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第2章:魔道

魔界へつながる道(5)

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 ルークが部屋の奥の方を指差しました。
 暗い穴・・・魔界とつながる空洞・・・魔界と人間界をつなぐ道・・・ここには魔道があったのです。
 この宿の中には、魔界との出入り口があったのです。
 きっとそこから魔力が流れ込み、魔の植物の種子が飛んできてこの建物を冒し、そして魔物たちがやってきてクティカの体を・・・

 しかし、彼女は生きています。
 魔物に体を食べられながらも生きているのです。
 彼女には自らの体を再生させる能力があるのです。
 彼女は再生魔法を使っているのです。

 彼女は魔術師なのでしょうか。
 いえ、違います。きっと彼女は魔物たちによって魔力を与えられているのです。
 魔物たちは、永遠に彼女を食べ続けるために、彼女に魔力を与え、彼女の肉体を治癒させているのです。
 その証拠に、彼女が失った体の部位はすぐに再生し、再び彼女は完全な体に戻っていくのです。
 そうすることで、魔物たちは何度も何度も彼女の体を・・・それは終わることのない・・・

 ルークはクティカの体に絡みついている魔物を斬り付けました。
 魔物たちは彼の魔剣に驚き、苦しみながら・・・でも、決して逃げようとしないのです。
 ルークの魔剣で何度も斬られ、激しい痛みにもがきながらも、魔物たちは彼女の体に食らえつこうとするのです。
 彼女の血を吸い、肉を食らおうとするのです。
 彼らは剣で斬られた痛みに耐えながらも、彼女の体を離そうとはせず・・・
 いえ、それだけではありません・・・魔物たちは、魔剣で手足を切り落とされても、内臓を貫かれても、必死でクティカの体にしがみつき、彼女の血や肉を・・・
 それは恐ろしい光景でした。
 彼らの欲求は、身体の苦痛や肉体の喪失という現実よりもはるかに強いのです。
 
 私は思いました。
 彼の魔剣の呪いを解くしかないと・・・魔剣で魔物を斬り殺すしかないと・・・痛みを与えた程度では、この状況は解決しないと・・・
 でも、彼は必死でした。
 何度でも剣を振り上げ、斬りつけ・・・やがて、魔物たちも魔界へと逃げて行きました。
 私は二度と彼らが入ってこないように、魔道を封印しました。

 しかし、クティカの体は食い荒らされ・・・しかも、魔物が逃げ去ったことで、彼女の体から治癒力が消え去り・・・魔力で支配されていた意識が正気に戻り・・・彼女は激しい苦痛を認識し、叫び声をあげ、もがき苦しみ・・・
 私は治癒魔法で彼女の体を助けようと・・・でも、間に合わないのです・・・あまりにも、彼女の体の傷が深いので・・・
 彼女は泣き叫び、悲鳴をあげ・・・

 その時、ルークは私に言ったのです。
「魔剣の呪いを・・・」
 私には彼が何をしようとしているのか理解できました。
 ルークは彼女を斬ろうとしているのです。彼はその剣で彼女の命を・・・
 彼は言いました。
「仕方がないのです。それ以外に手段がないのですから・・・」

 確かに、クティカはもはや人間ではないのです。
 魔力に支配され、すでに魔物になってしまったのです。
 たとえ、長い時間苦しみ続けて、肉体が再生したとしても・・・体が元に戻ったとしても・・・もはや、人間ではないのです。
 それは魔の力に支配された生き物・・・
 いや、違います。彼女は魔物でもないのです。
 彼女は人間でもなく、魔物でもない存在になってしまったのです。
 だから、もはや魔力なしではこの世で生きることもできず、だからといって、魔界に行くこともできない・・・そんな中途半端な存在になってしまったのです。
 彼女は生きる場所を失ってしまったのです。

 だから、ルークは言ったのです。
 斬るしかないと・・・クティカをこの苦痛から救うには斬るしかないのだと・・・殺すしかないのだと・・・
 だから、彼の魔剣の封印を解いてほしいと・・・彼女をこれ以上苦しめずに・・・そのためには、魔剣の力で・・・
 彼が言っていることは正しいのです。
 でも・・・
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