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46話 人手不足のスキル特務部隊
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スキル特務部隊が人手不足なんだと切り出された。
隊員はスキルの能力がメインで、入隊年齢制限がない。今は8歳の子供も隊員として所属している。国内限定だがスキル特務部隊は遠方にも出張できるという。
だがエマの意思を無視して強制することはしたくない。冒険者ギルドに残るか、スキル特務部隊で働くかはエマの自由。そして2年後、エマが成人した後もだ。
2年間、ロイアの町限定で冒険者として活動するか、まだ出張があるスキル特務部隊での仕事を引き受けるか。ギリギリ自由なのはスキル特務部隊の方だろうか。しかし、そんなお願いされるほど仕事ができるとは思えないのも事実だった。何故なのか、理由を聞いてみた。
「先程、スキル特務部隊では特殊スキル持ちの犯罪者を預かっていると言ったのを、覚えているだろうか。あそこは、犯罪者達がスキル特務部隊員として働く代わりに特別待遇として軟禁生活を送っている。有事の際、我々の協力者として活動できるように」
ただ、それには手間と金がかかる。彼らの価値は正直スキルにしかないが、スキルが優秀だからと付け上がった犯罪者が多くいる。そして、そんな連中が生きるのに多額の税金が使われている。だが待遇が待遇なだけに、犯罪者達の中にはスキルの希少性や優位性を鼻にかけるばかりで、心を入れ替えることも、贖罪もしようとしない。
「国民に迷惑だ。更生の余地がある者と分別し、他は犯罪奴隷として無期懲役の農業生産業務に就かせたい。君にはその犯罪者達からスキルを奪い取ってほしい。彼らの心の拠り所である『希少スキル保持者』程度の価値観を、まとめて」
無感情に光る紫水晶の瞳が、エマを捉える。
「でも、『無効化』スキル持ちの人がいたら、私に集めても当人に返却されてしまいます。倉庫の鍵は、厳重ではありません」
「君を倉庫として扱いたいわけではないが、確かに、我々は『無効化スキル』持ちの人間を引き入れようと保持者を捜索している」
「私は、それまでの繋ぎに?」
「いや、君のスキル効果の持続時間次第では、君のスキルの方が無効化よりよほど強力だ。君のその能力は、他者からすれば『封印』と呼称しても過言ではない」
ただ、とアルフレッドは続ける。
「私からは、冒険者ギルドの庇護下に入ることを推奨する」
「えっ」「おい!」
アルフレッドの肩をヴォルグが掴んだ。それを、彼も一瞥するだけ。
メイアの町を離れられないが、冒険者として知識を蓄えるなら冒険者ギルドの方が良い。ここには、百花繚乱が経営する宿泊施設があるから、そこなら先輩冒険者達と交流しながら学べる。
一方でスキル特務部隊は王国に所属している。決まり事、貴族のいざこざ、他部隊との無駄な言い争い……と、今、彼らが直面しているのであろう、職場の関係性が詳細に語られた。
「現実、エマ嬢はエルフィールド家の人間から離れ、法律上もエルフィールド家の人間ではない。とはいえ、他者からすればあなたはエルフィールド家の人間だ。貴族の肥溜めである国に所属すれば、やり玉に上げられるだろう。しかし、スキル特務部隊を選択した以上は2年間、耐えてもらわねばならない」
(肥溜め……)「それは、私のスキルの利用価値しかないってことですね?」
「それは我々も同様だ。私達はスキルがなくなればただの人であることを、よく理解しているつもりだ。だからこそ、剣技や魔法など、別の能力も磨いている……――他に、質問は」
「あの、リースナー様は異世界人ですか?」
北海道……どう聞いても舞が住んでいた場所の名前だ。
彼の瞳はじっとエマを見据える。
「違う。私自身はこの世界の生まれだ。ただ、異世界人の知識を引き継いでいるに過ぎない」
(異世界人の知識を、引き継いでいる……)
ほかに質問はないかと問われたがエマは首を振った。
アルフレッド達スキル特務部隊を含めた騎士団がカルト教団『ファフニール』を捕らえるまでに答えを出してほしいと旨を告げて立ち上がった。
アルフレッドが頭を下げて部屋を後にする。その後を追うヴォルグは「考えておいて」と軽い調子で手を振って去って行った。
隊員はスキルの能力がメインで、入隊年齢制限がない。今は8歳の子供も隊員として所属している。国内限定だがスキル特務部隊は遠方にも出張できるという。
だがエマの意思を無視して強制することはしたくない。冒険者ギルドに残るか、スキル特務部隊で働くかはエマの自由。そして2年後、エマが成人した後もだ。
2年間、ロイアの町限定で冒険者として活動するか、まだ出張があるスキル特務部隊での仕事を引き受けるか。ギリギリ自由なのはスキル特務部隊の方だろうか。しかし、そんなお願いされるほど仕事ができるとは思えないのも事実だった。何故なのか、理由を聞いてみた。
「先程、スキル特務部隊では特殊スキル持ちの犯罪者を預かっていると言ったのを、覚えているだろうか。あそこは、犯罪者達がスキル特務部隊員として働く代わりに特別待遇として軟禁生活を送っている。有事の際、我々の協力者として活動できるように」
ただ、それには手間と金がかかる。彼らの価値は正直スキルにしかないが、スキルが優秀だからと付け上がった犯罪者が多くいる。そして、そんな連中が生きるのに多額の税金が使われている。だが待遇が待遇なだけに、犯罪者達の中にはスキルの希少性や優位性を鼻にかけるばかりで、心を入れ替えることも、贖罪もしようとしない。
「国民に迷惑だ。更生の余地がある者と分別し、他は犯罪奴隷として無期懲役の農業生産業務に就かせたい。君にはその犯罪者達からスキルを奪い取ってほしい。彼らの心の拠り所である『希少スキル保持者』程度の価値観を、まとめて」
無感情に光る紫水晶の瞳が、エマを捉える。
「でも、『無効化』スキル持ちの人がいたら、私に集めても当人に返却されてしまいます。倉庫の鍵は、厳重ではありません」
「君を倉庫として扱いたいわけではないが、確かに、我々は『無効化スキル』持ちの人間を引き入れようと保持者を捜索している」
「私は、それまでの繋ぎに?」
「いや、君のスキル効果の持続時間次第では、君のスキルの方が無効化よりよほど強力だ。君のその能力は、他者からすれば『封印』と呼称しても過言ではない」
ただ、とアルフレッドは続ける。
「私からは、冒険者ギルドの庇護下に入ることを推奨する」
「えっ」「おい!」
アルフレッドの肩をヴォルグが掴んだ。それを、彼も一瞥するだけ。
メイアの町を離れられないが、冒険者として知識を蓄えるなら冒険者ギルドの方が良い。ここには、百花繚乱が経営する宿泊施設があるから、そこなら先輩冒険者達と交流しながら学べる。
一方でスキル特務部隊は王国に所属している。決まり事、貴族のいざこざ、他部隊との無駄な言い争い……と、今、彼らが直面しているのであろう、職場の関係性が詳細に語られた。
「現実、エマ嬢はエルフィールド家の人間から離れ、法律上もエルフィールド家の人間ではない。とはいえ、他者からすればあなたはエルフィールド家の人間だ。貴族の肥溜めである国に所属すれば、やり玉に上げられるだろう。しかし、スキル特務部隊を選択した以上は2年間、耐えてもらわねばならない」
(肥溜め……)「それは、私のスキルの利用価値しかないってことですね?」
「それは我々も同様だ。私達はスキルがなくなればただの人であることを、よく理解しているつもりだ。だからこそ、剣技や魔法など、別の能力も磨いている……――他に、質問は」
「あの、リースナー様は異世界人ですか?」
北海道……どう聞いても舞が住んでいた場所の名前だ。
彼の瞳はじっとエマを見据える。
「違う。私自身はこの世界の生まれだ。ただ、異世界人の知識を引き継いでいるに過ぎない」
(異世界人の知識を、引き継いでいる……)
ほかに質問はないかと問われたがエマは首を振った。
アルフレッド達スキル特務部隊を含めた騎士団がカルト教団『ファフニール』を捕らえるまでに答えを出してほしいと旨を告げて立ち上がった。
アルフレッドが頭を下げて部屋を後にする。その後を追うヴォルグは「考えておいて」と軽い調子で手を振って去って行った。
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