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序章

魂の傷

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私は同級生に殺された。

赤茶色の縮れた髪が原因で酷い虐めにあった。

子供とは残酷な生き物。

絡まって伸ばせない髪を馬鹿にし、蔑むだけでは済まない。

行為はエスカレートしていき、身も心もボロボロだった。

親は仕事に夢中で、お金さえ与えれば責任を果たしていると勘違いしていた。

物を壊されても、服は切られても、身体中が傷や痣だらけでも助けてはくれない。

いつしか外に出なくなり、ゲームの世界にハマっていった。

同級生達は、隠れてる事すら許してはくれなかった。

彼等は、私の家まで押し掛けてきた。

殴り飛ばされた私は、ガラスのテーブルに頭を打ち付け死んだ。

でも人為的な事故で処理されるかもしれない。

もしくは自殺にされるかも。



両親や周りの人間に期待するだけ無駄。


神様だって信じない。


薄れる意識の中、私は海の夢を見た。



その人は海の匂いがする高貴な方だった。

水底の様な蒼い髪に、波打つ水面のようにキラキラした水色の瞳で私を見詰め。

白く大きな手は、私の自慢だった美しい黒髪を撫でながら愛を囁いてくれた。

私はとても幸せだった。

ところが、あの人の妹さんの自慢の庭園で愛しあっていたところに、妹さんが激怒しながら乗り込んできて、事態は一変した。

怒り狂った彼女は、私の頭に薬品を浴びせかけた。

肌は爛れ、髪は溶け、彼が愛してくれた私とは掛け離れた姿に発狂した。

私は牢屋に入れられたけど、彼は隠れて逢いに来てくれた。

暗い石造りの牢屋で、顔や肌が出ないように大きめなローブを纏っていた。

肌が焼ける苦しみも彼が来てくれたら、忘れられた。

そんな、ささやかな幸せも、彼女は許してくれなかった。

私の為に抗議してくれた優しい姉達と共に、ありもしない罪を被せられ、醜い姿を晒されて首を切り落とされた。

愛する人の目の前で………。

時の権力者とは、自分の行いを正当化して広めるものなのだと知った。

童話や神話の真実を知る者は少ない。

私はメデューサ.ゴルゴン。

髪が蛇ではなかったし、目で石になど出来なかった………ただ、愛する人と引き裂かれ処刑された貴族の娘だった。



転生した身体にも影響が出るくらいに、私の魂は傷付いていた。


ダダでさえ傷が酷く転生までに、かなりの年月が過ぎ、やっと生まれ変わっても、その傷は赤茶色の縮れ髪に現れてしまった。



これは天罰なのだろうか。




勝てば官軍とは、よく言ったものです。


処刑された私は、悪者………化け物として伝えられている。


私は、大好きな人と愛し合っただけなのに。
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