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「本日はご足労いただき、誠にありがとうございます、シリル様」
「いえ、構いません。ヴァレリア様にはご恩がありますから」
ガイアにあげた眼鏡とは別の眼鏡を掛けたシリルにはヴァイオレット家に来てくれた。本当はヴァレリアが城でこっそりする予定だったのだが、来てくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらった。
今回の目的はクローナと話し合い、城側に協力者……シリルを取り込み、王室の図書館から情報を得られるようにしたいのだ。
研究所の調査だは限界突破の画面に出て来た素材…特に八個目からの素材が発見できない。だが、もしかしたら王室の図書館や禁書書庫にはあるかもしれない。
それを調べるためにシリルに手伝ってもらう。ヴァレリアでは城にそんな頻繁に出入りできない……いや、する訳にもいかない。公爵とはいえ部外者だ。入るには相応の許可がいる――つまり、我が儘を融通してもらうのは王族に借りを作るということだ。
アレンとの婚約だけは避けなければいけない。
「その、お辛いとは思うのですが、眼鏡を外して頂けるでしょうか。できれば、誰にも聞かれたくない話なのです」
「……分かりました」
シリルの瞳がプラチナに煌めいたのを見届けて、ヴァレリアは心の中で語り出す。この前、いずれ話すと約束した内容を。
ヴァレリアは封印の解かれたベネディエッタに乗っ取られて、聖女とシリル達に倒されている。その度に死に戻っているという設定でゲーム本編のストーリーを話した。
四人のルートを語り、五度目はでっち上げる。アレンの婚約者として悪いことをしないよう勤めたが、何故か犯人と疑われ無我夢中で逃げているとベネディエッタの死亡ルートだ。こんな長い話をシリルは黙って聞いてくれた。
(今回はアレン様とは婚約せず、冒険者として早々に国を離れたいと思っています。私が死なないために)
「それは……難しいだろう」
(そう思います。ですが、身を守る術を得るために王妃教育では私生きられません。次回があるとは限りません……それで、シリル様のご助力を頂きたいのです)
ペンで清書したメモ帳を渡す。本編ルートに関わる攻略対象達とライバルの情報を仔細に書き写したものだ。もちろん、シリルについても書いてある。だが、この中身は決して彼らにもその他の誰にも公開しないように厳守してもらう。それがあれば、彼らは来る日に備えなくなってしまうかもしれないからだ。
「すみません、長々と……」
「いや、どちらかと言えば隣の父君の方がやかましかったな」
「それは本当にすみません」
眼鏡を掛けたシリルに、ヴァレリアは再び頭を下
げた。
「いえ、構いません。ヴァレリア様にはご恩がありますから」
ガイアにあげた眼鏡とは別の眼鏡を掛けたシリルにはヴァイオレット家に来てくれた。本当はヴァレリアが城でこっそりする予定だったのだが、来てくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらった。
今回の目的はクローナと話し合い、城側に協力者……シリルを取り込み、王室の図書館から情報を得られるようにしたいのだ。
研究所の調査だは限界突破の画面に出て来た素材…特に八個目からの素材が発見できない。だが、もしかしたら王室の図書館や禁書書庫にはあるかもしれない。
それを調べるためにシリルに手伝ってもらう。ヴァレリアでは城にそんな頻繁に出入りできない……いや、する訳にもいかない。公爵とはいえ部外者だ。入るには相応の許可がいる――つまり、我が儘を融通してもらうのは王族に借りを作るということだ。
アレンとの婚約だけは避けなければいけない。
「その、お辛いとは思うのですが、眼鏡を外して頂けるでしょうか。できれば、誰にも聞かれたくない話なのです」
「……分かりました」
シリルの瞳がプラチナに煌めいたのを見届けて、ヴァレリアは心の中で語り出す。この前、いずれ話すと約束した内容を。
ヴァレリアは封印の解かれたベネディエッタに乗っ取られて、聖女とシリル達に倒されている。その度に死に戻っているという設定でゲーム本編のストーリーを話した。
四人のルートを語り、五度目はでっち上げる。アレンの婚約者として悪いことをしないよう勤めたが、何故か犯人と疑われ無我夢中で逃げているとベネディエッタの死亡ルートだ。こんな長い話をシリルは黙って聞いてくれた。
(今回はアレン様とは婚約せず、冒険者として早々に国を離れたいと思っています。私が死なないために)
「それは……難しいだろう」
(そう思います。ですが、身を守る術を得るために王妃教育では私生きられません。次回があるとは限りません……それで、シリル様のご助力を頂きたいのです)
ペンで清書したメモ帳を渡す。本編ルートに関わる攻略対象達とライバルの情報を仔細に書き写したものだ。もちろん、シリルについても書いてある。だが、この中身は決して彼らにもその他の誰にも公開しないように厳守してもらう。それがあれば、彼らは来る日に備えなくなってしまうかもしれないからだ。
「すみません、長々と……」
「いや、どちらかと言えば隣の父君の方がやかましかったな」
「それは本当にすみません」
眼鏡を掛けたシリルに、ヴァレリアは再び頭を下
げた。
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