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第3章:魔人
魔人と人間の戦争(1)
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私とルークは商人に変装して、イジリア大陸に向かう船に乗りました。
イジリア大陸は戦争中なので、大陸間を航行しているのは軍の船ばかりでした。
だから、乗船している人間も、軍の人間か、軍の物資を取引している商人ばかりなのです。
多くの兵隊がまるで荷物のように船倉に詰め込まれていました。
それに比べれば、商人として乗り込んだ私たちは、まだ人間扱いされていたのかもしれません。
小さくて汚いながらも、客室らしきものがあり・・・そこで私たち二人は寝泊まりして・・・
しかし、私には船に乗っている間の記憶がほとんどありません。
それは私にとってはあまりにも恐怖の時間だったからです。
恐怖・・・あるいは地獄・・・少なくとも私にとっては・・・
信じられないほどの激しい船酔い・・・
私はもう自分が誰なのかもわからないような状態で、吐き続けていました。
優しく背中をさすってくれているルークが、ときどき私の胸に触っているのに気がついても、もう文句を言う元気もないぐらい・・・(もちろん、元気になってから、ちょっとだけ怒ったけど・・・)
*
私たちは、クティカや教会の親切な人たちとお別れして、すぐにクルドークの港に向かいました。
急いでいたのは、その日の深夜に乗る船に乗ろうとしていたからです。
それも、教会の僧侶が手配してくれたものでした。
港についた時にはもう夜中でした。
夜の海を見渡すと、ちょううど水平線のあたりにイジリア大陸の街の光らしきものが見えました。
しかし、戦争中の街ですから・・・それは家の明かりや街灯などではなく、建物か山が燃えている炎の光だったのでしょう・・・
いずれにしても、微かにでも光が見えるのですから、思ったよりも近いと思ったのです。
それなのに、大陸に着くまで、六日かかると言われました。
それにはいろいろな事情があったようです。
二つの大陸の間には複雑な海流が流れていることや、戦争中に敵の攻撃を避けながら航行しなければならないことなど・・・
いずれにしても、私たちは、六日間も船の中にいたのです。
その小さくて汚い客室の中に閉じ込められていたのです。六日間も・・・
最悪です。
何しろ、船と言っても木造の帆船。
もう信じられないほどはげしく揺れるのです。上下左右に・・・
私は転生前の人生の中でも、船らしき船に乗ったことがありません。
海外に行ったことは何度かありましたが、もちろん飛行機です。
叔父と一緒に車でフェリーに乗ったことはありましたが・・・最新のフェリーなんて、海の上にいるのかどうかわからなくなるぐらい、安定していて揺れません・・・
それ以外であれば、子供の頃に、上野恩賜公園の池でボートに乗ったことがあるくらいなのです。・・・それも、本当は何も覚えていないぐらいの幼児期の話で・・・
そういうわけで私は本物の船を知らないのです。
海の波の上を揺れながら進んでいく船なるものを全く知らない人間・・・そんな私がいきなり、あちこち板がはずれかかっているようなボロボロの木の船に一週間近くも乗っていたのです。
完全に船酔いです。
私は一日のほとんどの時間を甲板に出て、海を見下ろしていました。
いつでも、吐き出せるように・・・
食べたものは一度は胃の中に入るのですが、そこから腸の方へ向かおうとしてくれないのです。
私の体内に入った食物は、ちょっと胃の内側を覗き込む程度で、すぐに諦めて、食道へと逆戻りしてくるのです。
どうして? ・・・どうして、そんなに反抗的な態度をとるの?
そして、それらは重力の法則なんかいとも簡単に無視して、下から上へ下から上へと移動し、再び喉に戻ってくるのです。そして、喉から・・・
仕方がありません。
私は大きく口を開き、全てを海へと・・・
私はあることに気が付きました。
それは大変重大なことです。
なぜ今まで気が付かなかったんだろうと、自分のうかつさを反省してもしきれないほどの・・・
つまり、船酔いには治癒魔法が効かないのです。
船酔いというのは、別に体の臓器が傷ついているわけではありません。
あるいは、体の一部が病気で機能不全を起こしているわけでもないのです。
つまり、これは怪我や病気ではないのです。
単なる体の状態なのです。
今日はたくさん残業したから疲れた・・・とか、彼にふられたから今日は食欲がない・・・というような、一種の肉体の状態なのです。
だから、治癒の対象ではないのです。
船酔いとは、怪我でも病気でもなく、それゆえに治癒魔法で治るものではない・・・なるほど・・・私は初めて知りました。
治癒魔法が効かないということは、魔術師としての私には抗う術がないということなのです。
絶望。
私は船酔いで完全に重病人の状態なのに、ルークは平然としていました。
この程度の船の揺れには慣れているようなのです。さすが戦士・・・
彼は私を介抱してくれました。
気分が悪くなった私の体を抱き抱え、甲板へと上がり・・・
そして、しばらくすると、疲れ果てて船室へと下りていく私を助けるという行為を一日に何度も何度も・・・
時折、優しく私の体を抱えながら、彼が私のお腹や腰を必要以上に触っているような・・・ついには胸を触っているような・・・そんな気がしたのですが、でももうそれを気にしていられる状況ではないのです。
私は私の体内にあるものを海の波に向かって吐かなければならないのですから・・・
私は肉体も精神も疲弊してしまい・・・もはや、ルークに向かって「ヘンタイ」という一言を発する力もなく・・・
おそらく、エッチなことで頭がいっぱいのルーク君にとっては悦楽の時間だったのでしょう・・・まあ、それならそれでいいんですけど・・・
かろうじて客室に戻った二人は、狭い部屋の床の上に座り込んで・・・
まるで死を目前にした病人のような顔色をしている私に、ルークは言いました。
「ソフィアさんって、空を飛べるんじゃないんですか?
こんな船に乗らなくても・・・だって、ドラゴンから空を浮遊できる魔法をもらったんですよね・・・」
「うん、空に浮かぶことはできるよ。・・・ちょっと吐きそうだけど」
「え、またですか? さっき全部吐いたでしょう・・・
でも、その空に浮かぶ魔法で・・・その魔法を使って、大陸まで空を飛んで行けばいいんじゃないんですか・・・
こんなオンボロ船に乗らなくても・・・」
ルークは不思議そうな声で・・・
「・・・もしかして、俺がいるから?・・・俺とか荷物とかが重すぎて飛べないんですか?」
ルークの質問の意味はわかります。・・・
でも、吐きそうなんです。
どうしてなんでしょう。・・・もう胃の中に何も残っていないとわかっていても、吐きそうなんです。いえ、なぜか吐きたいんです。
吐くものがなくても吐きたくなる・・・もう、これは一種の呪いのようなものですね・・・船の呪い・・・
「・・・あのね・・・やっぱり吐きそうだけど・・・
・・・あの魔術はね、浮かび上がることはできても、飛べないの・・・だから、移動できないの・・・
・・・上空に上がるだけなの・・・上下にしか動けないの・・・」
「意外に役に立たない魔法ですね」
「ルーク・・・腹立つね・・・でも、今は何を言ってもいいよ・・・それに、ちょっとくらい胸に触ってもいいから・・・だから、また甲板に連れて行って・・・やっぱり吐きそう・・・」
イジリア大陸は戦争中なので、大陸間を航行しているのは軍の船ばかりでした。
だから、乗船している人間も、軍の人間か、軍の物資を取引している商人ばかりなのです。
多くの兵隊がまるで荷物のように船倉に詰め込まれていました。
それに比べれば、商人として乗り込んだ私たちは、まだ人間扱いされていたのかもしれません。
小さくて汚いながらも、客室らしきものがあり・・・そこで私たち二人は寝泊まりして・・・
しかし、私には船に乗っている間の記憶がほとんどありません。
それは私にとってはあまりにも恐怖の時間だったからです。
恐怖・・・あるいは地獄・・・少なくとも私にとっては・・・
信じられないほどの激しい船酔い・・・
私はもう自分が誰なのかもわからないような状態で、吐き続けていました。
優しく背中をさすってくれているルークが、ときどき私の胸に触っているのに気がついても、もう文句を言う元気もないぐらい・・・(もちろん、元気になってから、ちょっとだけ怒ったけど・・・)
*
私たちは、クティカや教会の親切な人たちとお別れして、すぐにクルドークの港に向かいました。
急いでいたのは、その日の深夜に乗る船に乗ろうとしていたからです。
それも、教会の僧侶が手配してくれたものでした。
港についた時にはもう夜中でした。
夜の海を見渡すと、ちょううど水平線のあたりにイジリア大陸の街の光らしきものが見えました。
しかし、戦争中の街ですから・・・それは家の明かりや街灯などではなく、建物か山が燃えている炎の光だったのでしょう・・・
いずれにしても、微かにでも光が見えるのですから、思ったよりも近いと思ったのです。
それなのに、大陸に着くまで、六日かかると言われました。
それにはいろいろな事情があったようです。
二つの大陸の間には複雑な海流が流れていることや、戦争中に敵の攻撃を避けながら航行しなければならないことなど・・・
いずれにしても、私たちは、六日間も船の中にいたのです。
その小さくて汚い客室の中に閉じ込められていたのです。六日間も・・・
最悪です。
何しろ、船と言っても木造の帆船。
もう信じられないほどはげしく揺れるのです。上下左右に・・・
私は転生前の人生の中でも、船らしき船に乗ったことがありません。
海外に行ったことは何度かありましたが、もちろん飛行機です。
叔父と一緒に車でフェリーに乗ったことはありましたが・・・最新のフェリーなんて、海の上にいるのかどうかわからなくなるぐらい、安定していて揺れません・・・
それ以外であれば、子供の頃に、上野恩賜公園の池でボートに乗ったことがあるくらいなのです。・・・それも、本当は何も覚えていないぐらいの幼児期の話で・・・
そういうわけで私は本物の船を知らないのです。
海の波の上を揺れながら進んでいく船なるものを全く知らない人間・・・そんな私がいきなり、あちこち板がはずれかかっているようなボロボロの木の船に一週間近くも乗っていたのです。
完全に船酔いです。
私は一日のほとんどの時間を甲板に出て、海を見下ろしていました。
いつでも、吐き出せるように・・・
食べたものは一度は胃の中に入るのですが、そこから腸の方へ向かおうとしてくれないのです。
私の体内に入った食物は、ちょっと胃の内側を覗き込む程度で、すぐに諦めて、食道へと逆戻りしてくるのです。
どうして? ・・・どうして、そんなに反抗的な態度をとるの?
そして、それらは重力の法則なんかいとも簡単に無視して、下から上へ下から上へと移動し、再び喉に戻ってくるのです。そして、喉から・・・
仕方がありません。
私は大きく口を開き、全てを海へと・・・
私はあることに気が付きました。
それは大変重大なことです。
なぜ今まで気が付かなかったんだろうと、自分のうかつさを反省してもしきれないほどの・・・
つまり、船酔いには治癒魔法が効かないのです。
船酔いというのは、別に体の臓器が傷ついているわけではありません。
あるいは、体の一部が病気で機能不全を起こしているわけでもないのです。
つまり、これは怪我や病気ではないのです。
単なる体の状態なのです。
今日はたくさん残業したから疲れた・・・とか、彼にふられたから今日は食欲がない・・・というような、一種の肉体の状態なのです。
だから、治癒の対象ではないのです。
船酔いとは、怪我でも病気でもなく、それゆえに治癒魔法で治るものではない・・・なるほど・・・私は初めて知りました。
治癒魔法が効かないということは、魔術師としての私には抗う術がないということなのです。
絶望。
私は船酔いで完全に重病人の状態なのに、ルークは平然としていました。
この程度の船の揺れには慣れているようなのです。さすが戦士・・・
彼は私を介抱してくれました。
気分が悪くなった私の体を抱き抱え、甲板へと上がり・・・
そして、しばらくすると、疲れ果てて船室へと下りていく私を助けるという行為を一日に何度も何度も・・・
時折、優しく私の体を抱えながら、彼が私のお腹や腰を必要以上に触っているような・・・ついには胸を触っているような・・・そんな気がしたのですが、でももうそれを気にしていられる状況ではないのです。
私は私の体内にあるものを海の波に向かって吐かなければならないのですから・・・
私は肉体も精神も疲弊してしまい・・・もはや、ルークに向かって「ヘンタイ」という一言を発する力もなく・・・
おそらく、エッチなことで頭がいっぱいのルーク君にとっては悦楽の時間だったのでしょう・・・まあ、それならそれでいいんですけど・・・
かろうじて客室に戻った二人は、狭い部屋の床の上に座り込んで・・・
まるで死を目前にした病人のような顔色をしている私に、ルークは言いました。
「ソフィアさんって、空を飛べるんじゃないんですか?
こんな船に乗らなくても・・・だって、ドラゴンから空を浮遊できる魔法をもらったんですよね・・・」
「うん、空に浮かぶことはできるよ。・・・ちょっと吐きそうだけど」
「え、またですか? さっき全部吐いたでしょう・・・
でも、その空に浮かぶ魔法で・・・その魔法を使って、大陸まで空を飛んで行けばいいんじゃないんですか・・・
こんなオンボロ船に乗らなくても・・・」
ルークは不思議そうな声で・・・
「・・・もしかして、俺がいるから?・・・俺とか荷物とかが重すぎて飛べないんですか?」
ルークの質問の意味はわかります。・・・
でも、吐きそうなんです。
どうしてなんでしょう。・・・もう胃の中に何も残っていないとわかっていても、吐きそうなんです。いえ、なぜか吐きたいんです。
吐くものがなくても吐きたくなる・・・もう、これは一種の呪いのようなものですね・・・船の呪い・・・
「・・・あのね・・・やっぱり吐きそうだけど・・・
・・・あの魔術はね、浮かび上がることはできても、飛べないの・・・だから、移動できないの・・・
・・・上空に上がるだけなの・・・上下にしか動けないの・・・」
「意外に役に立たない魔法ですね」
「ルーク・・・腹立つね・・・でも、今は何を言ってもいいよ・・・それに、ちょっとくらい胸に触ってもいいから・・・だから、また甲板に連れて行って・・・やっぱり吐きそう・・・」
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