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最終章:魔界
じゃあ、二人で一緒に・・・(5)
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私たちは、ココに案内してもらって、坑道を使って地下9階層まで降りることにしました。
斜坑には、運搬用の巨大なエレベーターがついていました。
ココはその動かし方を知っていたのです。
しかし、重い荷物の運搬用なので、非常にゆっくりとしか動きません。
下に降りるまでには、一時間ほどかかるとココは言いました。
それまで待つしかありません。
ココは心配そうに、
「9階層には、たくさんの兵隊がいるはずです。大丈夫でしょうか・・・」
でも、ルークは、自分に任せてくれ、と言いました。
彼には何か考えがあるのでしょう。
「そこへ行けば、魔界へ帰れる?」
私が尋ねると、ココは頷きました。
*
ルークはふと私に、
「お腹が空いたんだけど・・・」
「うん。そうね・・・」
「いや・・・俺、さっき何も食べてないから・・・ソフィアさんや、ココさんは、ズルして食べてたけど・・・」
「ズル?」
「もう、最後の一個しか残ってないんだけど、俺、食べてもいいかな?」
「じゃあ、美味しくしてあげるね」
そう言って、私は、ルークが食べようとしている最後の一個のおにぎりに魔法をかけました。
すると、おにぎりの表面の色が変わって・・・
「あ、なんか、変な色になった・・・ソフィアさん、なんか変なことしたでしょう・・・汚れちゃった・・・茶色くなっちゃった・・・」
「違うよ・・・汚れたわけじゃないよ・・・焼いたの・・・表面をちょっと焦がしたの・・・焼きおにぎり・・・
食べてみてよ・・・ものすごく美味しいから・・・」
「ほんとだ・・・とてもいい匂いがする・・・」
すると、ルークはおにぎりを三つに分けようとするのです。
「ルーク、何してるの?」
「いや、三人で食べようと思って・・・」
「いいよ。私たちはさっき食べたんだから・・・」
ココも頷きました。
「俺、ものすごく、お腹が空いてるんだけど・・・でも、一緒に食べたい・・・最後のおにぎりだから・・・」
ルークはうつむいたまま・・・なぜか顔を上げようともせずに・・・
もしかすると泣いているのでしょうか・・・
私は黙って、ルークが持っているおにぎりのはしっこの方のごはんを数粒とって、口に入れて・・・ココも同じように・・・
すると、ルークは満足したように、残ったおにぎりを頬張りました。
そして、美味しい、美味しいと何度も言うのです。
*
ルークはおにぎりを食べ終えると、運搬用のエレベーターのはしの方に行って、しばらくはじっと座っていました。
横にココが座っていて・・・
二人はとても仲が良さそうなのです。
まるで昔から付き合っている恋人同士みたいな雰囲気で・・・
さっき出会ったばかりとは思えないのです。
しかも、二人が魔人と人間だとは・・・。
でも、よく見ていると、ルークの視線はココの胸に注がれていて・・・大きな胸に・・・
・・・この変態、魔人の女の子まで・・・
しかも、ルークは私をじっと見つめながら真面目な表情で言うのです。ココの母乳が飲みたいと・・・
どういうことなのでしょうか。
このエレベーターはもうすぐ9階層に到着します。
そこに、どれだけの魔人の兵がいるかわからないのです。
私たちは今から、ほとんど勝ち目のない戦いを始めようとしているのです。
そんな時に・・・母乳?・・・やっぱり、こいつは頭がおかしい・・・
でも何となく叱る気にもなれなくて、私が、魔毒があるよって言うと、ココが違うと言うのです。
「なぜか、わかりませんが、母乳には魔毒がないんです。
私たちの全身の組織には、人間にはない成分が含まれていて・・・血にも皮膚にも肉にも・・・それは人間にとっては毒なんです・・・魔毒・・・
でも、母乳の中には含まれていないんです・・・その魔毒が・・・
だから、人間が飲んでも大丈夫なんです。
理由はよくわかりません。
魔人の赤ちゃんも、生まれたばかりは、まだ魔毒に対する耐性がないのか、あるいは、魔人の母親も人間の子供を育てられるように、そうなっているのか・・・」
じゃあ、飲みたい、と言って騒いでいるルークの頭を私は二、三回叩きました。
・・・ヘンタイ・・・飲むなら、私のを飲みなさい・・・
私は罰として、魔法で彼の髪をピンク色にしました。
でも、ここには鏡がないので、本人は気が付いていないようでした。
私とココは大笑いをして・・・
斜坑には、運搬用の巨大なエレベーターがついていました。
ココはその動かし方を知っていたのです。
しかし、重い荷物の運搬用なので、非常にゆっくりとしか動きません。
下に降りるまでには、一時間ほどかかるとココは言いました。
それまで待つしかありません。
ココは心配そうに、
「9階層には、たくさんの兵隊がいるはずです。大丈夫でしょうか・・・」
でも、ルークは、自分に任せてくれ、と言いました。
彼には何か考えがあるのでしょう。
「そこへ行けば、魔界へ帰れる?」
私が尋ねると、ココは頷きました。
*
ルークはふと私に、
「お腹が空いたんだけど・・・」
「うん。そうね・・・」
「いや・・・俺、さっき何も食べてないから・・・ソフィアさんや、ココさんは、ズルして食べてたけど・・・」
「ズル?」
「もう、最後の一個しか残ってないんだけど、俺、食べてもいいかな?」
「じゃあ、美味しくしてあげるね」
そう言って、私は、ルークが食べようとしている最後の一個のおにぎりに魔法をかけました。
すると、おにぎりの表面の色が変わって・・・
「あ、なんか、変な色になった・・・ソフィアさん、なんか変なことしたでしょう・・・汚れちゃった・・・茶色くなっちゃった・・・」
「違うよ・・・汚れたわけじゃないよ・・・焼いたの・・・表面をちょっと焦がしたの・・・焼きおにぎり・・・
食べてみてよ・・・ものすごく美味しいから・・・」
「ほんとだ・・・とてもいい匂いがする・・・」
すると、ルークはおにぎりを三つに分けようとするのです。
「ルーク、何してるの?」
「いや、三人で食べようと思って・・・」
「いいよ。私たちはさっき食べたんだから・・・」
ココも頷きました。
「俺、ものすごく、お腹が空いてるんだけど・・・でも、一緒に食べたい・・・最後のおにぎりだから・・・」
ルークはうつむいたまま・・・なぜか顔を上げようともせずに・・・
もしかすると泣いているのでしょうか・・・
私は黙って、ルークが持っているおにぎりのはしっこの方のごはんを数粒とって、口に入れて・・・ココも同じように・・・
すると、ルークは満足したように、残ったおにぎりを頬張りました。
そして、美味しい、美味しいと何度も言うのです。
*
ルークはおにぎりを食べ終えると、運搬用のエレベーターのはしの方に行って、しばらくはじっと座っていました。
横にココが座っていて・・・
二人はとても仲が良さそうなのです。
まるで昔から付き合っている恋人同士みたいな雰囲気で・・・
さっき出会ったばかりとは思えないのです。
しかも、二人が魔人と人間だとは・・・。
でも、よく見ていると、ルークの視線はココの胸に注がれていて・・・大きな胸に・・・
・・・この変態、魔人の女の子まで・・・
しかも、ルークは私をじっと見つめながら真面目な表情で言うのです。ココの母乳が飲みたいと・・・
どういうことなのでしょうか。
このエレベーターはもうすぐ9階層に到着します。
そこに、どれだけの魔人の兵がいるかわからないのです。
私たちは今から、ほとんど勝ち目のない戦いを始めようとしているのです。
そんな時に・・・母乳?・・・やっぱり、こいつは頭がおかしい・・・
でも何となく叱る気にもなれなくて、私が、魔毒があるよって言うと、ココが違うと言うのです。
「なぜか、わかりませんが、母乳には魔毒がないんです。
私たちの全身の組織には、人間にはない成分が含まれていて・・・血にも皮膚にも肉にも・・・それは人間にとっては毒なんです・・・魔毒・・・
でも、母乳の中には含まれていないんです・・・その魔毒が・・・
だから、人間が飲んでも大丈夫なんです。
理由はよくわかりません。
魔人の赤ちゃんも、生まれたばかりは、まだ魔毒に対する耐性がないのか、あるいは、魔人の母親も人間の子供を育てられるように、そうなっているのか・・・」
じゃあ、飲みたい、と言って騒いでいるルークの頭を私は二、三回叩きました。
・・・ヘンタイ・・・飲むなら、私のを飲みなさい・・・
私は罰として、魔法で彼の髪をピンク色にしました。
でも、ここには鏡がないので、本人は気が付いていないようでした。
私とココは大笑いをして・・・
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