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第六十八話 力が欲しいか
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千尋side
「やっぱここか…」
昴と二人で潜入組を見送って、部屋にいるはずの蒼が居なくなっていた。
茜の部屋を通り、スナイプのために作られた部屋の前…スネークがドアの前に立ってる。
「呼びに行こうと思ってました。夜風は妊婦さんによくないのですが、蒼が聞いてくれなくて…」
「ありがとう。スネークもほどほどにな」
「いえ、ようやく当たるようになりましたがまだ外しますから。もう少しやっていきますよ」
言いながら、ライフルのスコープを覗いたままの蒼を見つめる。
「蒼…」
「うん」
「体が冷えちゃうだろ?戻ろう」
「もう少しだけ」
蒼が頑なだ。声も低い。これは潜入に勘付いたな。
「蒼…自分もお子さんも大切にしないといけませんよ」
「……うん」
スネークに言われて頷いてるが、動く気配がない。
蒼の背後から抱きしめて、首元のマフラーを抜き取る。
かぷり、と露出したそこに噛みついた。
「ひゃっ!?ち、千尋?!」
びっくりした蒼が振り向く。顎を掴んで唇を食む。
「んん!?」
「私は空気…私は壁…」
スネーク、すまん。
「ち、ひろ!何してるの…」
「蒼が頑固だから」
コートのジッパーを下げて、首にキスを何度も落とす。蒼がだんだん赤くなってきた。
「も、やめ…て」
「戻ろう。寒いだろ?」
「ま、マフラー返して…」
「だめ。部屋に戻るんだ」
「……だって…みんな…動いてるのに」
やっぱり勘付いてたか。
「蒼の仕事はあったかい部屋で、俺と一緒に寝ることだろ?」
「わかってる、けど」
苦い顔をした蒼を抱きしめて、マフラーを巻き直す。
「プロが揃ってるんだから、大丈夫だよ。蒼だってわかってるだろ?戦いに行ったんじゃない。探るだけだ」
「千木良さんがあっちにいるって聞いた」
「…誰から?」
「秘密。無理やり聞いたんだから言わない」
雪乃あたりかな…蒼に甘いのは困ったもんだ。
「あっちが動いたの?」
「いや、動きはない。水面下でしか動きがないのと、千木良を助け出すために行ったんだ」
蒼を立ち上がらせて、抱き抱える。
「スネーク、後片付けを頼めるか?」
「はい!もちろんです!…あまり叱らないでやってください」
「心配しなくてもいい。俺はとびきり優しい男だからな」
「……」
おい、沈黙するな。
スネークの肩を叩き、蒼を抱えたままエレベーターに乗る。
おとなしくなった蒼がしょんぼりした顔で見上げてくる。
「ごめんなさい…」
「怒ってないよ。心配しただけだ。ちょっと散歩して行くか?」
「うん…」
エレベーターを降りて、抱き抱えた蒼を下ろし、手を繋いで暗くなった廊下を歩く。
温室の脇を通り抜けて、静かな室内に俺と蒼の足音だけが響いてる。
コンピュータールームに到達すると、中で雪乃と白衣のキキが微笑みながらコーヒー飲んでる。二人は徹夜が多いみたいだからそろそろ休ませないと。
二人を眺めて、ますます苦い顔になった蒼が歩き出す。
「話さなくていいのか?」
「うん…いい。」
廊下の脇で宗介と話してる昴がいる。
こちらには気付いてない。宗介は気づいてるっぽいが。
それも見送って、蒼は歩き続ける。
今度は蒼の同期たちが部屋を開け放ってみんなで話してる。ワイワイ楽しそうだ。
そこにも足を止めない。
ただただ、静かに歩く蒼が…どんどん暗い顔になる。
「おう、暗い顔してんな?勘付いたか」
「銀…」
廊下の先で銀が佇んでる。
蒼の同期が一人、手を振りながら走っていった。
「銀も隅に置けないな?」
「ウルセェ。お前に言われたくねぇ。…蒼はスナイプの練習してきたのか?」
「…してたけど、千尋に抱え出されちゃった」
「仕方ないだろ?夜は冷える」
「まぁそうだな。夜練は短時間にしたほうがいいんじゃねぇのか」
「うん…」
「廊下も冷える。俺の部屋こいよ」
銀が蒼の反対側の手を握って歩き出す。
俺も行くのか…。
「二人にしたらアブねーからな。俺が」
「仕方ない」
「危ない?なにが?」
「お前は知らなくていいんだよ。」
ニヤリと嗤う銀を横目に、ため息が出てくる。蒼のことを好きな男は諦めの悪い奴らばかりだ。
部屋のロックを開けて、銀の部屋に入る。
あーあったかい。
スナイプルームはちょっと居ただけで冷えたからな…蒼の手を握って温める。まだ少し冷たい。
「ソファーがねえからベッドにでも座ってろ。ココでイチャつくなよ」
「しないよ!」
蒼がびっくりしながら返事してる。
部屋に広がってくるコーヒーの匂い。
ガンホルダーに複数のハンドガンが並んでる。
最近使い始めたM9はピカピカに磨かれてるな…。
複雑な気分だ。
「ほれ。デカフェだから妊婦も飲める。最近は砂糖とミルクが一つずつだったな」
「わざわざ用意してくれたの?ありがとう…」
「千尋はブラックだな」
「あ、ありがとう」
二人してカップを受け取って、銀がデスクに座る。俺たちのコーヒーの好みまで把握してるのが凄いな…驚いた。
「あっつい…」
「コート脱ごうか」
蒼の服を脱がせると、ピッタリしたタイプのボディスーツ姿になる。
これは刺激が強い…俺のジャケットを羽織らせる。
「まだ腹が膨らんでねぇな?」
「お腹が出てくるのは来月からだよ。成長がちょっと早いから、わかんないけどね」
「ふうん…蒼の同期のやつが男だって言ってたが…もうわかるのか?」
「ううん、なんとなくみんなでそう感じてるだけ。ちゃんとわかるのはまだ先なの」
「なるほどな。今まで生きてきてそういうのは経験がねえからな。俺も、桃も、慧も…相良もか?」
「そうだな、キャリア組は恋愛してる暇なんかない」
「警察も大変そうだな。103もか」
「そうだねぇ。興味はあるみたいだけど。103は桃が好きだからねぇ」
「へー。飯前にはスネークにもなんかひっついてたな」
「銀もじゃないの?」
「あ?あぁ、まぁ…なんだ。俺はそういうのはいい。間に合ってるからな」
「そ、そう…」
うん、変な空気になったぞ。俺が困るからやめてくれ。
「えーと、えーと…桃は前の組織から一緒だったんだろ?話を聞いたよ。銀に助けてもらったって」
「話逸らすの下手くそかよ…。アイツは俺とマンセル組んでたからな。パートナーを助けるのは当たり前だろ。最初は殴り合いの喧嘩したんだぜ」
銀が突っ込みつつ乗ってくれる。すいません。
「桃が喧嘩…するんだ?」
「アイツはお前らが知ってるより獰猛だ。密偵なら慧と同レベルだし、喧嘩は上手い。千尋は知ってるだろ」
「そうだな、スカウトしたの俺だしな」
「そうなの!?千尋が二人をスカウトして、昴のところに来たの?」
「そうだ。こいつらは闇社会じゃ有名人だったんだ。青と灰の死神ってな。恐ろしい勢いで小、中規模の組織を端からぶっ潰してたんだ」
「へえぇ…」
「俺そんな呼び名があったのか」
「そうだよ。だから出会った時はもう死ぬもんだと覚悟した。桃の拳に惚れた千尋がスカウトしてこなきゃ死んでただろ」
「ま、まぁな?」
「アイツは本来真っ当な道を歩いてるはずだった。ボクシングジムの奴らに騙されたんだったかな。その後賭けボクシングで無双して、そこでまたさらに妬みの対象になって、闇社会に堕とされた。
突出した人間は打たれるのが世の常ってやつなんだろうな」
「そうだったんだ…」
「プロの世界で敵なしだったやつが、闇ボクサーが手に負える訳ねぇだろ?
アイツは銃なんか使えなくとも一端のプロだよ。蒼が励ましてやったんだろ?ありがとな」
「励ましたわけじゃないけど…うん。
ボクサーかぁ。プライドが高いのも、痛さに強いのも、努力を当たり前だと思っているのもそこなんだね。辛い事があってもずっと前を向いてる。凄いかっこいい」
「そういうこった。だから心配すんな。お前は千尋といちゃついて寝てろ」
銀は心配してくれたんだな。蒼が俯いて、頷く。
銀のおかげでちょっと落ち着いたみたいだ。
空になったカップを手渡して、銀が蒼の頭を撫でる。
銀も、蒼をしっかり見つめて上手に励ましてくれている。
「おめーはどんと構えていてくれ。俺たちを支えてるのがお前だってことを自覚しろ。どいつもこいつも、お前の顔しか見てねぇんだ」
「うん…ありがとう、銀」
「おう。さっさと寝ろ。アイツらが戻ってくるのは早朝だ」
簡易キッチンに消えていく銀を見送って、蒼と二人で廊下に戻る。
温かいコーヒーが体を温めてくれて、心身ともにポカポカになった。
手を繋いで、俺の部屋に向かう。
「銀…優しいね」
「そうだな。ここにきて組織のメンバーの色んな面がわかったよ。みんなの人となりを理解してなかったな。」
「烏合の衆じゃなかったね?」
「あぁ。いい幹部に恵まれて幸運だな」
二人で微笑みあって、廊下を歩く。
きた時と違う心の温度が冷たい空気も気持ちよく感じさせてくれる。
ひたひたと歩く俺たちの足音も心地よく耳に響いた。
━━━━━━
「今日子供達を全員チェックしたんだけど、最終的にチップをつけられた子は私で最後みたいだね。研究者の人たちも頑張ってくれてたんだなぁ」
布団の上でマッサージを受けながら蒼がつぶやいてる。
今日は色っぽい声が控えめだ。緊張感があって、体が硬い。
「そうだな。悪い人だと思っていたが…蓋を開けたらみんないい人で困るよ」
「ふふ、そうだね…んぅ、千尋…くすぐったい」
「お、おう…」
うん、破壊力は落ちてない。
「麻衣ちゃんが暴走してないか心配だなぁ」
「それは確かにそうだ。アイツ見た目は冷静なのに頭の中は子供だからな。」
「麻衣ちゃんとは旧知なの?」
「いや、俺と昴がSATを拝任した時からだよ。
その時にはもう特殊部隊の長だった。アイツは上層部からも目をかけられてるんだ。同期も優秀で各省庁への繋がりは総監より強い」
「へぇぇ…」
よし、マッサージ終わり。
クリームを片付けて、蒼の服を戻して布団に横になる。
「千尋、背中から抱っこして欲しいな」
「ん?珍しいな。いいぞ」
背中を向けた蒼を抱きしめて、うなじにキスする。
「こういうのが好きなのか?」
「さっきもそうだけど…なんか、すごく…よかったの。後ろから抱っこされるの好き」
「スネークに見られてたのが?」
「ちっ、ちがうよ!もぅ…というかスネークの前でキスしたの?朝からまた練習なのに」
「仕方ない。うん。」
蒼の髪の毛に結ばれた髪ゴム。これ、慧のだよな…。て事は蒼のゴム持ってるのかアイツ。いいなぁ。
「髪ゴム交換したのか?」
「うん。…千尋、解いてくれる?」
「う、うん」
なんだろう。ドキドキしてしまう。
そっと髪の毛をまとめたゴムを緩める。
スルスル髪の毛を滑って、外したゴムを蒼が手首に嵌めた。
しかし髪の毛柔らかいな…枝毛もなくてスベスベしてる。思わず一房握って、キスを落とす。
「そ、そういうの反則…」
「えっ?ダメか?あんまり綺麗で…蒼の髪だと思うと愛おしくて…」
「だめじゃないけど…うぅ」
蒼が耳まで赤くなって、照れてる。
体の隅から隅まで知り尽くしてるのに…こういう所は全然変わらない。
蒼の顔が赤くなると心臓がうるさいんだよなぁ…。
「うーん、今日はお腹がよく張るなぁ…」
「冷えたんじゃないか?痛い?」
「うん、ちょっと…」
背中越しに腕を伸ばして、お腹をさする。
キキが言うにはお腹が張るのはよくある事らしい。
精神的なものや疲労、色んなものが影響してる。
本当は自宅の縁側でのんびり日向ぼっこでもしてて欲しいけど、蒼は忙しい。
スナイプの練習、作戦参謀、子供の教育、館内の人間のケア…夜も休む前に武器の手入れや辞書を片手に名前の候補を絞ってるし…手伝ってもキリがないし、俺たちも…体が一つしかないのが辛い。
「ごめんな、一人でなんでもさせて」
「千尋だって忙しいでしょう?雪乃を手伝ったり、自分自身も訓練して、見張りに立って。私と一緒にいないとき、夜中に宗介と手合わせしてるの知ってる」
ギク。宗介が言ったのかな。
俺は器用貧乏でなんでもできるけど、何かが突出してるタイプじゃないから。
SATの基本はあるものの、自分の武器をイマイチ把握できずにいる。
「俺のここぞって言う武器が欲しくてな。器用貧乏だろ?」
「なーに言ってるの。銀や桃みたいな専門職の人たちを抑えてセカンドまで上り詰めたのに。「」桃が怒るよ?」
「それは困るな」
「千尋は何でもできるけど、全部きちんと達人の域にある。昴も、慧もそう。自覚がないの?」
「そう、かも?」
「でもまだ欲しいんだ?」
「欲しい」
「むむ…えぇと。何だっけ…ええと…」
迷いなく答えると、蒼が額に人差し指をあてて悩み始める。
なにが始まってるんだ?
「あっ!思い出した!」
蒼がくるりと腕の中で振り返って、にこりと笑う。かわいい…。
「えーと。こほん。『ちからがほしいか』」
「えっ?」
「慧と見たアニメにあったの。ほらほら」
「えぇ…?ほ、欲しいです…」
「『しからばあたえよう』」
「何だそりゃ?」
ふふ、と笑った蒼が腕を捲り上げる。
蒼も筋肉があるのにほっそりしていて、綺麗な白い腕だ。
「千尋は筋肉が多いんだけど、使わない筋肉も多い。使わないと筋肉は硬くなるの。デスクワークが多かったでしょう?」
「そうだな。」
「それでね、筋肉の使い方を知ってるとは思うけどちょっと工夫して、意識して動かしてみると良いと思う」
今度は俺の袖を捲り上げる。
フニフニ、と触られて、ぎゅっと抑えられた。手先までピリ、と刺激が走る。
「おおう?」
「ここ。いつも使わないところ。ここはこっちの筋肉と連動させるの。ここから、ここまで繋がってる」
圧力を点で加えながら、腕の筋肉を刺激されて俺の指先がぴくぴく動く。
「足も同じだけど、意識しなければ動かない場所だから…手を握ってみて」
握り拳を作って、ぎゅうっと握る。
「今度は私が触るところを意識してもう一度」
親指で腕に触れて、蒼の指を意識して動かしてみる。
「すごい。力が入りやすい」
「そう言うこと。筋肉の使い方って脳も使えるようになるだけで、握力や力の伝わり方が変わって、力が強くなる。
千尋は弓道してたから、あっという間にできるよ。もともと使い方が上手だから」
ううむ。唸るしかない。筋肉の使い方か…。蒼の博識もここまでくると本当に先生向きだと言わざるを得ないな。
「すごい。ありがとう。練習してみるよ。」
「うん…怪我だけは気をつけてね。難しいとは思うけど…」
蒼がそっと頰に触れてくる。
目を閉じて、蒼の手のひらを目一杯感じる。暖かくて柔らかい。マメがあってもおかしくないくらい努力を欠かさないのに、出来てないのは体の使い方が上手いからか?
いや、小さい頃の傷が小さくなっているところを見ると細胞増殖の速さのせいかな…。
「今日は眠れるかな…」
「無理に寝なくてもいいよ。横になって目を瞑ってるだけでも体は休まる。たくさん話せば眠くなるかもしれないしな」
「うん」
蒼が膝の上に乗って、胸に頭を乗せてくる。腰を支えて、今度は俺が頬を撫でる。
背中から抱っこするのもいいけど、お姫様抱っこみたいでこれ好きだな。
「蒼は体の使い方も宗介に習ったのか?」
「半分はそうだよ。半分は自分で研究したの」
「そっか…あの…昨日言ってた女の子のアレも?」
「そう。話は宗介から聞いたけど。戦争経験者の智慧ってやつだねぇ。昔の文献で補足したの。
江戸時代ごろの人は普通にやってたんだよ。ナプキンなんてなかったし。中国だと情事の時に膣の筋肉を使う、房中術っていうのもあります…」
「はっ!そうだ、蒼もしかして俺たちとしてる時に…」
「それはないよ。私そんな余裕ないもん。みんなして謝ってくるけど、私だって…夢中になって、何回もしたくなるし…好きだから頭の中空っぽになってる」
「そうなのか…うわ、そうなのかぁ…」
思わず蒼の言葉を噛み締める。夢中になってるのか…嬉しいな。
「古代中国だと長生きのために房中術をしていたらしいけど。
血の巡りとか、リンパの循環が良くなれば新陳代謝も活発化するし、適度な刺激は女性も生理とかホルモンバランスとかも整うでしょう?
だから、病気予防とか若返りも不可能ではないかもね」
「それはいい事かもしれんが、俺は相手の事が好きだからしたいな。それこそ蒼とだけ。
夢中になったのも蒼だけだし。でも、効果があるなら学んでみようかな…」
若返り、とか病気予防ならあってもいいよな?ちょっと文献を探そう。
「そんなことしなくてもいいの。私は千尋が言う通りに好きな気持ちを伝え合う手段であって欲しいから。
気持ちいいのはその…体だけじゃなくて、心で感じてるからでしょ?
体が一つになって、好きな気持ちが伝わってきて、胸があったかくなる。」
「うん…うん…」
ぎゅうっと抱きしめた蒼が俺の背中に手を回してさらに密着してくる。
蒼ってすごいなぁ。愛して、愛されるってことの本質をちゃんと理解してる。
ちょっと前までよくわかってなかったのに。すごい成長を遂げてしまった。
きっと、子供も愛してくれる。
俺もずっと愛してもらえる。
楽しみだなぁ…。
ピッ、ピッ…。
「ん?!」
なんか音がした。
ピィーーーー!!!!
「はっ!」
「……」
突然室内に響き渡る音。
緊急時の連絡音だ。スイッチを切って、サクサク着替える。
相良が持ってきたSATの制服。
上下真っ黒のそれを着込み、蒼も同じようにロシア製のアサルトスーツに着替える。
慧と交換した髪ゴムを結び、蒼が悲しく微笑む。
二人で目線を交わして、部屋を飛び出した。
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