モブっと異世界転生

月夜の庭

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モブっと巻き戻し

学園生活が始まらない

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私は去年に15歳の誕生日を迎えたので、ただいま16歳ですが、実家で伸び伸び暮らしています。


なんでじゃ!!とツッコミを入れる人もいるかもしれませんが、ここがゲームでは無いからでした。


龍族の番に対する執着はあれど、1つの種族の思惑の為に世界中の、ある一定の年齢の子供達が1箇所に集められるなど、まかり通るはずがありません。


龍族の他にも、獅子や狼族も番を大事にする気持ちは同じなのに、龍族だけが優遇されるような学園が建つはずがありません。


その上、経費を考えたら非現実的だと言わざるを得ません。



なので、それぞれの王国に学園があり、私も今年から猫族の学園に通う予定です。


ただし出会いは欲しい部族の希望で年に一度、それぞれの王国が順番にお見合い…………婚活……………………パーティーを主催する事になっていた。


一昨年は鶴族、去年は竜族、今年は天馬族、来年は猫族の予定です。


『桜姫様が天馬族のパーティーに参加されるのは反対にございます』


貴族の未婚の16歳以上の男女は強制参加が義務付けられている。


『可愛らしい桜姫様を目にした馬鹿野郎共が、番だと嘘をついて迫ってくるに違いありません!』


「お……落ち着け!桜姫のデビュタントでもあるのだぞ!!とりあえず手を離さんか!」


家族でドレス選びの日程について話し合っていると、顔面蒼白の白虎が、お父様の襟首を掴んでガクガクと揺らしながら、私にパーティー参加させまいと訴えていた。


『桜姫様が………桜姫様が天馬族のカスに穢される!!』


「誰がさせるか!これは恒例行事だ!!」


『婚礼行事!!』


一文字違いで、えらい違いますよね(笑)


「白虎が傍に居てくれるでしょう?」


お父様の襟首を掴んだ白虎の手に、自分の手を乗せて顔を除き込むように視線を合わせた。


出会ってからブレることなく、私だけに好意を寄せてくれる白虎を意識しないでいられるはずもなく、真っ直ぐ好きだと言われれば胸がときめくようになっていました。


絆されているだけだとカメリアには言われたけど、私は白虎が好きなんだと思う。


歳をとっても、ずっと一緒に居るのは白虎だと思っています。


「白虎のタイとお揃いの色のドレスを着たいの。一緒に選んでくれるでしょう?」


当然のことながら、貴族の中には婚約者が既に決まっており、パーティーに参加を見送る人も居るのですが必ず1回は参加する事を義務付けられている。


「今年をやり過ごせば、もう参加しなくてもいいんだもの。それとも猫族のパーティーに私を参加させたいの?」


パーティーを主催する種族によって、期待度が違います。


男性には兎族や猫族が人気が高く、女性には龍族や天馬族の人気が高い。


つまり来年の男性の参加者が多いと予想される猫族パーティに参加するよりは、女性の参加者が多いと予想される今年の天馬族パーティに参加した方が身を隠して紛れ易いのです。


『分かりました。僕が全力で桜姫様を お守り致します』


「ありがとう」


「本当に白虎はブレんな」


「ふふふっ白虎がいれば、わたくしも安心ですわ」


着々と白虎は、両親の信頼を得ています。


「精霊付きに未婚者が多いと聞きますが、白虎を見ていると納得致しますわね」


「むむむむむっ?桜姫を嫁にやらずに済むのか!!」


「ふふふっ白虎に頑張って頂きませんとね」


「そうか。俺の目の前でなければ、桜姫と……………多少なら…イチャ付いても許せる…気がする」


両親から許可が出た?!!


ビックリして白虎を見詰めると、ニッコリ微笑み返された。


『大丈夫です。いくら御両親から許可を得ても、桜姫様が望まぬことは致しません。それこそガッツいて嫌われたら、ショックで死んでしまいます』


「………」


私は”大袈裟”と言いたかったけど我慢した。


そう言ったら、白虎が好きだから私に嫌われたら死ねると言った事を否定してる気がしたから。


あまりに近すぎて、本当に私を女性として好きなのか心のどこかで疑っていました。


もしかしたら身内として、それこそ妹として好きなのか知れないと思っており、白虎が私に向ける好意が、博愛なのか敬愛なのか、それとも恋愛なのか判断に困っていました。


だから私は判断材料が欲しくなった。


「私のドレスは白虎が選んで。それを着て天馬族主催のパーティに参加します」


『色の指定はございますか?』


「白以外なら何でも着るわ。一緒に参加する私に着せたいドレスを選んで欲しいの」

白はフリーの色。声掛けて欲しい恋人募集中の人達が着るのが白だと決められていた。


だから白以外なら何でも良かった。

『よろしいのですか?』


「えぇ。だから私はドレス選びはしません」


しばらく無言で考え込んだ白虎が、私にキラキラした目を向けたので一瞬だけ怯んでしまう。


『それはドレスだけですか?』


「へぇぁ?」


無駄に緊張していたからか、おかしな声が出て恥ずかしい。


「ゴホッ……ドレス以外?」


あぁ、アクセサリーや小物の事かな?つまりトータルコーディネートさせろって事かな??


「全て任せます」


『!!』


急に膝から崩れ落ちた白虎にビックリする。


四つん這いになりる白虎を不安な気持ちで見詰めると、しばらく小刻みに震えているかと思えば、急に頭を持ち上げた顔には赤い物が流れていた。


「は………鼻血?」



『全身を………桜姫様の全てを………僕色に染める栄誉を与えてくださるのですか?!』


「ん?」



『公衆の面前で桜姫様は僕のだと、ドレスや髪飾りや小物の全てでアピールする事を許していただけるのですか?!』


今も流れ落ちる鼻血を見ていると、なんか好意の種類なんて、どうでもいい気がしてきた。


紛れるための地味な格好でもなく、子供っぽさを強調して近寄りにくくするとかでも無く、私が白虎ノモだとアピールしたいらしいです。


それを想像しただけで崩れ落ちた上に鼻血が出るのです。


「なんか、馬鹿らしくなった」


『桜姫様?』


不安そうに鼻血を流し続ける白虎の顔が、可笑しくたまらない。


そして白虎の気持ちを疑った自分が馬鹿らしく思えた。


私は床に膝をついてハンカチを取りだし、優しい彼の鼻の下を拭いてあげる。


「白虎、耳を貸しなさい」


『桜姫様?』


「もし私を綺麗に着飾らせてくれたら………ゴニョゴニョゴニョゴニョ」


私が離れても微動だにせず固まった白虎の額にチュと音を立ててキスをした。


「楽しみにしているから。白以外で私に似合う物を選んでね」


私は1人で部屋から立ち去った。


丸投げではなく、白虎の言う僕色とやらに染まってやる覚悟は決まったのだから、彼が選んでくれたドレスを着て、アクセサリーを身に付けると決めた。


選び直しもダメ出しもしない。


抵抗せずに着るのだから、話し合う必要が無いから退出した。



私が退席した後、本気になった白虎とお母様によって白熱したドレス選びが繰り広げられた事を知る由もありませんでした。
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