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第2章:魔道
人殺しの魔人(1)
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私たちは、ゾルドという王国を出ると、クルドーク王国第二の都市テリクという街にしばらくの間留まっていました。
そこは技術や工業の発達した場所で、立派な学校や図書館もありました。
私はしばらくの間、その図書館で魔術や魔界について勉強していました。
ところが、私たちが泊まっていた一番安い宿が、実は魔力に支配されていたのです。
そこで働いていたクティカという少女を救い出し、今はもうちょっと立派な宿に泊まっています。
この宿は大丈夫そうです。
魔物はいないようです。
この街には大勢の人間が住んでいます。
でも、その中には魔人が紛れ込んでいるので気をつけなければなりません。
いずれにしても、今まで、ルークと二人きりで旅をしてきたのに、突然クティカという少女と一緒に三人での生活を始めました。
これからは三人で互いを守り合いながら生活していかなければなりません。
そのためには、いろいろな問題がありました。
一番心配なのは、魔人とか魔力とかではなく、ルークでした。
つまり変態ルークが少女クティカを襲うのではないかという心配・・・
ルークがクティカの体を見つめる目は、美しい乙女を見つめる純粋な青年の視線などではなく、完全に大人の目つきなのです。アダルトな視線・・・
これは、まずいです。
もはや、変態的というよりも、ほとんど犯罪的な雰囲気を醸し出しています。
非常に危険です。
クティカは長い間、魔物に肉体を支配されていたため、もはや魔力なしでは生きていけなくなっています。
だから、毎日、私は彼女を抱きしめ、彼女に魔力を分け与えているのです。
幸いなことに、私の体内の魔力の量は思ったよりも増えているようです。
この変化は、ドラゴンを助けた時からなのです。
ドラゴンは私との別れ際に、大量の魔力と、いくつかの魔法を授けてくれました。
その時にもらった魔力は、その後の戦いで消費してしまったものの、私自身の体質が少し変わったようで、魔力を作りやすくなったのです。
そのおかげで、私はかなりたくさんの魔力を生成することができるようになり、クティカに毎日十分な魔力を与えることもできているのです。
私がクティカの体を抱きしめ、彼女に魔力を与えていると・・・それをルークが見ているのです。
ルークは、私が彼女に魔力を与えている姿をいつも、うらやましそうな表情で見ているのです。
嫌な予感。
そして、ついに彼は言い始めました。
「俺も、ソフィアさんの魔力が欲しいな・・・」
「?」
意味がわかりません。
彼は魔人でもなく魔術師でもありません。
彼に魔力を与えても、何の役にも立ちません。
それなのに、私の魔力を欲しがるのです。
彼は魔力と母乳か何かとを勘違いしているのです。
彼は魔力がほしいのではなく、私の体から何かを吸い出すという行為に興味があるのです。
もう間違いなく変態的な発想なのです。
いえ、完全な変態です。
私が彼の言葉を無視していると、今度はクティカをじっと眺めているのです。
もう彼が考えていることを想像しただけで、・・・
しかも、しばらくして、彼は私に言ったのです。
「胸が大きくなる魔法ってありますか? クティカの胸が大きくなれば・・・」
私は思い切り、彼の顔を叩きました。
でも、彼はきょとんとしていて、なぜ叩かれたのかわからないというような、不思議そうな表情で私を見ているのです。
狂人の最も恐ろしい点は、自らの狂気に気がついていないことでしょう。
そういう意味でルークは恐ろしい・・・
*
クティカと一緒に暮らすようになってから、私たちの生活は混乱を極めています・・・
今までは自分一人を守っていればよかったのに、これからはクティカも守らなければなりません。何しろ、恐ろしい敵が目の前にいるのです。変態という敵が・・・
しかし、クティカを助けようと言い出したのは私なのです。
そして、クティカの面倒を責任をもって見ると言い切ったのも私なのです。
だから、私は決して文句を言える立場ではありません・・・
それに、クティカのおかげで助かっていることもあります。
彼女が街のことを詳しく教えてくれるのです。
私たちは今、クティカと一緒にこの街について調べているのです。
それも、私たちがこんな危険な街に長く留まっている理由の一つなのです。
私は今まで、目の前にいる魔物と戦うだけで精一杯でした。
いや、襲ってくる魔物から自分の身を守ることしかできていませんでした。
戦っていたのはほとんどルークなのです。
ルークの魔剣で相手を倒してきたのです。
でも、これから私たちは、もっと強い魔物がたくさんいる場所へ、自ら攻め入ろうとしているのです。
だから、ここで魔界や魔術について、十分に理解しておく必要があるのです。
そして、今後の戦い方について戦術や戦略をねっておく必要があるのです。
そのためには、この街のことを知っておくことがとても重要だと考えています。
なぜなら、この街は、一見人間の街のようですが・・・実は魔力に支配されているからです。
この街を調べれば、魔界や魔物に関する真実を知ることができるはず・・・。
私たちはよく三人で街の中を散歩しました。
街を調べようとしたのには、魔物の件以外に、もう一つ理由がありました。
それは行方不明になっているクティカのお母さんを探すことでした。
彼女は数ヶ月前に突然姿を消し・・・
クティカには、母親に何が起きたのか、どこへ行ったのか全くわからないようでした。
突然魔物たちが襲ってきて、彼女を連れ去って行ったのだと。
でも、この街のどこかにいるとクティカは考えているようでした。
だから、街を歩き回っていれば、何かの手がかりが得られるかも・・・
街の中には、建築中の建物がたくさんありました。
多くの人間が、石や土などの建築資材を運んだり、木でやぐらを組み立てたりしていました。
そういう力仕事をしている労働者のほとんどが奴隷でした。
しかも女性の奴隷・・・
彼女たちは、近隣の諸国から安く売られてきた人間たち・・・でも、彼女らは普通の人間ではありませんでした。
その奴隷たちには魔力があるのです。
魔物ほど強くはありませんが、明らかに魔力を持っていて、それを使いながら働いているのです。
クティカの話では、そういう人はこの街にたくさんいるのだと。
彼女たちの体には、魔物の臓器の一部が埋め込まれているのだと。
だから、しばらくの間は魔力を作り出すことができ、普通の人間よりも力が強く、長時間働けるのだと。
でも、それは一時的な効果で、体内の魔物の臓器が腐ってしまうと、また新しいものに取り替えなければならないのだと。
もしかすると、彼女の母親も、そういう奴隷として働かされているのかもしれません。
しかし、彼女の母親を連れ去ったのは魔物・・・魔人・・・つまり人間ではなかったとクティカは言いました。
奴隷を売買しているのは人間なのです。
だから、彼女の母親が連れて行かれた場所は違うのかもしれません。
しかし、人間が魔力を利用して女性の奴隷に労働をさせているというのは、とても恐ろしい話でした。
人々が人間や魔物の体を道具として利用し始めているのです。
私は、この街の人たちの思考に強い矛盾を感じていました。
つまり、一方では、魔物を敵視し、魔界の生物と戦い、国から追い出そうとしておきながら、もう一方では、魔力を利用し、人間を改造し、社会に利用し、金儲けの道具にしようとしているのです。
やっていることが矛盾しているのです。
私は、建築現場で重い荷物を運んでいる、若い女性たちの姿をじっと見ていました。
そこは技術や工業の発達した場所で、立派な学校や図書館もありました。
私はしばらくの間、その図書館で魔術や魔界について勉強していました。
ところが、私たちが泊まっていた一番安い宿が、実は魔力に支配されていたのです。
そこで働いていたクティカという少女を救い出し、今はもうちょっと立派な宿に泊まっています。
この宿は大丈夫そうです。
魔物はいないようです。
この街には大勢の人間が住んでいます。
でも、その中には魔人が紛れ込んでいるので気をつけなければなりません。
いずれにしても、今まで、ルークと二人きりで旅をしてきたのに、突然クティカという少女と一緒に三人での生活を始めました。
これからは三人で互いを守り合いながら生活していかなければなりません。
そのためには、いろいろな問題がありました。
一番心配なのは、魔人とか魔力とかではなく、ルークでした。
つまり変態ルークが少女クティカを襲うのではないかという心配・・・
ルークがクティカの体を見つめる目は、美しい乙女を見つめる純粋な青年の視線などではなく、完全に大人の目つきなのです。アダルトな視線・・・
これは、まずいです。
もはや、変態的というよりも、ほとんど犯罪的な雰囲気を醸し出しています。
非常に危険です。
クティカは長い間、魔物に肉体を支配されていたため、もはや魔力なしでは生きていけなくなっています。
だから、毎日、私は彼女を抱きしめ、彼女に魔力を分け与えているのです。
幸いなことに、私の体内の魔力の量は思ったよりも増えているようです。
この変化は、ドラゴンを助けた時からなのです。
ドラゴンは私との別れ際に、大量の魔力と、いくつかの魔法を授けてくれました。
その時にもらった魔力は、その後の戦いで消費してしまったものの、私自身の体質が少し変わったようで、魔力を作りやすくなったのです。
そのおかげで、私はかなりたくさんの魔力を生成することができるようになり、クティカに毎日十分な魔力を与えることもできているのです。
私がクティカの体を抱きしめ、彼女に魔力を与えていると・・・それをルークが見ているのです。
ルークは、私が彼女に魔力を与えている姿をいつも、うらやましそうな表情で見ているのです。
嫌な予感。
そして、ついに彼は言い始めました。
「俺も、ソフィアさんの魔力が欲しいな・・・」
「?」
意味がわかりません。
彼は魔人でもなく魔術師でもありません。
彼に魔力を与えても、何の役にも立ちません。
それなのに、私の魔力を欲しがるのです。
彼は魔力と母乳か何かとを勘違いしているのです。
彼は魔力がほしいのではなく、私の体から何かを吸い出すという行為に興味があるのです。
もう間違いなく変態的な発想なのです。
いえ、完全な変態です。
私が彼の言葉を無視していると、今度はクティカをじっと眺めているのです。
もう彼が考えていることを想像しただけで、・・・
しかも、しばらくして、彼は私に言ったのです。
「胸が大きくなる魔法ってありますか? クティカの胸が大きくなれば・・・」
私は思い切り、彼の顔を叩きました。
でも、彼はきょとんとしていて、なぜ叩かれたのかわからないというような、不思議そうな表情で私を見ているのです。
狂人の最も恐ろしい点は、自らの狂気に気がついていないことでしょう。
そういう意味でルークは恐ろしい・・・
*
クティカと一緒に暮らすようになってから、私たちの生活は混乱を極めています・・・
今までは自分一人を守っていればよかったのに、これからはクティカも守らなければなりません。何しろ、恐ろしい敵が目の前にいるのです。変態という敵が・・・
しかし、クティカを助けようと言い出したのは私なのです。
そして、クティカの面倒を責任をもって見ると言い切ったのも私なのです。
だから、私は決して文句を言える立場ではありません・・・
それに、クティカのおかげで助かっていることもあります。
彼女が街のことを詳しく教えてくれるのです。
私たちは今、クティカと一緒にこの街について調べているのです。
それも、私たちがこんな危険な街に長く留まっている理由の一つなのです。
私は今まで、目の前にいる魔物と戦うだけで精一杯でした。
いや、襲ってくる魔物から自分の身を守ることしかできていませんでした。
戦っていたのはほとんどルークなのです。
ルークの魔剣で相手を倒してきたのです。
でも、これから私たちは、もっと強い魔物がたくさんいる場所へ、自ら攻め入ろうとしているのです。
だから、ここで魔界や魔術について、十分に理解しておく必要があるのです。
そして、今後の戦い方について戦術や戦略をねっておく必要があるのです。
そのためには、この街のことを知っておくことがとても重要だと考えています。
なぜなら、この街は、一見人間の街のようですが・・・実は魔力に支配されているからです。
この街を調べれば、魔界や魔物に関する真実を知ることができるはず・・・。
私たちはよく三人で街の中を散歩しました。
街を調べようとしたのには、魔物の件以外に、もう一つ理由がありました。
それは行方不明になっているクティカのお母さんを探すことでした。
彼女は数ヶ月前に突然姿を消し・・・
クティカには、母親に何が起きたのか、どこへ行ったのか全くわからないようでした。
突然魔物たちが襲ってきて、彼女を連れ去って行ったのだと。
でも、この街のどこかにいるとクティカは考えているようでした。
だから、街を歩き回っていれば、何かの手がかりが得られるかも・・・
街の中には、建築中の建物がたくさんありました。
多くの人間が、石や土などの建築資材を運んだり、木でやぐらを組み立てたりしていました。
そういう力仕事をしている労働者のほとんどが奴隷でした。
しかも女性の奴隷・・・
彼女たちは、近隣の諸国から安く売られてきた人間たち・・・でも、彼女らは普通の人間ではありませんでした。
その奴隷たちには魔力があるのです。
魔物ほど強くはありませんが、明らかに魔力を持っていて、それを使いながら働いているのです。
クティカの話では、そういう人はこの街にたくさんいるのだと。
彼女たちの体には、魔物の臓器の一部が埋め込まれているのだと。
だから、しばらくの間は魔力を作り出すことができ、普通の人間よりも力が強く、長時間働けるのだと。
でも、それは一時的な効果で、体内の魔物の臓器が腐ってしまうと、また新しいものに取り替えなければならないのだと。
もしかすると、彼女の母親も、そういう奴隷として働かされているのかもしれません。
しかし、彼女の母親を連れ去ったのは魔物・・・魔人・・・つまり人間ではなかったとクティカは言いました。
奴隷を売買しているのは人間なのです。
だから、彼女の母親が連れて行かれた場所は違うのかもしれません。
しかし、人間が魔力を利用して女性の奴隷に労働をさせているというのは、とても恐ろしい話でした。
人々が人間や魔物の体を道具として利用し始めているのです。
私は、この街の人たちの思考に強い矛盾を感じていました。
つまり、一方では、魔物を敵視し、魔界の生物と戦い、国から追い出そうとしておきながら、もう一方では、魔力を利用し、人間を改造し、社会に利用し、金儲けの道具にしようとしているのです。
やっていることが矛盾しているのです。
私は、建築現場で重い荷物を運んでいる、若い女性たちの姿をじっと見ていました。
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