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31話 家宅捜索・上

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 案内されたターナーの書斎では、手紙に書かれていた通りのにダイヤルを回せば金庫が開いた。浮気しているメイドの生年月日をキーにするなんて、浮気を公言したかったのか。
 すぐに帳簿も発見に至り、どんどん回収していく。あれだけ証拠が揃っているのだ、今回の仕事は、簡単に終わるだろう。

「行かないって言ってるでしょ!! 私に命令しないで!!」

 開け放ったままのドアから女児の声が聞こえてきた。サニアが、エルフィールド家の次女のアリアだと説明する。随分、元気なお子様だ。

「ターナー様が行方知れずになる前に、アリア様が会っているようなのですが……私達も詳しく聞き出せなくて」
「行きたくねぇー……」
「頑張って下さい」「ファイトー」

 キャシーとユリウスから応援された。ユリウスは特に他人事だ。ヴォルグは盛大な溜息をもらしてから、ぎゃんぎゃん騒いでいるアリアの元へヴォルグは向かう。会話が無理なら記憶を読み取ってとっととトンズラしよう。

 *

 さっきまでぎゃんぎゃん騒いでいたアリアはヴォルグが自分が騎士団の人間であると話せばコロッと態度を変えた。
 しがみついて来るなり、エマは両親を殴っり自分にさえ暴力を振るうような酷い人間だと、悪口三昧。過去にはどれだけエマがアリアに酷い仕打ちをしたことかと悪口三昧。
 数分も保っていないアルカイックスマイルが限界を迎え、ヴォルグはスキルを使って記憶を掘り出す……――見れば見るほど腹の立つ記憶しか流れてこなくて殴り殺してやろうかと思った。ただ、ターナーがマリアエルの衣裳部屋でエマを殴ったのは分かった。

 わざとだが、無理矢理記憶を引き抜くように記憶に干渉されたせいでアリアはぼーっとしたようで、何も言わなくなった。執事長にはここでアリアと共に残るように言って部屋を後にする。騎士にアリアの部屋の監視を頼んで戻ると、さっと顔色を変えたキャシーが足早に駆け寄ってきた。

「ちょっと、来て下さい!」

 *

 キャシーのスキルは『思念読取』。読み取れる思念というのは、存外多い。現場検証では、『物』の思念を読み取る。『物』の思念は人間が残す残留思念よりも純粋な情報源だ。そこで起きた事実を覚えているだけだな上、状況について問い掛ければ『物』はその言葉に応じる。大事にされていた物が主人を庇うように、彼らは使用者や人間に純粋な思いでいる。こちらの世界の物は『ツクモガミ』になるのは早いそうだ。

 ユリウスのスキル『映写』には過去の映像などを映し出すことができる。スクリーンも必要なく、自分のスキル好きな所に映し出せる。情報量が多ければ、ホログラムとして現場を再現も可能だ。
 ユリウスはキャシーの頭に手を乗せて、ターナーの書斎で起きたエマとマリアエルの交戦シーンを映し出していた。衝撃的だったのは二度にわたって全ステータスを総計600ポイントも奪い取ったこと。

 その後、気絶したマリアエルに呆然としているアリアが喚いた瞬間、エマが頬をぺちんと叩いただけで失禁したのはさておき、エマが書斎に戻ろうとしたところで男が2人、現れた。

 エマは瞬間的に距離を詰めて、男の一人を殴り飛ばす。先程から使っているそれは『縮地』だろう。その拍子に、ウィンドウが現れる。

『スキル【速度上昇】を入手しました』

 そして抜き身の剣を握るもう一人の男に怯むことなく間合いに入り込み、みぞおちを殴り飛ばす。

『スキル【剣技】を入手しました』

 30秒も立たない間に行われたアクションシーンは少女の圧勝で終わった。

『同一スキルがあります』とウィンドウが現れ、エマはステータスを操作していく。

 レベル17程度ではあり得ないステータス数値、そして大量のスキルとアビリティ。
 スキルの統合、という指示ウィンドウ。それを押した彼女のスキル欄から、3つの剣シリーズスキルが消え、その代わりアビリティに『聖剣』が追加された。
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