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第3章:魔人

殲滅(9)

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 ああ、私にはどうしようもないのです。
 私にはルークを守る力もないのです。
 私の防御魔法では何も守れないのです。

 ルークや私が戦ったところで、勝てるはずがありません。
 二人ぐらいで争っても、何もできない・・・
 でも、私も飛び出しました。
 何とかして、ルークと一緒に戦おうとしたのです。

 ここで上級の攻撃魔法は使えません。
 もし私の体内の魔力を全て爆発させたら、村人たちまで皆殺しにしてしまいます。
 それでは意味がありません。
 私は防御魔法で、飛んでくる魔弾を払いのけ、攻撃魔法で、攻めてくる魔術師たちの兵隊を一人一人攻撃し・・・

 その時です。
 ルークは気が狂ったように大声で何かを叫びながら・・・
 いえ、その声はルーク一人の声ではありません。
 大勢の声が・・・
 ルークは自分を魔剣とともに分身させたのです。
 魔剣を振り回すたくさんのルークの姿・・・
 しかし、それは危険な行為なのです・・・一人でも斬られれば、彼は死んでしまうかもしれない・・・魂は一つしかないのですから・・・魂は分身できないのですから・・・
 でも、ルークはもはや自分が何をやっているのかもわからなくなり・・・次々に自分を分身させ、数え切れないほどの魔剣を振りかざし・・・襲ってくる人間の特殊部隊に立ち向かい・・・

 彼の魔剣が放つ光の矢が・・・花火の矢の連射が・・・いたるところで炸裂し・・・
 彼は何度も分身を繰り返し・・・
 そのたびに、新しい光の花火が生まれ・・・
 信じられないほどの力で、人間の軍勢を少しずつ押し戻して行ったのです。
 それはきっと一時的なもの・・・彼らはすぐに再び攻めてくる・・・
 それでも、ルークは人間の軍勢に対して、たった一人で立ち向かい、踏みとどまったのです。

 彼らは一度、退却しました。
 魔剣の魔力が尽きたのか、光の矢も、分身したルークの姿も消え・・・
 私は、燃え尽きた村の中を探し回りました・・・彼を・・・ルークを・・・どこかに残っているはずのたった一人のルークを・・・

 彼はいました。倒れていました。
 家の壁の下敷きになっていましたが、彼はまだ生きていました。
 何とか生き延びたのです。
 私はすぐに治癒魔法を・・・

 私は力尽きた彼を引きずりながら、村の集会所に戻りました。
 大勢の人が死んでしまい・・・その中には女性も子供も・・・
 私が悪いんです。
 私の防御魔法の力が弱かったんです。
 だから、彼らを守り切れなかったんです。

 でも、誰も私を責めようとはしませんでした。
 若い女性が私に言いました。
 馬車の用意ができていると・・・
 少しだけだけど食料を積んであると・・・
 魔毒を除去してあるので、人間にも食べられる食料だと・・・

 そして言いました。
「また人間たちの兵隊が戻ってくる前に、早く出発してください。
 あなた方がやるべきことは、私たちを守ることではありません。
 あの魔の道を塞ぐことなんです。
 だから、それをやってください。
 私がビドラカの街まで案内しますから、早く馬車に乗ってください」

 ・・・私は何も守れなかったんです・・・
 そう叫びたい気持ちを堪えながら、私は気を失っているルークを荷台に乗せ、メティスと一緒に・・・

 村人の一人が私のところにやってきて言いました。
「さあ、馬車に乗ってください。
 私たちは、大丈夫ですよ・・・私たちは、もう覚悟してますから・・・
 でも、さっきはありがとうございます。私たちを守ってくれて・・・
 うれしかったです・・・」
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