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第3章:魔人

殲滅(2)

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 私たちは、ビドラカの街に向かって歩いていました。
 まだ、かなりの距離があるようでした。
 
 メティスの体の調子はだんだん悪くなっていきました。
 特に足の調子が悪いようでした。
 歩くのが辛そうなのです。
 何か対策を考えなければならないのでしょう。

 *

 道のあちこちに、剣や槍や弓が落ちていました。
 おそらく戦いがあったのでしょう。
 人間と魔人の戦いが・・・

 竹のように中が空洞になった細長い筒・・・
 それは、魔力で小石を飛ばす道具らしいのです。
 魔力で作った小さな爆薬をつめて、その爆発する威力で、物を打ち出し相手を攻撃するための道具・・・
 それは初期の火縄銃のようなものでした。
 
 他にも見たこともないような武器がたくさん落ちていました。
 それらはどれも、魔力を有効に使うために作り出された道具のようでした。
 魔のエネルギーを普通の人間が利用するための道具・・・

 しばらく行くと、車輪のようなものが落ちていました。
 車輪が二つ・・・それはつながっていて・・・
 あれ? もしかして・・・
 私は急いで近づいてみました。
 すると、それはやはり・・・
「ああ、自転車だね」
 私は言いました。
 メティスにもそれが何かわかったようでした。
「珍しいですね。兵隊が使っていたのでしょうか」
 でも、ルークは初めて見るようでした。
「ジテンシャ?」

 私は乗ってみました。
 特に壊れてはいないのです。
 私は二人のまわりをぐるぐると走って見せました。
「ほら、ものすごく楽だよ・・・」

 メティスも乗ってみましたが、彼女は足が思うように動かないせいか、うまくペダルを漕ぐことができないようでした。
 でも、楽しそうに遊んでいました。

 次はルーク・・・
 彼も試してみました。
 しかし、下手なのです。うまくバランスをとることができないのです。
 すぐにこけてしまいました。
 戦士でも、初めて自転車に乗るのは難しいのでしょうか。
 まあ仕方ありません。

 しばらく彼は練習していました。
 私も後ろから押したりして、手伝ってあげました。
 でも、結局、彼は自転車を乗りこなすことができませんでした。
 なぜなのでしょうか。
 戦士のくせに、体のバランスをとるのが下手なのです・・・
 結局、ルークも私も疲れてしまい、もう諦めてしまいました。

 私たちがまた歩き始めようとした時、ルークが、
「じゃあ、二人乗りしよう・・・」

 彼の意見は意外でした。
 せっかく見つけた自転車をここに置いていくのはもったいないと。
 利用すべきだと。
 でも、一台しかないから、乗って漕げるのは一人だけ・・・だから、二人乗りをするしかないのだと。

 私に自転車を漕がせて、自分は後ろに乗るというのです。
 いえ、メティスもいるので、後ろに二人乗るつもりなのです。
 つまり、二人乗りではなく、三人乗りなのです。

 日本のおまわりさんに見つかったら叱られますよ。
 まあ、いないからいいんでしょうけど・・・

 確かに、歩くよりは楽かもしれません。・・・ん? 本当かな?・・・だって、自転車を漕ぐのは私だけなんでしょう・・・私だけが、しんどいんじゃないの?・・・え?・・・
 でも、メティスもルークの意見に賛成のようなのです。
 三人中二人が賛成しているということは、もはや、多数決において勝利しているのです。
 私が何と言おうとも、彼らは多数派なのです。
 仕方ありません。
 とにかく、その三人乗りを試してみることにしました。

 でも、後ろに乗るのはルークとメティスだけではなく、ルークの荷物もあるんです。まあ、それは私たちの荷物なんですけど・・・
 だから、ものすごく重いんです。
 しかも、後ろに乗ったルークは私の体を背中からしっかりと抱き抱えて・・・
「さあ、行きましょう・・・」
 ルークの嬉しそうな声・・・
 でも、ルークの手は間違いなく、後ろから私の胸を・・・

 私は全てを諦めました。
 例え私が少数派だとしても、私は受け入れません。

 自転車の荷台に荷物とメティスを乗せて、ルークが押していくことになりました。
 私はいつも通り、魔法の杖だけを持って歩いていくことに・・・
 これでいいんです。

 確かに、歩きづらそうなメティスは、自転車に乗せてもらって楽そうでした。
 でも、私は何となく悲しい気分になりました。
 メティスの体の調子がだんだん悪くなっていくのが心配だったのです。
 何とかできないのでしょうか。
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