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ハニートラップ
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翌日――。
俺は憂鬱になりながら大学へ向かった。
教室に入ると、美和が待ち構えている。
彼女は俺を見つけるなり、近づいてきた。
「おはよう!」
「ああ……」
俺達は挨拶を交わす。
「ねえ……。昨日の話……憶えている?」
美和が上目遣いで見つめてくる。
「悪い……。今日は用事があるんだ……」
「まあ……逃げるわけ? 私は隆司に見せたい物があるのに……」
「悪いな……。別の日にしてくれ……」
俺の言葉を聞いた美和は溜息をつく。
「ふう……。しょうがないわね……。わかったわ……」
「助かる……」
「でも、いつなら都合が良いか教えてくれないかな?」
美和は諦めきれない様子だ。
「うぐっ……。それは……」
俺は言葉に詰まる。
「やっぱり、見たいんでしょ?」
「違う……。俺は……」
美和は勝ち誇ったように微笑む。
「わかったよ……。じゃあ、今日の夜でいいか?」
「OK! じゃあ、19時に駅前の喫茶店に来てくれる?」
「了解した……」
俺は渋々了承した。
「ありがとう! 約束したからね!」
美和は嬉しそうに去っていく。
俺はその様子を見て、深いため息をついた。
その日の講義が終わった後、俺は家に帰る事にした。
家に帰ると、ユナが玄関まで出迎えてくれる。
「パパ、おかえりなさい」
「ただいま……」
「どうしたの?」
「なんでもない……」
「なんか元気ないよ? 大丈夫?」
「大丈夫だ……。心配かけて済まないな……」
俺は無理矢理笑顔を作る。
「そう?なら良かったけど……」
ユナは少し怪しんでいた。
その夜――。
俺は駅前の喫茶店に向かっていた。
店に着くと、中に入る。
そこには、美和の姿もあった。
彼女は一人でコーヒーを飲みながら待っている。
俺は仕方なく、彼女の席へ向かう。
「よお……。待たせたようだな……」
「あら……。やっと来たのね」
「で、話というのはなんだ?」
「ここじゃ話しづらいから、場所を変えましょう」
「別にここでも良いだろう?」
「駄目なの! 2人きりで話をしたいの!」
美和は真剣な表情をしている。
「2人きりで話す事なんてあるのか?」
「もちろんよ! あなたに来てもらいたいんだから……」
美和はニヤリと笑う。
「おいおい……。何を言っているんだ?」
俺は苦笑する。
「とにかく、ここでは駄目なのよ」
美和は立ち上がると、強引に手を引っ張ってきた。
俺は抵抗したが、彼女に引っ張られて外へ連れ出されてしまう。
「ちょっと待ってくれ……」
「ほら、早く来て」
美和は俺の手を握ったまま走り出す。
「お前……。なんのつもりだ?」
「黙ってついてきなさい!」
彼女は答えずに走っていく。
俺は彼女に連れられて街中へ入っていった。
移動する間も、美和は手を離さない。
そして、着いた先は――。
目の前には美和が住んでいるアパートだった。
「お前……。ここは?」
「私の部屋よ」
美和は平然と言い放つ。
「なぜ、こんな所に連れてきたんだ!?」
「良いから、入って」
美和は俺を引っ張り部屋の中へ入る。
そして、ドアの鍵をかけた。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったわ」
美和は満足げに笑っている。
「何が言いたい?」
「決まっているじゃない……。私は隆司の事が好きなの……」
「はあっ……?」
俺は唖然とする。
「だから、私を抱いて欲しいのよ……」
美和は顔を赤らめていた。
「馬鹿を言うな! そんな事できるわけないだろうが……」
「どうして? 付き合っている女が居るわけでもないんでしょう?」
「確かにそうだが……」
俺は返答に困ってしまう。
「じゃあ、問題はないはずよね?」
美和は妖艶な微笑みを浮かべた。
俺は呆れて溜息をつく。
「あのな……。そういう事は、もっとお互いをよく知ってからだろ?」
「私はあなたの事をよく知っているもの……。それに、私はもう我慢できないの!」
美和は自分の服を脱ぎだし、下着姿になった。
「やめてくれ!」
俺は慌てて目を背ける。
「ねえ……。こっちを見て……」
「嫌だ……」
「お願い……」
俺は美和の方を見る。
彼女は身長も高く、その身体はスタイルもよく胸もあり、ちょうど良い肉付きであった。
肌は白く透き通っている。
(これは……。不味いぞ……)
俺の中で葛藤が生じる。
「触りたくない?」
美和は挑発するように言う。
「くっ……。止めてくれ……」
「本当は興味がある癖に……」
美和はクスッと笑い、胸を押し当ててきた。
「うぐっ……」
俺は思わず声を出してしまう。
柔らかい感触と共に甘い匂いを感じた。
俺は必死に耐えようとしたが、理性を保つのは難しい。
美和はさらに強く抱きついてくる。
「ねえ……。キスして……」
美和は上目遣いで言う。
「駄目だ……」
「強情ね……」
美和は唇を寄せてくる。
俺は顔を逸らす。
しかし、彼女は追いかけてきて強引に口づけしてきた。
「んむぅ……」
俺は逃げようとするが、美和は逃がさない。
そのまま舌を入れられてしまった。
彼女の唾液が流れ込んできて、頭がクラクラしてくる。
しばらくして、ようやく解放された。
美和は名残惜しそうな表情をしている。
そして、潤んだ瞳で見つめてきた。
その様子は妙に色っぽく感じる。
俺は動揺していた。
これ以上、ここに居たら流されてしまいそうだ――。
俺は何とか気持ちを落ち着ける。
「悪いが離れてくれ……」
「あら? 逃げるの? 意気地なしね」
美和は軽蔑したような視線を向けた。
「違う……。お前は美和じゃないな……。何者だ!」
俺は怒りを込めて睨みつける。
「ふうん……。バレちゃったか……。なかなか鋭いね……」
美和の顔をした何かは、ニヤリと笑う。
すると、徐々に彼女の顔が美和ではない別人の顔に変わっていった。
やがて、そこには別人の女性が現れた。
年齢は20代半ばくらいだろうか。
整った顔立ちをしており、妖艶な雰囲気を醸し出している。
彼女は妖しい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「はじめまして……。私の名はエンよ」
「貴様は何者で、美和をどうしたんだ!?」
俺は怒気を込めた声で叫ぶ。
「私も力を与えられた者よ。本物は、寝室で寝てるわ……」
「なんだと……」
「なぜ、私が偽物だと分ったの?」
「それは……。美和は気は強いが自分から誘ってくるとは思えないからな」
俺は自信満々に答える。
実際には、なんとなく違和感を感じていただけだったが……。
「それだけで分かったというの……。大したものね」
「美和は何処へ行った?」
「心配しないでも大丈夫よ。今は眠っているだけ……。そのうち起きると思うけど……」
「お前の目的は何だ?」
「私の目的? 我が主から、あなたに色仕掛けを命令された為よ……」
「ふざけるな! お前の主というのは誰だ!?」
「あなたに教える必要はないわ! だけど、どうしても知りたいというなら、力ずくで聞き出してみたらどうかしら?」
エンは楽しげに笑っている。
「そうかい……。後悔しても知らないぜ?」
「ふふ……。できるものなら、やってみなさいよ!」
彼女は余裕の笑みを浮かべていた。
「いいだろう……。その挑戦を受けてやる……」
俺は戦闘態勢に入る。
「あら? やる気になったみたいね……」
「ああ……。覚悟しろよ?」
「威勢だけは良いようね……」
「うるさい! 行くぞ!」
俺は勢いよく飛び出した。
まずは先制攻撃とばかりに殴りかかる。だが、あっさり避けられてしまう。
「そんな単調な動きでは、当たらないわよ?」
エンは嘲笑うように言った。
「ちっ……。まだまだ!」
俺は連続で攻撃を仕掛けるが、全て空振りしてしまう。
(こいつ……。見た目に反して素早い……。それに、思ったより力が強そうだ)
俺の攻撃を全て避けているのだから、当然といえば当然なのだが。
「大した事無いのね。こっちから行くわよ……」
彼女は素早く踏み込むと、拳を突き出す。
俺は咄嵯にガードするが、衝撃で吹き飛ばされてしまった。
「ぐあっ……」
床を転がりながら、なんとか体勢を立て直す。
「ほら、休んでいる暇はないわよ……」
エンは間髪入れずに追撃してくる。
「くそっ……」
俺は必死に避ける。
反撃したいところではあるが、迂闊に手を出せば返り討ちにあいそうだ。
(ここは耐えろ……。チャンスは必ず来るはずだ……)
俺は自分に言い聞かせるようにして、ひたすら回避に専念する。
「あら? 逃げるのが得意なのね……」
「ふん……。言ってろ……」
俺は挑発に乗るふりをして、わざと隙を作って見せた。
「かかったわね……」
エンは俺の顔面を狙って蹴りを放つ。
俺は敢えて受け止めると、そのまま掴んで拘束する。
「捕まえたぞ……」
その時、俺は腕に切られた痛みが走った。
見ると、血が少し流れているが傷は浅い。
「痛ってぇ……」
俺は思わず叫んでしまう。
「油断したわね。残念だったわ……」
彼女の手には小型のナイフが握られていた。
「まさか、隠し持っていたとはな……」
「ふふ……。これで形勢逆転ね……」
エンは勝ち誇ったような表情を浮かべた。
「まだだ……」
俺は、まだ戦えるが彼女は不敵な笑みを浮かべている。
「そろそろ毒が効いてくる頃かしら?」
「何だと!?」
俺は慌てて自分の身体を確かめる。
俺の身体全体に痺れが襲ってくる。
「これは麻痺性の毒よ……」
「くそっ……。身体が動かねぇ……」
「さようなら……」
彼女は止めを刺そうと近づいてくる。
俺は床に四つん這いに付しながら命の危険を感じた。
「ここまでか……」
万策尽きたかと思った時、突然目の前に人影が現れた。
その人物は、エンに強烈な一撃を食らわせると吹っ飛ばした。
エンは苦しげな声を上げる。
「ぐあぁ……。何者よ!?」
エンは起き上がると、現れた人物を睨みつけた。
「パパを傷つけたな!!」
そこには、ユナの姿があった――。
俺は憂鬱になりながら大学へ向かった。
教室に入ると、美和が待ち構えている。
彼女は俺を見つけるなり、近づいてきた。
「おはよう!」
「ああ……」
俺達は挨拶を交わす。
「ねえ……。昨日の話……憶えている?」
美和が上目遣いで見つめてくる。
「悪い……。今日は用事があるんだ……」
「まあ……逃げるわけ? 私は隆司に見せたい物があるのに……」
「悪いな……。別の日にしてくれ……」
俺の言葉を聞いた美和は溜息をつく。
「ふう……。しょうがないわね……。わかったわ……」
「助かる……」
「でも、いつなら都合が良いか教えてくれないかな?」
美和は諦めきれない様子だ。
「うぐっ……。それは……」
俺は言葉に詰まる。
「やっぱり、見たいんでしょ?」
「違う……。俺は……」
美和は勝ち誇ったように微笑む。
「わかったよ……。じゃあ、今日の夜でいいか?」
「OK! じゃあ、19時に駅前の喫茶店に来てくれる?」
「了解した……」
俺は渋々了承した。
「ありがとう! 約束したからね!」
美和は嬉しそうに去っていく。
俺はその様子を見て、深いため息をついた。
その日の講義が終わった後、俺は家に帰る事にした。
家に帰ると、ユナが玄関まで出迎えてくれる。
「パパ、おかえりなさい」
「ただいま……」
「どうしたの?」
「なんでもない……」
「なんか元気ないよ? 大丈夫?」
「大丈夫だ……。心配かけて済まないな……」
俺は無理矢理笑顔を作る。
「そう?なら良かったけど……」
ユナは少し怪しんでいた。
その夜――。
俺は駅前の喫茶店に向かっていた。
店に着くと、中に入る。
そこには、美和の姿もあった。
彼女は一人でコーヒーを飲みながら待っている。
俺は仕方なく、彼女の席へ向かう。
「よお……。待たせたようだな……」
「あら……。やっと来たのね」
「で、話というのはなんだ?」
「ここじゃ話しづらいから、場所を変えましょう」
「別にここでも良いだろう?」
「駄目なの! 2人きりで話をしたいの!」
美和は真剣な表情をしている。
「2人きりで話す事なんてあるのか?」
「もちろんよ! あなたに来てもらいたいんだから……」
美和はニヤリと笑う。
「おいおい……。何を言っているんだ?」
俺は苦笑する。
「とにかく、ここでは駄目なのよ」
美和は立ち上がると、強引に手を引っ張ってきた。
俺は抵抗したが、彼女に引っ張られて外へ連れ出されてしまう。
「ちょっと待ってくれ……」
「ほら、早く来て」
美和は俺の手を握ったまま走り出す。
「お前……。なんのつもりだ?」
「黙ってついてきなさい!」
彼女は答えずに走っていく。
俺は彼女に連れられて街中へ入っていった。
移動する間も、美和は手を離さない。
そして、着いた先は――。
目の前には美和が住んでいるアパートだった。
「お前……。ここは?」
「私の部屋よ」
美和は平然と言い放つ。
「なぜ、こんな所に連れてきたんだ!?」
「良いから、入って」
美和は俺を引っ張り部屋の中へ入る。
そして、ドアの鍵をかけた。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったわ」
美和は満足げに笑っている。
「何が言いたい?」
「決まっているじゃない……。私は隆司の事が好きなの……」
「はあっ……?」
俺は唖然とする。
「だから、私を抱いて欲しいのよ……」
美和は顔を赤らめていた。
「馬鹿を言うな! そんな事できるわけないだろうが……」
「どうして? 付き合っている女が居るわけでもないんでしょう?」
「確かにそうだが……」
俺は返答に困ってしまう。
「じゃあ、問題はないはずよね?」
美和は妖艶な微笑みを浮かべた。
俺は呆れて溜息をつく。
「あのな……。そういう事は、もっとお互いをよく知ってからだろ?」
「私はあなたの事をよく知っているもの……。それに、私はもう我慢できないの!」
美和は自分の服を脱ぎだし、下着姿になった。
「やめてくれ!」
俺は慌てて目を背ける。
「ねえ……。こっちを見て……」
「嫌だ……」
「お願い……」
俺は美和の方を見る。
彼女は身長も高く、その身体はスタイルもよく胸もあり、ちょうど良い肉付きであった。
肌は白く透き通っている。
(これは……。不味いぞ……)
俺の中で葛藤が生じる。
「触りたくない?」
美和は挑発するように言う。
「くっ……。止めてくれ……」
「本当は興味がある癖に……」
美和はクスッと笑い、胸を押し当ててきた。
「うぐっ……」
俺は思わず声を出してしまう。
柔らかい感触と共に甘い匂いを感じた。
俺は必死に耐えようとしたが、理性を保つのは難しい。
美和はさらに強く抱きついてくる。
「ねえ……。キスして……」
美和は上目遣いで言う。
「駄目だ……」
「強情ね……」
美和は唇を寄せてくる。
俺は顔を逸らす。
しかし、彼女は追いかけてきて強引に口づけしてきた。
「んむぅ……」
俺は逃げようとするが、美和は逃がさない。
そのまま舌を入れられてしまった。
彼女の唾液が流れ込んできて、頭がクラクラしてくる。
しばらくして、ようやく解放された。
美和は名残惜しそうな表情をしている。
そして、潤んだ瞳で見つめてきた。
その様子は妙に色っぽく感じる。
俺は動揺していた。
これ以上、ここに居たら流されてしまいそうだ――。
俺は何とか気持ちを落ち着ける。
「悪いが離れてくれ……」
「あら? 逃げるの? 意気地なしね」
美和は軽蔑したような視線を向けた。
「違う……。お前は美和じゃないな……。何者だ!」
俺は怒りを込めて睨みつける。
「ふうん……。バレちゃったか……。なかなか鋭いね……」
美和の顔をした何かは、ニヤリと笑う。
すると、徐々に彼女の顔が美和ではない別人の顔に変わっていった。
やがて、そこには別人の女性が現れた。
年齢は20代半ばくらいだろうか。
整った顔立ちをしており、妖艶な雰囲気を醸し出している。
彼女は妖しい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「はじめまして……。私の名はエンよ」
「貴様は何者で、美和をどうしたんだ!?」
俺は怒気を込めた声で叫ぶ。
「私も力を与えられた者よ。本物は、寝室で寝てるわ……」
「なんだと……」
「なぜ、私が偽物だと分ったの?」
「それは……。美和は気は強いが自分から誘ってくるとは思えないからな」
俺は自信満々に答える。
実際には、なんとなく違和感を感じていただけだったが……。
「それだけで分かったというの……。大したものね」
「美和は何処へ行った?」
「心配しないでも大丈夫よ。今は眠っているだけ……。そのうち起きると思うけど……」
「お前の目的は何だ?」
「私の目的? 我が主から、あなたに色仕掛けを命令された為よ……」
「ふざけるな! お前の主というのは誰だ!?」
「あなたに教える必要はないわ! だけど、どうしても知りたいというなら、力ずくで聞き出してみたらどうかしら?」
エンは楽しげに笑っている。
「そうかい……。後悔しても知らないぜ?」
「ふふ……。できるものなら、やってみなさいよ!」
彼女は余裕の笑みを浮かべていた。
「いいだろう……。その挑戦を受けてやる……」
俺は戦闘態勢に入る。
「あら? やる気になったみたいね……」
「ああ……。覚悟しろよ?」
「威勢だけは良いようね……」
「うるさい! 行くぞ!」
俺は勢いよく飛び出した。
まずは先制攻撃とばかりに殴りかかる。だが、あっさり避けられてしまう。
「そんな単調な動きでは、当たらないわよ?」
エンは嘲笑うように言った。
「ちっ……。まだまだ!」
俺は連続で攻撃を仕掛けるが、全て空振りしてしまう。
(こいつ……。見た目に反して素早い……。それに、思ったより力が強そうだ)
俺の攻撃を全て避けているのだから、当然といえば当然なのだが。
「大した事無いのね。こっちから行くわよ……」
彼女は素早く踏み込むと、拳を突き出す。
俺は咄嵯にガードするが、衝撃で吹き飛ばされてしまった。
「ぐあっ……」
床を転がりながら、なんとか体勢を立て直す。
「ほら、休んでいる暇はないわよ……」
エンは間髪入れずに追撃してくる。
「くそっ……」
俺は必死に避ける。
反撃したいところではあるが、迂闊に手を出せば返り討ちにあいそうだ。
(ここは耐えろ……。チャンスは必ず来るはずだ……)
俺は自分に言い聞かせるようにして、ひたすら回避に専念する。
「あら? 逃げるのが得意なのね……」
「ふん……。言ってろ……」
俺は挑発に乗るふりをして、わざと隙を作って見せた。
「かかったわね……」
エンは俺の顔面を狙って蹴りを放つ。
俺は敢えて受け止めると、そのまま掴んで拘束する。
「捕まえたぞ……」
その時、俺は腕に切られた痛みが走った。
見ると、血が少し流れているが傷は浅い。
「痛ってぇ……」
俺は思わず叫んでしまう。
「油断したわね。残念だったわ……」
彼女の手には小型のナイフが握られていた。
「まさか、隠し持っていたとはな……」
「ふふ……。これで形勢逆転ね……」
エンは勝ち誇ったような表情を浮かべた。
「まだだ……」
俺は、まだ戦えるが彼女は不敵な笑みを浮かべている。
「そろそろ毒が効いてくる頃かしら?」
「何だと!?」
俺は慌てて自分の身体を確かめる。
俺の身体全体に痺れが襲ってくる。
「これは麻痺性の毒よ……」
「くそっ……。身体が動かねぇ……」
「さようなら……」
彼女は止めを刺そうと近づいてくる。
俺は床に四つん這いに付しながら命の危険を感じた。
「ここまでか……」
万策尽きたかと思った時、突然目の前に人影が現れた。
その人物は、エンに強烈な一撃を食らわせると吹っ飛ばした。
エンは苦しげな声を上げる。
「ぐあぁ……。何者よ!?」
エンは起き上がると、現れた人物を睨みつけた。
「パパを傷つけたな!!」
そこには、ユナの姿があった――。
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