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63話 地龍の呼び声
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「ヴォルグ、発信機」
「えっ? ちょっと待て――」
「レグルス殿、彼を無能だというのならば、地龍が今現在まで展開していた神域をどうやって外したかを教えていただけないだろうか。私は少なくとも、地龍に引導を渡したか、あるいは地龍が認めるほどの何かをなし得たからだと思うが、貴方からもご意見を聞かせていただきたい」
レグルスは顔を顰めるだけで返答がない。
「お答えを」
再度要求する。当然のように何も言い返さない。
ヴォルグが発信機の反応がここら辺にあると声を上げる。
「隊長、足下!!」
ルクセンの足下から黄金色の輝きが空へと昇る。辺りを確認しても光に包まれているのはアルフレッドだけらしい。
次いで、莫大な量の魔力反応を足下から感じる。エマが地下で戦っているのだろうか?
ヴォルグがアルフレッドへ手を伸ばすが、光の壁に阻まれて届かない。
「おい、大丈夫か?!」
「先に行く。土の導きに従え、そうすれば地龍がおわす神殿の最下層へ招き入れてくれるだろう」
「神殿の扉が開くってことか?」
「あぁ」
地面に足がすっと吸い込まれていく。地面に引きずり込まれたエマの見た世界とは、まったく違うだろう。
視界は目に優しい黄金色……――地脈の中だ。
幾度となく見ても、美しく金の素粒子の帯が流れている。体が軽い。優しくて温かく、心地よい場所だ。
この中にずっといられたら……溶けて消えてしまえたら、どれだけ楽だっただろうか。
だから、ヴォルグにも腑抜けと言われるのだ。
見下ろしている先に、暗い穴が開く。そこには、黒い肌のドラゴン。顔を上向け、明らかにアルフレッドを見上げている。
その彼の体が、白い光に包まれる。
(浄化、しているのか……?)
わらわらと、黒いローブの人間達がドラゴンに集まると、ドラゴンが邪魔な虫を払うように尾で払い飛ばした。
穴から体が放り出される。再び重力に縛られて、体が地面へと引き付けられる。
変わり果てた姿のガイア。
それでも、あの龍脈と同じ黄金色の瞳が、彼で間違いないと告げている。
着地地点は、彼の前。
《久しぶりだな、アルフレッド。またこの地に帰ってきていたんだな》
「お久しぶりです、ガイア様」
《様はいらないと言っているだろう。相変わらず固いやつだ》
「貴様、何者だ?!」
臨戦態勢に入った黒ローブ集団に、アルフレッドは「お初にお目にかかる」と向き直る。
彼らは『ファフニール』であるという目印の黒い龍が彫金されたペンダントをぶら下げていた。
「スキル特務部隊の隊長をしている、アルフレッド・リースナーだ。これより、貴殿ら『ファフニール』を冒険者暴行事件並びに冒険者失踪事件の主犯として拘束する」
《エマ、出てきなさい》
そうガイアが言えば、光り続けてきた白い光が止んだ。
先程まで黒黒としていた鱗が焦げ茶色が混ざっているように見えた。
口を開けながら天井へ上向ける。
暗闇がただ広がっているだけだった空間は、壁中の模様を這うように金色の光りが這っていく。明かりはない。されど、黄金色の光だけで灯された神殿が、元来の神聖さを取り戻す。
そして、ガイアが開けっ放しだった口から、人影が飛び出してくる。その瞬間、体がざわりと怖気を覚える。
空中に浮いたままの、彼女を見上げる。
確かに、エマだ。だがその体からは、異様なほどの圧力を感じる。
下手をすれば一瞬で食われるような、そんな気がした。
「えっ? ちょっと待て――」
「レグルス殿、彼を無能だというのならば、地龍が今現在まで展開していた神域をどうやって外したかを教えていただけないだろうか。私は少なくとも、地龍に引導を渡したか、あるいは地龍が認めるほどの何かをなし得たからだと思うが、貴方からもご意見を聞かせていただきたい」
レグルスは顔を顰めるだけで返答がない。
「お答えを」
再度要求する。当然のように何も言い返さない。
ヴォルグが発信機の反応がここら辺にあると声を上げる。
「隊長、足下!!」
ルクセンの足下から黄金色の輝きが空へと昇る。辺りを確認しても光に包まれているのはアルフレッドだけらしい。
次いで、莫大な量の魔力反応を足下から感じる。エマが地下で戦っているのだろうか?
ヴォルグがアルフレッドへ手を伸ばすが、光の壁に阻まれて届かない。
「おい、大丈夫か?!」
「先に行く。土の導きに従え、そうすれば地龍がおわす神殿の最下層へ招き入れてくれるだろう」
「神殿の扉が開くってことか?」
「あぁ」
地面に足がすっと吸い込まれていく。地面に引きずり込まれたエマの見た世界とは、まったく違うだろう。
視界は目に優しい黄金色……――地脈の中だ。
幾度となく見ても、美しく金の素粒子の帯が流れている。体が軽い。優しくて温かく、心地よい場所だ。
この中にずっといられたら……溶けて消えてしまえたら、どれだけ楽だっただろうか。
だから、ヴォルグにも腑抜けと言われるのだ。
見下ろしている先に、暗い穴が開く。そこには、黒い肌のドラゴン。顔を上向け、明らかにアルフレッドを見上げている。
その彼の体が、白い光に包まれる。
(浄化、しているのか……?)
わらわらと、黒いローブの人間達がドラゴンに集まると、ドラゴンが邪魔な虫を払うように尾で払い飛ばした。
穴から体が放り出される。再び重力に縛られて、体が地面へと引き付けられる。
変わり果てた姿のガイア。
それでも、あの龍脈と同じ黄金色の瞳が、彼で間違いないと告げている。
着地地点は、彼の前。
《久しぶりだな、アルフレッド。またこの地に帰ってきていたんだな》
「お久しぶりです、ガイア様」
《様はいらないと言っているだろう。相変わらず固いやつだ》
「貴様、何者だ?!」
臨戦態勢に入った黒ローブ集団に、アルフレッドは「お初にお目にかかる」と向き直る。
彼らは『ファフニール』であるという目印の黒い龍が彫金されたペンダントをぶら下げていた。
「スキル特務部隊の隊長をしている、アルフレッド・リースナーだ。これより、貴殿ら『ファフニール』を冒険者暴行事件並びに冒険者失踪事件の主犯として拘束する」
《エマ、出てきなさい》
そうガイアが言えば、光り続けてきた白い光が止んだ。
先程まで黒黒としていた鱗が焦げ茶色が混ざっているように見えた。
口を開けながら天井へ上向ける。
暗闇がただ広がっているだけだった空間は、壁中の模様を這うように金色の光りが這っていく。明かりはない。されど、黄金色の光だけで灯された神殿が、元来の神聖さを取り戻す。
そして、ガイアが開けっ放しだった口から、人影が飛び出してくる。その瞬間、体がざわりと怖気を覚える。
空中に浮いたままの、彼女を見上げる。
確かに、エマだ。だがその体からは、異様なほどの圧力を感じる。
下手をすれば一瞬で食われるような、そんな気がした。
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