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単細胞にも程がある
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色々と濃い一日だった……。
屋敷に帰って夕食後、寛いでいた時間に私は今日の出来事を思い返していた。
自宅の食事は基本かなり良くなってきている。
普通に学園の高級メニューレベルと変わらない。
私の住む侯爵家別邸(元従業員用旧宿舎)の使用人も気付けば入れ替わっていた。
王家の威光にひれ伏して父達が食事と同じく私に気を使い始めたのだろうか。
私を嘲って見下していた侍女達と違って、侍女にしては皆やたらと品がいい。
こんな屋敷にこんな人材がいたのかな?とも思ったが真偽は確かめようもない。
危害を加えられなければどうでもいいと思う私のハードルが低いのかもしれない。
今までのフリーダの扱いが酷かったから。
『げふ~……うまかった。』
リオが私のベッドのど真ん中でヘソ天になっていた。
明らかに胃が飛び出ている。どれだけ食べるんだろう、この妖精は。
『あなた、学園でもかなり食べてる筈じゃない。
あの食べた物はどこに消えているの?』
『知らないね。そんな事。』
『……あまり殿下に食べ物をねだらないでほしいんだけど。恥ずかしいし。』
『いいだろ。アイツ、うまい物沢山食わせてくれるし。』
そう言って悪びれずにリオは答える。
一度身バレしてしまったリオは殿下達の前で姿を隠す事を止めてしまった。
最近私達は恐れ多い事に殿下の昼食に同席させていただいている。
殿下がこの食い意地の張った妖精を気に入ってしまったからだった。
尤も動物の連れ込み禁止の規則上、リオが食堂で食べる訳にはいかない。
だから恐れ多くも生徒会室にこっそり食事を運んで頂いている訳だった。
生徒会メンバーの方々も最近一緒に食事をするのが日課になってしまっていた。
食事的にはありがたいが緊張が尽きない。
『それにしても今日、妹の奴凄い目でお前を見てたな。』
『そうね。視線で殺せるなら殺されていたわね、あれは。』
『なら、本当に殺されないように気を付けないとな。』
『そこまで考えるかな。だとしたら、後先考えなしの単細胞にも程があるわね。』
この会話は冗談のつもりだった。
盛りだくさんの一日はまだ終わっていなかったのだ。
就寝中の私はリオの小さい手で頬をぺちぺち叩かれた。
強制的に起こされた私は不機嫌な声を出す。
『何よ、まだ朝じゃないでしょ……。』
『おい、何か騒ぎが起きているぞ。』
『えぇ……何よ、もう。』
確かに無視して寝るには無理なくらいの声が聞こえる。
肩に軽く一枚羽織って様子を見に自分の部屋を出た。
階下から聞こえて来ていたので一階に降りる。
すると新入りの男性使用人が誰かを床に組み伏せているのが目に入った。
床に押さえつけられている人物はドロテアだった。
手に光る物が見えて完全に眠気が吹っ飛ぶ。
今日のドロテアの視線を思い出して全てを察した。
冗談が本当になった。
学園では人が離れて孤独になり、私から奪った筈の婚約者には捨てられる。
全ての元凶は私だと逆恨みしたのだろう。
怒りが頂点に達してとうとう私に直接手を下しに来たらしかった。
ドロテアは私の姿を視界にとらえると大声で喚き始めた
「あんたぁっ! よくも!」
「ドロテア……。」
「あんたのせいでぇっ!」
「……あの男に捨てられたって?」
「あんたが言うなぁっ! あんたがおかしくなってから私の人生は滅茶苦茶よ!」
甲高い声というより発言の中身に私の不快神経が刺激される。
私は一段声のトーンを下げた。
「……あなた達家族に虐げられるのが私の正常な状態だと言いたい訳?」
死んでしまった本当のフリーダの無念の分、怒りを込めて言葉を投げつける。
意味が無い事だと思っても言わずにはいられなかった。
「ドロテア。あなたには想像力が無い。」
「はぁ!?」
「不思議に思うのは、なぜ自分が人にした事を自分に置き換えて考える事が出来ない
のかという事よ。」
「何を……。」
「私が気に食わないから虐げる。もし自分がされたらどう感じるのか。
そういう最低限の想像力を持っていれば自分の行いが正しいかどうかわかるはず。
でも貴方にはそれが出来ない。普通の人なら出来る事なのに。
つまりおかしいのは貴方よ。」
「偉そうに言うな! あんたは私を見下ろす様な立場じゃないのよっ!」
「……まぁ今更言っても意味が無いし、どうせ貴方には永久に理解できないわね。
本当に頭が可哀そうな子。獣と変わらないわ。」
「っ!」
「フリーダ様、就寝中にお騒がせしてしまって申し訳ございません。
この痴れ者はこちらで対処致します。」
一番年配の使用人が口を重々しく開く。
気が付くと侍女や使用人が五人程私の周りに居た。皆、知らない顔だ。
私寄りの人材がこの屋敷にこんなにいたのだろうかと流石に不思議に思う。
「……任せていいのかしら。どうするつもり?」
「聖女殺害容疑で逮捕します。牢獄行きですね。」
「逮捕? あなた達もしかして。」
「王太子殿下の命で貴方様の警護を仰せ使っておりました。」
「ええっ!?」
屋敷に帰って夕食後、寛いでいた時間に私は今日の出来事を思い返していた。
自宅の食事は基本かなり良くなってきている。
普通に学園の高級メニューレベルと変わらない。
私の住む侯爵家別邸(元従業員用旧宿舎)の使用人も気付けば入れ替わっていた。
王家の威光にひれ伏して父達が食事と同じく私に気を使い始めたのだろうか。
私を嘲って見下していた侍女達と違って、侍女にしては皆やたらと品がいい。
こんな屋敷にこんな人材がいたのかな?とも思ったが真偽は確かめようもない。
危害を加えられなければどうでもいいと思う私のハードルが低いのかもしれない。
今までのフリーダの扱いが酷かったから。
『げふ~……うまかった。』
リオが私のベッドのど真ん中でヘソ天になっていた。
明らかに胃が飛び出ている。どれだけ食べるんだろう、この妖精は。
『あなた、学園でもかなり食べてる筈じゃない。
あの食べた物はどこに消えているの?』
『知らないね。そんな事。』
『……あまり殿下に食べ物をねだらないでほしいんだけど。恥ずかしいし。』
『いいだろ。アイツ、うまい物沢山食わせてくれるし。』
そう言って悪びれずにリオは答える。
一度身バレしてしまったリオは殿下達の前で姿を隠す事を止めてしまった。
最近私達は恐れ多い事に殿下の昼食に同席させていただいている。
殿下がこの食い意地の張った妖精を気に入ってしまったからだった。
尤も動物の連れ込み禁止の規則上、リオが食堂で食べる訳にはいかない。
だから恐れ多くも生徒会室にこっそり食事を運んで頂いている訳だった。
生徒会メンバーの方々も最近一緒に食事をするのが日課になってしまっていた。
食事的にはありがたいが緊張が尽きない。
『それにしても今日、妹の奴凄い目でお前を見てたな。』
『そうね。視線で殺せるなら殺されていたわね、あれは。』
『なら、本当に殺されないように気を付けないとな。』
『そこまで考えるかな。だとしたら、後先考えなしの単細胞にも程があるわね。』
この会話は冗談のつもりだった。
盛りだくさんの一日はまだ終わっていなかったのだ。
就寝中の私はリオの小さい手で頬をぺちぺち叩かれた。
強制的に起こされた私は不機嫌な声を出す。
『何よ、まだ朝じゃないでしょ……。』
『おい、何か騒ぎが起きているぞ。』
『えぇ……何よ、もう。』
確かに無視して寝るには無理なくらいの声が聞こえる。
肩に軽く一枚羽織って様子を見に自分の部屋を出た。
階下から聞こえて来ていたので一階に降りる。
すると新入りの男性使用人が誰かを床に組み伏せているのが目に入った。
床に押さえつけられている人物はドロテアだった。
手に光る物が見えて完全に眠気が吹っ飛ぶ。
今日のドロテアの視線を思い出して全てを察した。
冗談が本当になった。
学園では人が離れて孤独になり、私から奪った筈の婚約者には捨てられる。
全ての元凶は私だと逆恨みしたのだろう。
怒りが頂点に達してとうとう私に直接手を下しに来たらしかった。
ドロテアは私の姿を視界にとらえると大声で喚き始めた
「あんたぁっ! よくも!」
「ドロテア……。」
「あんたのせいでぇっ!」
「……あの男に捨てられたって?」
「あんたが言うなぁっ! あんたがおかしくなってから私の人生は滅茶苦茶よ!」
甲高い声というより発言の中身に私の不快神経が刺激される。
私は一段声のトーンを下げた。
「……あなた達家族に虐げられるのが私の正常な状態だと言いたい訳?」
死んでしまった本当のフリーダの無念の分、怒りを込めて言葉を投げつける。
意味が無い事だと思っても言わずにはいられなかった。
「ドロテア。あなたには想像力が無い。」
「はぁ!?」
「不思議に思うのは、なぜ自分が人にした事を自分に置き換えて考える事が出来ない
のかという事よ。」
「何を……。」
「私が気に食わないから虐げる。もし自分がされたらどう感じるのか。
そういう最低限の想像力を持っていれば自分の行いが正しいかどうかわかるはず。
でも貴方にはそれが出来ない。普通の人なら出来る事なのに。
つまりおかしいのは貴方よ。」
「偉そうに言うな! あんたは私を見下ろす様な立場じゃないのよっ!」
「……まぁ今更言っても意味が無いし、どうせ貴方には永久に理解できないわね。
本当に頭が可哀そうな子。獣と変わらないわ。」
「っ!」
「フリーダ様、就寝中にお騒がせしてしまって申し訳ございません。
この痴れ者はこちらで対処致します。」
一番年配の使用人が口を重々しく開く。
気が付くと侍女や使用人が五人程私の周りに居た。皆、知らない顔だ。
私寄りの人材がこの屋敷にこんなにいたのだろうかと流石に不思議に思う。
「……任せていいのかしら。どうするつもり?」
「聖女殺害容疑で逮捕します。牢獄行きですね。」
「逮捕? あなた達もしかして。」
「王太子殿下の命で貴方様の警護を仰せ使っておりました。」
「ええっ!?」
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