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プロローグ
社長に育てられた双子
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5歳になったばかりの紫苑は公園の砂場でしゃがみ、小さなピンクのバケツに入った水を使って泥団子を作っていました。
天使の輪が浮かぶ艶々の黒髪を紫のリボンがついたゴムで2つに結んで、大きな黒目をキラキラさせながら、鼻歌交じりで近くに置きっぱなしになっていた少し汚れたプラスチック製のトレイに泥団子を作り並べている。
「ブルンブルンブル~ン♪はらちりがらとほぶるん~♬︎♡」※ぶんぶんぶんの替え歌でお送りしております。
シンプルなエプロン型の薄紫色のジャンパースカートに白いTシャツ姿の紫苑の前には、一緒に『おままごと』で遊ぶ双子の妹の紅巴が黒縁メガネにプラスチック製の鼻の下には髭が生えた『鼻メガネ』を着用してドッカリと座っています。
「ママ、ご飯はまだなのか?」
どうやら妹の紅巴が、お父さん役みたいです。
紫苑と同じデザインの色違いである赤いジャンパースカートに赤いリボンの紅巴は、腕を組んでウンウンの首を縦に振りながら威厳のある父を演じています。
「さぁ出来ましたよ!今日はアクアハサーよぉ」
テレビ見たアクアパッツァをオシャレな料理だとなんとなく覚えていたのですが、幼い紫苑には少し名前が難しかったみたいです。
「僕は味噌汁が飲みたい」
クワッと目を見開いで紅巴が眉間に皺を寄せながらトレイを受け取る。
「味噌スープ~」
「なんでもカタカナで言うもんじゃない」
「味噌は日本ですぅ~」
これは家での両親のやり取りも反映されているようです。
お人形さんの様な可愛い双子の女の子が繰り広げる『ままごと』に、近くのお母さん達もクスクス笑いながら見守っていました。
でも残念ながら、その中に双子の本当の母親はいませんでした。
父親からの電話の内容を聞かれたくなくて公園の外に出て行ってしまったのです。
どうやら仲良し家族とはいかないようです。
「アクニャパッハとやらは美味しいのか?」
紅巴にもアクアパッツァは難しかったみたいです。
「騙されたと思って食べてみて」
「モグモグ………騙された!」
「えぇぇ?!」
モグモグとプラスチックの髭を上下に揺らしながら食べる真似をし、泥団子を下に落としていく手を止めて目を見開いた紅巴の反応に、紫苑は砂場に座り込んで仰け反りながら大きな声を上げてビックリしています。
2人だけのママゴト。
微笑ましい気持ちで見守る人達はいても、周りで遊ぶ子供達が加わる事はありませんでした。
紫苑と紅巴は、2人でいれば寂しくありません。
「ママ遅いね」
「迎えに行こうか」
「うん」
もちろん2人は、ママが電話でパパに怒鳴れていることは知りません。
鼻眼鏡以外は、元々お砂場にあった玩具なので置きっぱなしにして、小さな手で砂を払うと手を繋いで家に向かう為に公園を出て行きます。
これは幸せだった頃の双子の姉の紅巴との思い出。
私のパパは最低な人間だった。
いつもママを虐めて、まだ子供の私を異性として意識する腐った大人だった。
そして、その日の夜に事件が起きた。
たまたまパジャマを逆に着ていた紅巴を私も勘違いしたパパが、お酒に酔った勢いで襲いかかった。
寝付きがよく、余程のことがないと起きない紅巴も流石に起きたけど、極度のパニック状態に陥って、過呼吸起こして意識が朦朧としている。
父は最初にしがみついた私を殴り飛ばすと、大きな音がして慌ててママが入ってくると、紅巴が着た紫色のパジャマを引き裂いたパパの足元で顔から血を流し倒れている私の姿がありました。
朦朧とする意識の中でママかパパを包丁で刺すと、逆上したパパにママが首を絞められていたのが見えた。
薄れていく意識。
そして目が覚めると私は顔なしになっていた。
「良かったら、私の会社で働かないか?」
そう声を掛けてくれたのがモブ専門派遣会社の社長でした。
でもママは顔なしになった事を受け入れられなかった。
顔なしモブが顔ありに進化できると知ったママは人が変わったみたいに私達を無視して、顔ありの人達に片っ端から声をかけ擦り寄り始めた。
何人かと肉体関係を結ぶと、その事が社長にバレて会社をクビになり姿を消した。
私達を育ててくれたのは社長でした。
天使の輪が浮かぶ艶々の黒髪を紫のリボンがついたゴムで2つに結んで、大きな黒目をキラキラさせながら、鼻歌交じりで近くに置きっぱなしになっていた少し汚れたプラスチック製のトレイに泥団子を作り並べている。
「ブルンブルンブル~ン♪はらちりがらとほぶるん~♬︎♡」※ぶんぶんぶんの替え歌でお送りしております。
シンプルなエプロン型の薄紫色のジャンパースカートに白いTシャツ姿の紫苑の前には、一緒に『おままごと』で遊ぶ双子の妹の紅巴が黒縁メガネにプラスチック製の鼻の下には髭が生えた『鼻メガネ』を着用してドッカリと座っています。
「ママ、ご飯はまだなのか?」
どうやら妹の紅巴が、お父さん役みたいです。
紫苑と同じデザインの色違いである赤いジャンパースカートに赤いリボンの紅巴は、腕を組んでウンウンの首を縦に振りながら威厳のある父を演じています。
「さぁ出来ましたよ!今日はアクアハサーよぉ」
テレビ見たアクアパッツァをオシャレな料理だとなんとなく覚えていたのですが、幼い紫苑には少し名前が難しかったみたいです。
「僕は味噌汁が飲みたい」
クワッと目を見開いで紅巴が眉間に皺を寄せながらトレイを受け取る。
「味噌スープ~」
「なんでもカタカナで言うもんじゃない」
「味噌は日本ですぅ~」
これは家での両親のやり取りも反映されているようです。
お人形さんの様な可愛い双子の女の子が繰り広げる『ままごと』に、近くのお母さん達もクスクス笑いながら見守っていました。
でも残念ながら、その中に双子の本当の母親はいませんでした。
父親からの電話の内容を聞かれたくなくて公園の外に出て行ってしまったのです。
どうやら仲良し家族とはいかないようです。
「アクニャパッハとやらは美味しいのか?」
紅巴にもアクアパッツァは難しかったみたいです。
「騙されたと思って食べてみて」
「モグモグ………騙された!」
「えぇぇ?!」
モグモグとプラスチックの髭を上下に揺らしながら食べる真似をし、泥団子を下に落としていく手を止めて目を見開いた紅巴の反応に、紫苑は砂場に座り込んで仰け反りながら大きな声を上げてビックリしています。
2人だけのママゴト。
微笑ましい気持ちで見守る人達はいても、周りで遊ぶ子供達が加わる事はありませんでした。
紫苑と紅巴は、2人でいれば寂しくありません。
「ママ遅いね」
「迎えに行こうか」
「うん」
もちろん2人は、ママが電話でパパに怒鳴れていることは知りません。
鼻眼鏡以外は、元々お砂場にあった玩具なので置きっぱなしにして、小さな手で砂を払うと手を繋いで家に向かう為に公園を出て行きます。
これは幸せだった頃の双子の姉の紅巴との思い出。
私のパパは最低な人間だった。
いつもママを虐めて、まだ子供の私を異性として意識する腐った大人だった。
そして、その日の夜に事件が起きた。
たまたまパジャマを逆に着ていた紅巴を私も勘違いしたパパが、お酒に酔った勢いで襲いかかった。
寝付きがよく、余程のことがないと起きない紅巴も流石に起きたけど、極度のパニック状態に陥って、過呼吸起こして意識が朦朧としている。
父は最初にしがみついた私を殴り飛ばすと、大きな音がして慌ててママが入ってくると、紅巴が着た紫色のパジャマを引き裂いたパパの足元で顔から血を流し倒れている私の姿がありました。
朦朧とする意識の中でママかパパを包丁で刺すと、逆上したパパにママが首を絞められていたのが見えた。
薄れていく意識。
そして目が覚めると私は顔なしになっていた。
「良かったら、私の会社で働かないか?」
そう声を掛けてくれたのがモブ専門派遣会社の社長でした。
でもママは顔なしになった事を受け入れられなかった。
顔なしモブが顔ありに進化できると知ったママは人が変わったみたいに私達を無視して、顔ありの人達に片っ端から声をかけ擦り寄り始めた。
何人かと肉体関係を結ぶと、その事が社長にバレて会社をクビになり姿を消した。
私達を育ててくれたのは社長でした。
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