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そんなことを言われても
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「陛下、お聞きしても宜しいでしょうか」
「よい。何だ?」
「では……婚約破棄に関する私の立場への御心つかいには感謝致します。
しかし、それだけが理由で陛下が私を側妃に指名する筈はない筈です。
本当の理由をお教え頂きたいのですが」
王太子の面倒を見るという事だって私より相応しく優秀な者は沢山いるはずだ。
そして側妃がその役割を担うというのはどう考えても筋違いだ。
一体、私の側妃入りにはどういう意図が込められているのか。
「其方を側妃とした理由か。大体の所は想像がつくのではないか?」
「もしや、第二王子の件ですか?」
「そうだな。確かに理由の一つだ」
そして陛下は口を開いた。
第二王子を望む臣下に対する方便としての第三側妃だと。
これも以前私が想像した通りで間違いなかったらしい。
陛下が側妃を望んだ訳では無く臣下に強く求められたという訳だ。
「臣下達は二人目の王子を望むのだが、王太子が成人するまであとわずか。
まだ王位を継いでいない段階でもいずれ王太子が子を為せばそれこそ必要無い事だ。
国王としてそれまでの数年、万が一の備えが無いと云われれば耳が痛いが」
「先程『一つ』と仰せになりましたが、他にもあるのですか」
「うむ。それこそ、その王太子の件だ」
「それはどういう……」
「話途中だったな。実は王太子は女性を苦手としておる」
「……」
意外な言葉に思わず黙ってしまった。
王太子殿下には王妃殿下はいないけど乳母なり側仕えの侍女なり女性はいるだろう。
(そんな事ってあるのかしら。思春期特有の拗らせとか? )
まさか男色という訳では無いだろう。
失礼な事は聞けないので私は黙って陛下の次の言葉を待つ。
「女性との接触を出来る限り避けている様だ」
「え?」
「要するにあ奴が心を許す女性はかつての乳母か血のつながった身内、妹くらいしかいないのだ。
それ以外は寄せ付けない。唯一の王子としては不味い」
(どういう種類のモノか知らないけど、唯一の王子が女嫌い……)
「あ奴は幼くして母親を亡くしたのでな。加えて私が王太子として教育を厳しくしすぎたのか女性に甘える事を知らん。
元々少し女性に対して厳しい性格だったが輪をかける出来事があってな……。多分遠因となったかもしれん」
「どの様な事が?」
「知っておるだろう。二年前に隣国の王太子が亡くなった事を」
「はい」
結構当時話題になったから知っている。
確か臣下達の権力争いの結果、王太子の不幸にまで発展してしまった件だ。
他国とはいえ王族の動向は民草の関心を広く集める。
「ですが、その事が王太子殿下にどういう関係があるのでしょう」
「隣国の王太子とは年も近く仲が良くてな。その王太子が殺されたのは衝撃だったのだろう。
弑逆者が敵対勢力の差し向けた女だったときてはな。」
(そうなんだ……そこまでは知らなかったわ)
隣国はどちらかというと小国で我が国の属国に近い。
ほぼこちらに軍事力を頼っている事情があるからで、一番安全な友好国だ。
「公には弑逆者の事は詳しく知られていない。しかし、無論王族であるエルヴィンは知っている。
そのせいか女性という存在をますます疎ましく思うようになったらしくてな」
「そうだったのですか……」
「臣下が二人目の王子を望む声も大きくなった理由でもある」
「なるほど」
寧ろ将来の覇権争いの余計な種を巻くような気もしないでもない。
しかし、事情は理解できた。
要するに陛下が私を側妃に指名した理由は三つ。
第一にうるさい臣下たちの目くらましに三人目の側妃をとる必要があった。
第二に女嫌いの王太子の女性嫌いを少しでも払しょくさせる。
第三に親類縁者に婚約破棄されて立場を台無しにされた令嬢を救ってやる。
多分二・三番目はついでなのだろうけど、事実私も救われた。
恩に着せることもできるからこんな依頼もしやすいわけだ。
「では、私は王太子殿下にこれからどの様に接すればいいのでしょうか」
「そこはそなたに任せる。いわばこれがそなたの仕事だ」
「……」
(色々気を使っている様でいて肝心なところはノープランですか……)
清々しいくらいの丸投げだ。
臣下に面目を保つ為に表面上私を側妃に迎えたけど折角だから利用出来る者は利用しようという事か。
もしかしたら陛下にとって王太子の女嫌いの件は解決したら儲けものくらいなのかもしれない。
多分殿下の事は年頃の男特有の拗らせ程度にしか考えてないのだろう。
「同じ王族で年齢も近い立場としてあ奴の力になってほしい。其方には期待している」
(男性不信の私に王太子の女嫌いを治せと仰せですか……)
陛下は私の複雑な心の内までは完全に理解していない。
突然そんな事を言われてもどうすれいいのか。
こうして本来男女の営みをしている筈の初夜は全く色気のない話し合いをして終了した。
「よい。何だ?」
「では……婚約破棄に関する私の立場への御心つかいには感謝致します。
しかし、それだけが理由で陛下が私を側妃に指名する筈はない筈です。
本当の理由をお教え頂きたいのですが」
王太子の面倒を見るという事だって私より相応しく優秀な者は沢山いるはずだ。
そして側妃がその役割を担うというのはどう考えても筋違いだ。
一体、私の側妃入りにはどういう意図が込められているのか。
「其方を側妃とした理由か。大体の所は想像がつくのではないか?」
「もしや、第二王子の件ですか?」
「そうだな。確かに理由の一つだ」
そして陛下は口を開いた。
第二王子を望む臣下に対する方便としての第三側妃だと。
これも以前私が想像した通りで間違いなかったらしい。
陛下が側妃を望んだ訳では無く臣下に強く求められたという訳だ。
「臣下達は二人目の王子を望むのだが、王太子が成人するまであとわずか。
まだ王位を継いでいない段階でもいずれ王太子が子を為せばそれこそ必要無い事だ。
国王としてそれまでの数年、万が一の備えが無いと云われれば耳が痛いが」
「先程『一つ』と仰せになりましたが、他にもあるのですか」
「うむ。それこそ、その王太子の件だ」
「それはどういう……」
「話途中だったな。実は王太子は女性を苦手としておる」
「……」
意外な言葉に思わず黙ってしまった。
王太子殿下には王妃殿下はいないけど乳母なり側仕えの侍女なり女性はいるだろう。
(そんな事ってあるのかしら。思春期特有の拗らせとか? )
まさか男色という訳では無いだろう。
失礼な事は聞けないので私は黙って陛下の次の言葉を待つ。
「女性との接触を出来る限り避けている様だ」
「え?」
「要するにあ奴が心を許す女性はかつての乳母か血のつながった身内、妹くらいしかいないのだ。
それ以外は寄せ付けない。唯一の王子としては不味い」
(どういう種類のモノか知らないけど、唯一の王子が女嫌い……)
「あ奴は幼くして母親を亡くしたのでな。加えて私が王太子として教育を厳しくしすぎたのか女性に甘える事を知らん。
元々少し女性に対して厳しい性格だったが輪をかける出来事があってな……。多分遠因となったかもしれん」
「どの様な事が?」
「知っておるだろう。二年前に隣国の王太子が亡くなった事を」
「はい」
結構当時話題になったから知っている。
確か臣下達の権力争いの結果、王太子の不幸にまで発展してしまった件だ。
他国とはいえ王族の動向は民草の関心を広く集める。
「ですが、その事が王太子殿下にどういう関係があるのでしょう」
「隣国の王太子とは年も近く仲が良くてな。その王太子が殺されたのは衝撃だったのだろう。
弑逆者が敵対勢力の差し向けた女だったときてはな。」
(そうなんだ……そこまでは知らなかったわ)
隣国はどちらかというと小国で我が国の属国に近い。
ほぼこちらに軍事力を頼っている事情があるからで、一番安全な友好国だ。
「公には弑逆者の事は詳しく知られていない。しかし、無論王族であるエルヴィンは知っている。
そのせいか女性という存在をますます疎ましく思うようになったらしくてな」
「そうだったのですか……」
「臣下が二人目の王子を望む声も大きくなった理由でもある」
「なるほど」
寧ろ将来の覇権争いの余計な種を巻くような気もしないでもない。
しかし、事情は理解できた。
要するに陛下が私を側妃に指名した理由は三つ。
第一にうるさい臣下たちの目くらましに三人目の側妃をとる必要があった。
第二に女嫌いの王太子の女性嫌いを少しでも払しょくさせる。
第三に親類縁者に婚約破棄されて立場を台無しにされた令嬢を救ってやる。
多分二・三番目はついでなのだろうけど、事実私も救われた。
恩に着せることもできるからこんな依頼もしやすいわけだ。
「では、私は王太子殿下にこれからどの様に接すればいいのでしょうか」
「そこはそなたに任せる。いわばこれがそなたの仕事だ」
「……」
(色々気を使っている様でいて肝心なところはノープランですか……)
清々しいくらいの丸投げだ。
臣下に面目を保つ為に表面上私を側妃に迎えたけど折角だから利用出来る者は利用しようという事か。
もしかしたら陛下にとって王太子の女嫌いの件は解決したら儲けものくらいなのかもしれない。
多分殿下の事は年頃の男特有の拗らせ程度にしか考えてないのだろう。
「同じ王族で年齢も近い立場としてあ奴の力になってほしい。其方には期待している」
(男性不信の私に王太子の女嫌いを治せと仰せですか……)
陛下は私の複雑な心の内までは完全に理解していない。
突然そんな事を言われてもどうすれいいのか。
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