらなく・・・
私とルークは・・・
その時、彼の持っていた剣が微かに光り・・・
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