貴方自身が招いた結果です

王太子アウグスト

　王太子アウグスト。
年齢はエヴァリーナの２歳上で容姿・能力いずれも後の王者として不足はない。
しかし、時々陰で噂される一言が付いて回った。
『あれで女癖が悪くなかったら』である。
アウグストは爽やかな貴公子然とした面持ちではあるが女癖が大変悪かった。

　王族は湯あみ一つするにも侍女にその世話をさせる。
服を脱がせ、体を洗わせ、また服を着させて身支度を整えさせる。
その一連の作業をするのは当然全て平民上がりの美しい侍女達である。
その様に常に女性にかしずかれて世話をされているのだから色気づくのも早かった。

　初めにアウグスト少年の相手をしたのは石女の３０代の女性だった。
しかし万が一にも妊娠されたら後々の争いの種となる。
そういう訳でアウグストの興味を引きにくいある程度年配の女性に切り替えさせた。

　だが、それでもアウグストの肉欲は収まらなかった。
裏で若い使用人の女性に手を出しつつ、何とか外部に漏れない様処理されてきた。
そして表向きは清廉潔白な好青年としてアウグストは成長した。

　王族は基本醜い人間は少ない。何故ならその権力を使って美女を娶るからである。
そして能力的には特に劣っていた訳でもないので外部からは優秀な王子と概ね見られていた。

　アウグストに関しての危機と云えば王立学院に入学して一年がたつ頃の事件だ。
ある貴族令嬢が亡くなったのだ。
王太子に関係した事で自殺したのだろうと噂されているが真実はわからない。
その令嬢の実家が何も云わず黙していたからだ。
それなりに有力な貴族が娘が亡くなったのに原因も探らず誰を責めるでもない所が王族とのトラブルを連想させたのだった。

　当のアウグストと云えば表面上も内面も何も変わらなかった。
なぜなら自分は何をしても基本的に許される立場にある。
そして実際その通りであった。
その後もアウグストは美しい一部の貴族令嬢相手に関係を噂されつつも表面上は問題なく過ごしていた。

　アウグストが最上級生になって生徒会長の役に付いた時にエヴァリーナが入学して来た。
銀色の髪を靡かせて澄み切った青色の目を持つ絶世の美少女は当然の様にアウグストの目に留まった。
頭頂部に余計な装飾が無いシンプルな髪留めがあったが寧ろ美しさを際立たせていた。

　入学して初めての考査でエヴァリーナは学年一位を当然の様に取った。
アウグストはそれを理由に彼女を生徒会に誘った。
誘ったと云っても王族から声を掛ければ半強制とさほど変わらない。
女を知り尽くした１８のアウグストがエヴァリーナに柄にもなく一目ぼれであった。


（あの女を抱いて思う存分汚してやりたい）


　あの女は果たしてどの様な顔で喘ぐのか。
女性が見惚れる好青年の顔の下でアウグストは止めどなく妄想を膨らませた。
脳裏でエヴァリーナを一糸纏わぬ裸にして思うままに蹂躙する。
アウグストは自分が卒業する頃にはエヴァリーナと婚約者として縁を結ぶつもりであった。