転生したら魔力ゼロの魔術師に・ロリ系美少女の愛の大冒険旅

第３章：魔人

ドール（機械人形）との出会い（２）

　誰かが歩いてきました。
　見張りでしょうか。
　ここにいる道具としての人間が逃げ出さないように見張っているのでしょうか。
　こんなにきつく拘束され、機械の中にがっちりと嵌め込まれているのに、逃げることなどできるはずがありません。
　それに、ここに囚われている人間には、もう力がないのです。
　全てのエネルギーを吸い取られてしまい、きっと、もし機械から解放されても、逃げることはおろか、歩くことも、いや立ち上がることすらできないでしょう。
　
　何のための見張りなのでしょうか。
　一体何を見張っているのでしょうか。

　いえ、見張りではないようでした。
　機械を一台一台見ながら何かをしています。
　状態を確認しているのでしょうか。何かを調整しているのでしょうか。
　機械の点検をしているのかもしれません。
　技術者・・・あるいは機械の管理者・・・

　私の方に近づいてきました。
　私はそれを見てびっくりしました。
　それは人間ではないのです。
　私は自分の目の前に来るまで気が付きませんでした。それが人間ではないことに・・・

　もちろん、人間の形をしています。
　手足があり、頭があり、顔があり、目や鼻があり・・・
　つまり人間そっくりなのです。でも、人間ではないのです。
　それは人形なのです。
　動く人形。一種の自動機械。

　転生する前の世界では、ロボットだとかアンドロイドだとか言われていたものでした。
　その人形は女性でした。
　だから、女性型アンドロイドというべきなのでしょうか。

　一瞬私は頭がおかしくなりそうでした。
　基本的に、この世界は転生する前の世界よりも時代が遅れていると思っていたのです。
　でも、ロボットだのアンドロイドだのという、未来のものが現れたので、私には理解できなくなりました。

　そもそもこの場所自体が異常なのです。
　このような自動で人間の魔力を吸い出す機械自体が、この世界のものとは思えないのです。
　帆船などという風の力で動く船を建造するのがやっとの人間たちに・・・石やレンガでしか建物が作れないような人間たちに・・・このような高度な機械を作れるわけがありません。
　どう考えてもおかしいのです。
　しかも、転生前の世界ですら、まだ実現できていないようなアンドロイドが、この世界にあるはずがありません。

　でも、それは、アンドロイドなのです。間違いなく・・・
　人間と同じ形をしていて、人間と同じように動く機械なのです。
　どうやって動いているのでしょうか。
　とても複雑な機械のようでした。
　しかし、一つわかったことがあります。
　その人形が動く原理・・・人形を動かしているもの・・・それは魔力なのです。
　つまり、魔力で動く人形なのです。

　私はその人形の中に魔力の流れを感じることができました。
　しかし、その人形内部の魔力の動きは、恐ろしいほど複雑なのです。
　それはまるで一種の電子回路のようなもの・・・あるいは、人間の神経や血管に似たものというべきかもしれません。
　おそらく、その魔力の流れによって、情報の解析や機械の制御を行っているのです。
　つまり、ただ手足を動かすというような運動の原動力として魔力を利用しているだけではなく、状態の把握や記憶、分析といった処理システムとして魔のエネルギーを利用しているのです。
　もし、非常に単純に表現するのであれば、電気の代わりに魔力を利用したコンピューターシステムなのです。

　何と言う恐ろしい技術なのでしょう。

　私はそういったことをどこかの書物で読んだことを思い出しました。
　確か、クルドークにいた頃に図書館で読んだ本の中にも書いてあったのです。
　それはこの世界ではドールと呼ばれるものでした。
　しかし、その書物の中では、ドールと呼ばれる機械人形は、伝説上の神話の中での存在でしかなかったのです。
　それが実在するという記述はなかったのです。
　でも、そのドールが今、目の前にいます。
　そして、動いているのです。

　この施設の中には、こういうドールがたくさんいるのでしょうか。
　それとも、この一体だけなのでしょうか。
　わかりません。

　ドールは私の近くまでやってきました。
　そして、私が嵌め込まれている装置を点検しているようでした。
　それから、しばらく私をじっと見ていました。

　その表面は人間の皮膚でもなく、だからと言って金属でもありませんでした。
　むしろプラスチックのような質感なのです。
　この世界にもそんな化学物質を合成する技術があるのでしょうか。

　それには眼球があり、その眼球は人間の目と全く同じように動き、そして、私を見ているのです。
　そして、驚くべきことに、それは口を開けて私に言ったのです。
「こんにちは」