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第3章:魔人
殲滅(5)
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メティスの体の調子は悪くなる一方でした。
両足が動かなくなり、ほとんど歩けなくなりました。
それは単に四肢を動かす機械の接続が悪くなっているだけではないようなのです。
体の内部にある魔力を制御するための装置に異常が発生しているようなのです。
きっと、私たちの体でいうのであれば、心臓や肺の機能に問題が起き始めているのでしょう。
彼女はとても辛そうなのです。
魔力の回路が途中で切れているだけなら、私の回復魔法で何とか戻してあげることができるのですが・・・
でも、彼女の体内で起き始めている故障はとても複雑で、そもそも自動人形がどういう仕組みで動いているのか理解できていない私には、治しようがないのです。
それでも、彼女は私たちの生活をいろいろと助けてくれて・・・
特に夜中の見張りはいつもやってくれて・・・
*
その日の晩も警戒は彼女に任せて、私たちは熟睡していました。
でも、その夜に恐ろしいことが起きたのです。
何かが大勢私たちに近づいてきました。
そして、メティスは私たちに危険を知らせる間もなく捉えられ・・・
それだけではありません。
私とルークも何かの薬で眠らされてしまい・・・
私が目が覚めると・・・もう昼でした。
そこは魔人の村でした。
きっと、私たちは魔人の村が近くにあることに気づかずに野宿をしていたのでしょう。
魔人たちの方が私たちの存在に先に気が付いた・・・そして、私たちをとらえたのです。
でも、なぜか魔人たちは私たちを殺そうとはしませんでした。
いえ、それどころか、目覚めた私は全く拘束されていないのです。
部屋の中のベッドの上に寝かせられていて・・・やわらかいベッドの上に・・・
ルークも近くにいました。
彼も眠っていました。そして、彼の体も拘束されていないのです。
しかも、私たちの荷物も、彼の足元に置いたままになっていて・・・私のそばには、魔法の杖も置いてあるし、彼のベッドの横には魔剣が立てかけてあるし・・・
どういうことなのでしょうか。
私たちは捉えられたわけではないのでしょうか。
魔人たちは私たちを恐れていないようです。
私たちが人間であることはもうわかっているはずなのに・・・
人間だから、こうやって薬で眠らされて無理やり連れてこられたのです・・・でも・・・。
確かに、強い魔人が人間の一人や二人を恐れる必要などないのかもしれません。
あるいは、彼らは私たちのことを敵だとは思っていないのかもしれません。
近くにメティスが・・・彼女もベッドの上に寝かせられていましたが・・・
たくさんの魔人たちが彼女の体を取り囲んでいて、何かをしているのです。彼らは、彼女の体に何かを・・・
私はすぐに理解しました。
魔人たちは、メティスを修理しようとしているのです。
壊れた部分の部品を交換したりして・・・
一人の魔人が私のところにやって来ました。
年老いた老人・・・
「目が覚めましたか? 気分はどうですか?」
それから、彼は私のためにお茶をいれてくれました。
彼は私にコップを差し出しながら、
「あなた方が人間だということはわかっていますよ・・・
だから、ちゃんと魔毒を抜いたお茶です・・・飲んでも大丈夫ですよ・・・」
私はコップを受け取りましたが、何となく怖くて、その液体を口にすることができませんでした。
彼は私に、
「でも、あなたは魔術師ですよね。
魔力が使えて・・・それに、魔毒に対する耐性もかなりありますよね・・・
別に魔毒を抜かなくてもよかったのでしょうか・・・」
それから、彼は私に、私たちを強引な方法でここへ連れてきたことについて謝りました。
彼は説明しました。
ここは魔人の村なのだと。
小さな村なのだと。
昔は大勢の魔人が住んでいたのだと。
でも、戦争のせいで、たくさん死んでしまったのだと。
今はもうわずかな村人が残っているだけなのだと。
「あなた方がこの村に近づいていることは、かなり前から把握していました・・・」
彼の話では、私たちがD地区を通り過ぎたころから、もうその存在に気がついていたようです。
「私たちは、あなた方の旅の目的を理解しているつもりです。
だから、それを妨げるつもりはありません。
そもそも、私たちは戦争に反対なんです。
私には、魔人と人間が共存できるのかどうかわかりませんが、それでも、少なくとも、殺し合う必要はないと思っています。
殺し合ったところで何も解決できないと・・・
だから、あなた方の旅を妨げるつもりはありませんでした。
あなた方が村のそばを通り過ぎるまで、何もしないつもりだったのです」
でも・・・と彼は言葉を続けました。
でも、どうしても、私たちが連れて歩いている自動人形のことが気になったのだと。
壊れそうになっているドールのことが・・・
かなり故障しているので、修理できるかどうかわからないけれども、何とかして助けてあげたいと・・・。
だから、ちょっと強引なことをして、ドールをこの村の中に運んできたのだと。
もうすぐ修理は終わるはずだと。
「この後、どうするのかは、あなた方次第です。
さきほども言いましたが、私たちはあなた方の旅を妨げるつもりはありません」
両足が動かなくなり、ほとんど歩けなくなりました。
それは単に四肢を動かす機械の接続が悪くなっているだけではないようなのです。
体の内部にある魔力を制御するための装置に異常が発生しているようなのです。
きっと、私たちの体でいうのであれば、心臓や肺の機能に問題が起き始めているのでしょう。
彼女はとても辛そうなのです。
魔力の回路が途中で切れているだけなら、私の回復魔法で何とか戻してあげることができるのですが・・・
でも、彼女の体内で起き始めている故障はとても複雑で、そもそも自動人形がどういう仕組みで動いているのか理解できていない私には、治しようがないのです。
それでも、彼女は私たちの生活をいろいろと助けてくれて・・・
特に夜中の見張りはいつもやってくれて・・・
*
その日の晩も警戒は彼女に任せて、私たちは熟睡していました。
でも、その夜に恐ろしいことが起きたのです。
何かが大勢私たちに近づいてきました。
そして、メティスは私たちに危険を知らせる間もなく捉えられ・・・
それだけではありません。
私とルークも何かの薬で眠らされてしまい・・・
私が目が覚めると・・・もう昼でした。
そこは魔人の村でした。
きっと、私たちは魔人の村が近くにあることに気づかずに野宿をしていたのでしょう。
魔人たちの方が私たちの存在に先に気が付いた・・・そして、私たちをとらえたのです。
でも、なぜか魔人たちは私たちを殺そうとはしませんでした。
いえ、それどころか、目覚めた私は全く拘束されていないのです。
部屋の中のベッドの上に寝かせられていて・・・やわらかいベッドの上に・・・
ルークも近くにいました。
彼も眠っていました。そして、彼の体も拘束されていないのです。
しかも、私たちの荷物も、彼の足元に置いたままになっていて・・・私のそばには、魔法の杖も置いてあるし、彼のベッドの横には魔剣が立てかけてあるし・・・
どういうことなのでしょうか。
私たちは捉えられたわけではないのでしょうか。
魔人たちは私たちを恐れていないようです。
私たちが人間であることはもうわかっているはずなのに・・・
人間だから、こうやって薬で眠らされて無理やり連れてこられたのです・・・でも・・・。
確かに、強い魔人が人間の一人や二人を恐れる必要などないのかもしれません。
あるいは、彼らは私たちのことを敵だとは思っていないのかもしれません。
近くにメティスが・・・彼女もベッドの上に寝かせられていましたが・・・
たくさんの魔人たちが彼女の体を取り囲んでいて、何かをしているのです。彼らは、彼女の体に何かを・・・
私はすぐに理解しました。
魔人たちは、メティスを修理しようとしているのです。
壊れた部分の部品を交換したりして・・・
一人の魔人が私のところにやって来ました。
年老いた老人・・・
「目が覚めましたか? 気分はどうですか?」
それから、彼は私のためにお茶をいれてくれました。
彼は私にコップを差し出しながら、
「あなた方が人間だということはわかっていますよ・・・
だから、ちゃんと魔毒を抜いたお茶です・・・飲んでも大丈夫ですよ・・・」
私はコップを受け取りましたが、何となく怖くて、その液体を口にすることができませんでした。
彼は私に、
「でも、あなたは魔術師ですよね。
魔力が使えて・・・それに、魔毒に対する耐性もかなりありますよね・・・
別に魔毒を抜かなくてもよかったのでしょうか・・・」
それから、彼は私に、私たちを強引な方法でここへ連れてきたことについて謝りました。
彼は説明しました。
ここは魔人の村なのだと。
小さな村なのだと。
昔は大勢の魔人が住んでいたのだと。
でも、戦争のせいで、たくさん死んでしまったのだと。
今はもうわずかな村人が残っているだけなのだと。
「あなた方がこの村に近づいていることは、かなり前から把握していました・・・」
彼の話では、私たちがD地区を通り過ぎたころから、もうその存在に気がついていたようです。
「私たちは、あなた方の旅の目的を理解しているつもりです。
だから、それを妨げるつもりはありません。
そもそも、私たちは戦争に反対なんです。
私には、魔人と人間が共存できるのかどうかわかりませんが、それでも、少なくとも、殺し合う必要はないと思っています。
殺し合ったところで何も解決できないと・・・
だから、あなた方の旅を妨げるつもりはありませんでした。
あなた方が村のそばを通り過ぎるまで、何もしないつもりだったのです」
でも・・・と彼は言葉を続けました。
でも、どうしても、私たちが連れて歩いている自動人形のことが気になったのだと。
壊れそうになっているドールのことが・・・
かなり故障しているので、修理できるかどうかわからないけれども、何とかして助けてあげたいと・・・。
だから、ちょっと強引なことをして、ドールをこの村の中に運んできたのだと。
もうすぐ修理は終わるはずだと。
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