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10話 決別

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 忍び込んだ書斎で金庫らしい物から書類をスキルで引っ張り出す。ボロボロ、ボロが出るわ出るわ。
 明らかに裏帳簿らしいもの、違法薬物の売買、それどころか暗殺依頼書なんてヤベェモンまであった。

 ちなみに、対象『エマ・エルフィールド』。自分だった。

 魔法印トおぼしき模様がある。互いに呪いをかけ、失敗すれば失敗した者に必ず被害が及ぶもの。契約を絶対遂行するための、特別強固に結ばれる契約。

 決行可能日はエマの誕生日。追い出された後なら始末して良いという内容だった。

 書面ではエマの死亡が確認できたら残りの額を支払うことになっており、既に前金は支払ってあった。前払いの項目にエルフィールド家の家紋印が押印されている。

 契約主同士の2枚の書類はリンクしていて、契約内容が更新されたら自動手記されるようになっている。相手側の方にも暗殺依頼受領書には、このエルフィールド家の家紋印が入っているはすだ。

 目頭が熱くなる。涙が膨れ上がる。
 ポロポロと涙が溢れる。
 
 本当に、この家の人間だと微塵も思われていなかった。
 本当に、誰にも愛されていなかった。

 何も悪い事なんてしてないのに、
 ずっとダメな人間だと、
 使えない人間だと、
 家の人間じゃないと言われてきた。

 でも、頑張ればいつか認めてくれるんじゃないかって心のどこかで思っいた。

 でも、そんな淡い期待さえも崩れ去った。
 いや、元から存在していない希望を勝手に夢見て、縋っていたのだ。

 言ったところで誰も助けてくれない。
 助けを求めたってみじめなだけ。
 この家の人間には、何を求めても無駄。

「こんな家出ていって、別の場所で、こんな連中よりずっとずっと幸せになってやる!!」

 もう、誰にも邪魔させない。
 覚悟はついた。
 後戻りの道すら残っていない。
 自分の身は自分で守る。

 攻撃は最大の防御。
 エルフィールド家の人間への復讐こそがエマが生き残る唯一の道。

 この家の人間なんて、もうどうでも良い。

 結構な数の書類がある。裏帳簿は後回しにして、まずはすぐに念写できる証拠品を抑えていく。
 作業は、朝方まで続いた。

 *

 充てがわれた自室ではなく、エマが担当する区域……母親の衣装部屋で仮眠を取った。部屋のベッドで眠ると、深く眠って、時間をロスしてしまうと思ったからだ。
 エマが眠りこけていると、案の定蹴飛ばされて叩き起こされた。
 そこには、鬼の形相で睨みつけているターナーだった。

 近くにはほくそ笑んでいるアリアもいた。
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