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カイの生い立ち

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 俺が再び玄関の扉を開けると、そこにはユナの父親がいた。

「こんにちは……」

「どうも……」

 俺は軽く会釈する。

「君に話があるんだが、少し時間を取ってくれないか?」

「分かりました……」

 俺は承諾して、リビングに案内した。

 ユナ、マヤ、アイカが父親が入って来たのに気付いて、挨拶をしている。

 俺はユナの父親分の紅茶を用意して、彼の前に置く。

「頂きます……」

 そう言って、一口飲んだ。そして、俺の方を見て、口を開く。

「実は君に伝えたい事があるのだ……」

「何でしょうか?」

 俺は緊張しながら尋ねる。

「今朝、マヤから聞いたと思うが、向こうの世界から刺客が送られたようだ。どうも、私のやり方に不満を持っている輩達がいてね……。その者達の仕業だと思う……」

「そうですか……」

 俺は頷いた。

「そこでだ……。私の娘達が君を守ってくれる筈だ……」

「そうみたいですね……」

 俺はチラッとアイカ達を見た。

「だから、君には娘達の事を頼んでおきたい……」

 ユナの父親は真剣な眼差しで見つめている。

「分かりました……」

「すまないな……」

 ユナの父親は頭を下げた。

「いえ、気にしないで下さい……」

「それと最近、私の息子に会ったみたいだが彼の考えていることは、よく分からない……」

「どういう事です?」

 俺は首を傾げる。

「あいつも不満を持っている輩達から、そそのかされて踊らされているのかもしれないな……」

「そうかもしれませんね……」

 俺は複雑な気持ちになった。カイが不満を持っている一派に操られている可能性が出てきたからだ。

「息子はとても強い。娘達より遥かに……。君には彼が、なぜ王位継承権が与えられなかったのかを説明しよう」

「はい……」

 俺は興味深く耳を傾ける。

「その理由として、彼の母は向こうの世界出身ではなく、いわゆる魔界と云われる世界の人間だったからだ。元々は同じ種族だったのだが魔界に移住していった者達の末裔が彼女だった」

「なるほど……」

 俺は聞き入っていた。

「そして若かりしき頃、私は修行と称し魔界に行った。そこで、魔物や妖魔を狩っていく内に魔界の族長の娘である彼女と出会い、恋に落ちた……彼女との間に生まれたのが息子だ」

 ユナの父は懐かしそうに語っている。

「そうなんですか……。でも、どうして彼は王位を継げなかったのですか?」

「それは、彼の母が魔界出身であるため家臣達から大反対されたからだ……それに、向こうの世界出身の有力氏族の者が王妃にならなければ大きな揉め事になる。それを恐れた重臣達は、彼に王位を継がせない方針を打ち出した。まあ、これは余談に過ぎないが……」

「そうだったんですか……」

 俺は驚きながらも納得した。

「まあ、そういうわけだ……。娘の事は任せたぞ……」

「はい……」

 俺は力強く返事をしたのだった。

「じゃあ、後は頼むよ……」

 ユナの父親は立ち上がると、帰って行った。

 その後ろ姿を俺は見えなくなるまで見ていた。


 俺は部屋に戻ると、ソファーに腰掛ける。すると、アイカが話しかけてきた。

「貴方、本当に大変な事になってきたわね……。大丈夫?」

「ああ、心配してくれてありがとう……。だけど、なんとかするさ……」

 俺は笑顔で答える。

「ふふっ……。やっぱり貴方って面白いわね……。そういうところ、好きだわ……」

 アイカは微笑んでいる。

「そうか……」

 俺は照れ笑いを浮かべていた。

「ところで、マヤとは、どんな姉妹関係なんだ?」

 俺はアイカに小声で質問した。

「そうね……。仲が良いか悪いかと聞かれれば、悪いという答えになるかも……? 私は昔から、姉に対して嫉妬心を抱いていたみたい……。だから、私が嫌がらせをしたりしてきたけど、もう昔の話よ……」

 アイカは遠い目をしながら語る。

「そうか……」

 俺は静かに相槌を打った。

 しばらく沈黙が続くと、今度はユナが話しかけてくる。

「パパ……」

「ん?」

「私もパパを守るから!」

 ユナは決意に満ちた表情をしていた。

「ありがとう……」

 俺は嬉しくなって微笑んだ。

「うん……」

 ユナも満面の笑みで答える。

 そんな会話をしているうちに時間は過ぎていき、夕方になっていた。

 マヤ、アイカが俺に別れを告げる。

「またね……」

「また会いましょう……」

 アイカ、マヤが口々に言う。

「じゃあ、またな……」

 俺は二人に手を振りながら見送ったのであった。


 それから、2日後の事であった。

 俺は美和と広川と一緒に大学から帰る途中に突然、襲撃を受けたのだ。

 突然、背後から何者かが斬りかかってくる! しかし、俺は難なくかわした。

「危ないじゃないか!?」

 俺は後ろを振り返る。

 そこには、刃物を持った男が立っていたのだ。見覚えのある顔ではなかった。

「お前を……殺す」

 男は殺気立った目をしている。

「誰だ!?」

 俺は叫んだ。

「死ね……」

 そう言って、再び襲いかかってくる。

 俺は冷静に男の動きを観察した。

 そして、男の手元を見切り、俺は手刀で相手の腕を叩くと刃物を落とさせた。

 俺はすかさず足払いをして転倒させる。

 そして、地面に落ちた刃物を遠くへ蹴り飛ばした。

 次に、倒れた相手の腕を取り、関節技を決めて動けないように拘束する。

「ぐっ……」

 男は苦痛の叫び声をあげたが、なおも暴れようとする。

「おい、諦めろ……」

 俺は忠告したが、無駄だった。

「ぐぉぉぉぉ!!」

 男は叫び声を上げている。

「仕方ないな……」

 俺はため息をつくと、仰向けにして思いっきり腹に拳を叩き込んだ。

「うごぉ……」

 男は、そう叫ぶと失神した。

「これで大人しくなったかな?」

 俺は呟きながら、安堵したが周りを見渡すと男の様に目が殺気立たった人達に囲まれていた。

 どうやら、周りの人間も武器を構えながら近づいてくる。

「しまった……」

 俺は後悔した。

 すると、後方から悲鳴が聞こえてきた。

「きゃぁーー」

 振り返ると、美和が襲われかけていた。

 俺は咄嵯の判断で、襲ってきた奴の腕を掴むと投げ飛ばす。

 そして、素早く美和を抱き寄せる。

「大丈夫か?」

「え、えぇ……」

 彼女は顔が青ざめながら、小さな声で返事をする。

「何が目的だ?」

 俺は問いかける。

「貴様を殺す為だ……」

 一人の男が答えた。

「何故、俺を殺そうとする?」

「そう命令された為だ……」

「命令だと……」

 俺は疑問に思った。

「命令している奴は誰だ?」

 俺は問い詰めるが、相手は黙っている。

「言わないなら……力ずくで言う事を聞かせるまでだが……」

 俺は構えを取る。

「くそったれが……」

 相手が悪態をついた瞬間、他の連中が一斉に襲いかかってきた。

 俺は襲いかかってくる敵を蹴散らしていく。

 しかし、多勢に無勢である。

「広川! お前も力を使って、こいつ等の撃退を手伝ってくれ!」

 俺は広川に助けを求めた。

「わかったよ!」

 広川は力強く返事をした。

「いくぞ! こいつ等は操られているだけだから、やりすぎるなよ!」

 俺は掛け声と共に、敵の懐に飛び込むと次々と倒していった。

 広川の方を見ると、体型に似合わないスピードと跳躍で相手を殴って気絶させている。

 俺達は連携して、敵を倒していく。

 やがて、最後の一人を倒した。

「ふぅ……」

 俺は一安心する。

「大丈夫か?」

 俺は美和に話しかけたが、様子がおかしい。

「おい、大丈夫か?」

 俺は再度話しかける。

「……」

 美和は無言のまま俯いている。

「どうしたんだ?」

 俺は心配になって顔を覗きこんだ。

「……」

 しかし、彼女の目は虚ろになっている。

「おい! しっかりしろ!!」

 俺は必死に声をかけた。

「……殺す」

 美和がボソッと呟いたかと思うと、突然、目付きが変わった。

「危ない!」

 俺は危険を感じて、彼女を突き飛ばした。

 その刹那、鋭い痛みが走る。

 見ると、俺の右腕から血が流れていた。いつの間にか手には刃物を持っている。

「お前……」

 俺は困惑していた。

「許さないわよ……」

 彼女は低い声で呟いていた。

「お前達……。絶対に許さない……。殺してやる!!!」

 美和は叫んだ。

 その時、俺達の背後から声が聞こえてきた。

「この世界に来てみたら、意外と面白い奴がいたな……」

 振り返ると、そこには男が立っていたのであった。
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