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第2章:魔道
魔界へつながる道(1)
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私たちは国境を超えて、ゾルドからクルドークという王国に入りました。
ゾルドは比較的平和な国でしたが、このクルドークにはたくさんの魔物が・・・そして、たくさんの魔人がいるので気をつけなければなりません。
私とルークは毎日警戒を怠らないようにしながら、旅を続けていました。
でも、今のところ、襲ってくる魔物はいません。
ルークは山道を歩きながら、クルドークという国について教えてくれました。
クルドークはこれまで旅してきたゾルドとは比較にならないほど栄えているのだと。
商業や工業が盛んで、たくさんの人間が住んでいるのだと。
だから、その中に魔人が紛れ込んでいるのだと。
大勢の人間がいるので、中に魔物が紛れ込んでいても、誰も気が付かないのだと。
彼は、この国のことをよく知っていました。
まるで、何度も行ったことがあるような口ぶりで話すのです。
時々私は不思議な気分になりました。・・・
・・・もしかしたら、彼は、今私たちが旅をしているのと同じ道を歩いたことがあるのかもしれない・・・
それは、誰と?・・・
以前のソフィアと? あるいは別の人と? それとも一人でで?・・・
よくわかりません。
でも、彼は同じ旅を何度も繰り返しているような気がして・・・
どうして、私はそんなことを思うのでしょうか。
私たちは、テリクという街に向かっていました。
そこは、クルドーク第二の都市で、人口も多く、・・・
私たちは長い山道を歩いていました。
いくら国が栄えていると言っても、私が以前住んでいた日本とは違います。
鉄道が通っていて列車が轟音を立てながら走行しているわけでもなく、高速道路があってひっきりなしにトラックが走っているわけでもなく・・・山中に細い道が続いているだけ・・・馬車がやっと通れるぐらいの細い道が・・・
私の頭には、ふと、東京大阪間約2時間などという言葉が浮かんできました。
・・・ああ、なつかしい・・・
今でも時々、転生する前の生活を思い出します。
でも、以前と違って、前の世界に戻りたいというような衝動が起きなくなりました。
私はこの世界でやるべきことがある・・・私がこの世界で生きているのには意味がある・・・だから、私は・・・
しばらく歩くと、やっと山間に巨大な都市が見え始めました。
さすがに、クルドーク王国第二の都市ですね・・・この世界でこんな大きな街を見るのは初めてでした。
ほとんどが石造りの建物でしたが、中央には高い建築物が密集して建てられていて、その中には高い塔がいくつもそびえていて、教会らしき建物や劇場のような大きな施設もあり・・・しかも、周囲には高い城壁も作られていました。
街をぐるりと囲いこんでいる頑丈な石の壁・・・街の人々を守るための厚い壁・・・それは街の中と外を明確に区別し・・・
山間部を抜けると、街までは野原が続いていました。
とても歩きやすい場所でした。
きれいな草花がたくさん・・・
でも、時々奇妙な植物も・・・真っ黒な花や、紫色の葉っぱの植物・・・
それらは、見たこともないような異様な形状をしていて・・・
しかも、不思議なことに、街に近づくにつれて、そういう奇妙な植物を多く見るようになったのです。
それは明らかに魔界の植物でした。
魔の植物がこの世界に溢れ出ているのです。
つまり、このあたりは、魔の力の支配が強いのです。
ルークは立ち止まってしゃがむと、派手な色の魔植物を手でつまみながら言いました。
「こういう魔界の植物には気をつけないと・・・襲ってくることはありませんが・・・うっかり食べるとお腹を壊しますよ・・・」
・・・え?! そういうことをルークに言われたくない・・・この前、魔キノコを食べてお腹を壊したのは誰だっけ?・・・それで私、大変な目にあったんだから・・・まあ、最後にはルークに助けられたけど・・・
それにしても、街に近づくにつれて、魔界の植物が増えていくというのはどういうことなのでしょうか。
魔物の力が強まっているということなのでしょうか。
街に潜んでいる魔物たちのエネルギーが漏れ出しているということなのでしょうか。
でも、ルークは違うというのです。
「もう、このあたりまで来ると、魔界から直接魔力が流れ込んでいるんです」
魔界の植物が生えているあたりを探ると、地面に小さな黒い穴があるのです。
確かにその穴から魔力が流れ込んできているようなのです。
ルークは私に、
「これは、魔界につながる小さな穴です。つまり、それは魔界とこの世の境界面の裂け目なのです・・・魔植物がたくさん生えているあたりには、必ずこういう小さな穴があって、それが魔力の源になっているんです」
彼の説明では、これらは小さな裂け目なので、そこから魔物や魔人が入ってきたりすることはないのだと。
魔力は漏れ出してくる程度で、魔植物の種子などの小さなものが飛んでくるだけだと。
でも、その穴はいずれ大きくなるかもしれないのだと。
だから、そういう小さな魔界の穴でも危険なのだと。
私は、見つけるたびに、魔法でその魔界の穴を塞ぎ、もう二度と魔力が入ってこないように封印しました。
しかし、そんな穴は無数にあるのです。
全てを私一人で塞ぐことなどできません。
私はルークに、
「ねえ、こんなにいっぱいあるのに、これ全部封印することなんてできないよ」
「そうですね、たくさんありますからね」
ルークの話では、本当に危険なのは、魔道と言われるもっと大きな穴なのだと。
その魔道は、魔物や魔人が通り抜けることができるのだと。
そして、これから向かうテリクという都市にはそういう魔道がたくさんあるのだと。
私たちはそれを見つけて塞がなければならないのだと。
魔道を塞ぐ・・・そんなことが私に本当にできるのでしょうか。何となく不安な気持ちになりました。
ルークは言いました。
「そうしないと、たくさんの少女がさらわれて・・・毎日のように・・・そして、魔人の餌食になって・・・今でも、大勢の女性たちが、魔物に苦しみながら・・・」
ゾルドは比較的平和な国でしたが、このクルドークにはたくさんの魔物が・・・そして、たくさんの魔人がいるので気をつけなければなりません。
私とルークは毎日警戒を怠らないようにしながら、旅を続けていました。
でも、今のところ、襲ってくる魔物はいません。
ルークは山道を歩きながら、クルドークという国について教えてくれました。
クルドークはこれまで旅してきたゾルドとは比較にならないほど栄えているのだと。
商業や工業が盛んで、たくさんの人間が住んでいるのだと。
だから、その中に魔人が紛れ込んでいるのだと。
大勢の人間がいるので、中に魔物が紛れ込んでいても、誰も気が付かないのだと。
彼は、この国のことをよく知っていました。
まるで、何度も行ったことがあるような口ぶりで話すのです。
時々私は不思議な気分になりました。・・・
・・・もしかしたら、彼は、今私たちが旅をしているのと同じ道を歩いたことがあるのかもしれない・・・
それは、誰と?・・・
以前のソフィアと? あるいは別の人と? それとも一人でで?・・・
よくわかりません。
でも、彼は同じ旅を何度も繰り返しているような気がして・・・
どうして、私はそんなことを思うのでしょうか。
私たちは、テリクという街に向かっていました。
そこは、クルドーク第二の都市で、人口も多く、・・・
私たちは長い山道を歩いていました。
いくら国が栄えていると言っても、私が以前住んでいた日本とは違います。
鉄道が通っていて列車が轟音を立てながら走行しているわけでもなく、高速道路があってひっきりなしにトラックが走っているわけでもなく・・・山中に細い道が続いているだけ・・・馬車がやっと通れるぐらいの細い道が・・・
私の頭には、ふと、東京大阪間約2時間などという言葉が浮かんできました。
・・・ああ、なつかしい・・・
今でも時々、転生する前の生活を思い出します。
でも、以前と違って、前の世界に戻りたいというような衝動が起きなくなりました。
私はこの世界でやるべきことがある・・・私がこの世界で生きているのには意味がある・・・だから、私は・・・
しばらく歩くと、やっと山間に巨大な都市が見え始めました。
さすがに、クルドーク王国第二の都市ですね・・・この世界でこんな大きな街を見るのは初めてでした。
ほとんどが石造りの建物でしたが、中央には高い建築物が密集して建てられていて、その中には高い塔がいくつもそびえていて、教会らしき建物や劇場のような大きな施設もあり・・・しかも、周囲には高い城壁も作られていました。
街をぐるりと囲いこんでいる頑丈な石の壁・・・街の人々を守るための厚い壁・・・それは街の中と外を明確に区別し・・・
山間部を抜けると、街までは野原が続いていました。
とても歩きやすい場所でした。
きれいな草花がたくさん・・・
でも、時々奇妙な植物も・・・真っ黒な花や、紫色の葉っぱの植物・・・
それらは、見たこともないような異様な形状をしていて・・・
しかも、不思議なことに、街に近づくにつれて、そういう奇妙な植物を多く見るようになったのです。
それは明らかに魔界の植物でした。
魔の植物がこの世界に溢れ出ているのです。
つまり、このあたりは、魔の力の支配が強いのです。
ルークは立ち止まってしゃがむと、派手な色の魔植物を手でつまみながら言いました。
「こういう魔界の植物には気をつけないと・・・襲ってくることはありませんが・・・うっかり食べるとお腹を壊しますよ・・・」
・・・え?! そういうことをルークに言われたくない・・・この前、魔キノコを食べてお腹を壊したのは誰だっけ?・・・それで私、大変な目にあったんだから・・・まあ、最後にはルークに助けられたけど・・・
それにしても、街に近づくにつれて、魔界の植物が増えていくというのはどういうことなのでしょうか。
魔物の力が強まっているということなのでしょうか。
街に潜んでいる魔物たちのエネルギーが漏れ出しているということなのでしょうか。
でも、ルークは違うというのです。
「もう、このあたりまで来ると、魔界から直接魔力が流れ込んでいるんです」
魔界の植物が生えているあたりを探ると、地面に小さな黒い穴があるのです。
確かにその穴から魔力が流れ込んできているようなのです。
ルークは私に、
「これは、魔界につながる小さな穴です。つまり、それは魔界とこの世の境界面の裂け目なのです・・・魔植物がたくさん生えているあたりには、必ずこういう小さな穴があって、それが魔力の源になっているんです」
彼の説明では、これらは小さな裂け目なので、そこから魔物や魔人が入ってきたりすることはないのだと。
魔力は漏れ出してくる程度で、魔植物の種子などの小さなものが飛んでくるだけだと。
でも、その穴はいずれ大きくなるかもしれないのだと。
だから、そういう小さな魔界の穴でも危険なのだと。
私は、見つけるたびに、魔法でその魔界の穴を塞ぎ、もう二度と魔力が入ってこないように封印しました。
しかし、そんな穴は無数にあるのです。
全てを私一人で塞ぐことなどできません。
私はルークに、
「ねえ、こんなにいっぱいあるのに、これ全部封印することなんてできないよ」
「そうですね、たくさんありますからね」
ルークの話では、本当に危険なのは、魔道と言われるもっと大きな穴なのだと。
その魔道は、魔物や魔人が通り抜けることができるのだと。
そして、これから向かうテリクという都市にはそういう魔道がたくさんあるのだと。
私たちはそれを見つけて塞がなければならないのだと。
魔道を塞ぐ・・・そんなことが私に本当にできるのでしょうか。何となく不安な気持ちになりました。
ルークは言いました。
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