120 / 237
英雄奪還編 前編
五章 第七話 海面のモンド
しおりを挟む
トキワが帰ってきてから数日が経った。帰ってきてからお父さんの話を聞いたが本人はいつになく清々しい、そして幸せそうな顔だった。また今回の旅でガルミューラとの絆も深まったようで前よりも二人で一緒にいるという光景をよく見るようになった。もう後悔は無いとのことらしい。そして何故か感謝された。
その後しばらくして三日に一度くらいのペースで魔力波を飛ばしてくるゲルオードから会談の日時が決まったという知らせを聞いた。そして現在、総合室に集まり円卓を囲みながら全員で話し合いをしているという状況だ。いつもは外にいる閻魁も、他に便乗して来たという感じで椅子に座っている。
「ジン、ぼくやっぱり行くのはやめておいた方がいいと思うんだよね」
「ジン様、恐れながら私もゼステナと同意見です。危険が伴うかもしれません」
そう言っていつになく真剣な顔で口を開いたゼステナにクリュスも続いた。
「ゼステナ、クリュス。あなた達にしては随分とらしくない考えですね。本来なら喜んで付いてきそうですが」
「べ、別に何も無いけどさ。ゼグトスこそ······心配じゃないの?」
「ええもちろん心配ですとも、ですがジン様の強さはあなた達の想像を遥かに超えます。帝王如きでは及びませんよ。それにもしものために私達がいるのでしょう。それともあなたもようやくジン様に心酔しましたか?」
「····あっ、ああそうだよ!! 何か悪いか!!」
顔を赤らめながら叫んだゼステナを見て周りからは笑い声が起こった。
「ともあれだ、帝王連中と良好な関係を築いておくのは必要だ。ジン、じいちゃんも心配だが頑張って来い」
「うん、それと言い忘れてたけど会談は三日後だって」
「それでだ、誰が護衛に向かうかをこの場で決める。私とガルは確定だ。ゼフは防衛のためここに残ってもらう。ここの安全を確保する必要もあるが、護衛に手を抜くつもりはない。それで聞くが、今現在で護衛として付いてくるつもりの奴は手を挙げろ」
クレースの言葉を聞いて周りにいたもの達はかなりの人数が手を挙げた。
「えっ」
素で声が出た。
「流石に多すぎだ。何人かは妥協しろ」
「そうですね、おそらく帝王は後ろに三人ほどの護衛をつけているでしょう。ですが私の特殊空間を用いればそれに加えて他の方もすぐに出られるようには出来ます」
「パール、危ないからお留守番できるかな」
「で、でもジンといっしょにいきたい」
「すぐに帰ってくるから」
「······うん」
優しく抱っこすると落ち着いた。まだまだ甘えたい時期なのかもしれない。私もお母さんがいれば今になっても離れないくらいに甘えている自信がある。
「ではゼグトスもだな。あともう一人は······」
すると閻魁が再び手を挙げ、キリッとした顔をする。
「そうだな、我とかどう?」
「却下だ、静かに座っていられないだろう」
「まあそう言うではない、我ならば多少の顔見知りもいる。それに我は強いからな、もしものことが起きても全員我を前にして恐れ慄くだろう。どうだジン」
「そうだッ—」
「待って、ぼくとクリュス姉が行く」
ゼステナは言葉を遮って机をバタンと叩いて立ち上がった。
「三人も四人も一緒だよ、ガルも行くんだからさ、いいでしょ?」
「我は」
「ジン様、ぜひお供させて下さい」
「じゃあ閻魁はまた今度ね。留守番よろしく。ボル、申し訳ないんだけど一日だけ二人の仕事を引き継げないかな?」
「モチロン。安心して行ってキテ」
ということで行く護衛のメンバーはガル、クレース、ゼグトス、ゼステナ、クリュスということになった。ゼグトスのいう特殊空間を使えば転移魔法を少しだけ応用したものらしく必要に応じて魔力波で呼び出した相手をすぐに転移させられるらしい。
「そうだジン。この際だからさ、昨日決め終わったやつだけでもみんなに発表しようよ」
「そうだね」
元々は位や称号を考えるつもりだったが、そこから派生して部隊の編成まで決めてしまった。ちなみに位はほとんど決まらず称号に至っては一旦は保留し、また今度ということになった。
「それじゃあぼくから説明させてもらうよ。この国はまだ多くの国から小国と言われて舐められているみたいだね。部隊編成や位は他国への戦力の誇示だけでなく全員の士気にも関わってくる。とは言っても今決まった位は幹部だけだね。ということでまずは部隊について。
これは戦闘面のバランスや相性の良さを考慮して考えたよ。戦闘能力に大きく左右されるね」
ゼステナが円卓の中心に手を向けると魔力によって空中に文字が現れた。
「一番上が部隊名だよ」
ー黒金の槌ー
・幹部 ボル
・構成員 傭兵軍団 エルダン 他剛人族
—骸の軍団—
・幹部 クシャルド
・構成員 ハバリ ギルス 他骸族
「まず第一、第二部隊。ボルが率いる部隊とクシャルドの率いる部隊だ。第一部隊は力と機動力を備えた構成になっていて第二部隊は持久力重視になっている。どちらも地上戦に良い部隊だと思うよ」
「えっ、ボク幹部ナノ」
「ボルお願い」
「ワカッタ」
「わ、私が幹部でもよろしいのでしょうか」
クシャルドはとても申し訳なさそうに気まずい表情をした。
「クシャルドは骸族のみんなの統率も取れるし経験も豊富だからさ。きっと大丈夫」
「はい······それでは慎んで勉めさせて頂きます」
そう、骸族を完全に統率できるのはクシャルドしかいないのだ。
「次行くね」
ゼステナが瞬きをすると文字が変化し次の内容が表示された。
ー炎の槍ー
・幹部 トキワ
・構成員 ゼステナ リンギル ガルミューラ他ヒュード族
—ガルドのカラクリ—
・幹部 ギルバルド
・構成員 機械兵
「次に第三、第四部隊だね。第三部隊はトキワが幹部だ。ぼくもこの前戦って強さは分かってる。三人が意思持ちの武器を所有している部隊だね。それと機械兵のことはぼくもよく分からないんだけど、ゼグトスが制作に協力したみたいだからね。機械兵には防衛や遠距離攻撃の役割をしてもらうよ」
「分かったぜ、任せな」
ギルバルドはその場にいなかったが後で伝えよう。大丈夫、きっと了承してくれるはず。
「次が最後だよ」
ー龍星群ー
・幹部 エルバトロス
・構成員 クリュス ラルカ 他龍人族
ー癒す者ー
・幹部 リエル ルース
・構成員 エルフ族
「第五部隊にはクリュス姉他、エルバトロスやラルカ達龍人族だ。クリュス姉もいるから戦力的にはかなり大きな部隊にはなるけど正直奥の手みたいなところもあるね。クリュス姉は外交関係の仕事を兼任しているから幹部はエルバトロスに頼むよ。最後の第六部隊は回復部隊だ。幹部には二人についてもらう。戦闘に直接参加はほとんどしないけど治癒魔法をこれからさらに習得してていってもらうよ」
「うむ、任せてくれ」
「ええ、分かりましたわ」
「とまあ、こんな感じだけど何か質問はある?」
「わ、我は?」
閻魁は立ち上がり、まるで子どもがおもちゃを買ってくれなかった時のように悲しそうな瞳でゼステナを見つめた。
「ああ、言い忘れてた。今表示されなかった人で戦闘系の人は基本的には全員ジンの護衛だ。必要に応じて出陣するといった感じだけど今は戦争中でもないから具体的にはいざという時に適宜対応してほしい。それと各部隊の番号に優劣はないからね」
「ほう、ならばよい」
「まあ分からないことがあれば適宜聞いてくれ」
そして中央に表示されていた文字はスッと消え去った。
「みんな一ついいかな」
その声とともに全員の注目がジンへと移る。
「ボルとゼグトス、それにインフォルが考えてくれて作成までしてくれたんだけどゼグトスのつくった海上の特殊空間を増築する形で全員が安全に利用できる訓練施設を作ってくれたんだ。それ以外でも使おうと思うんだけど」
「もう完成したのか」
「ウン。魔法を使用したのと構造が少し特殊だカラネ。」
ゼフの膝の上に静かに座っていたインフォルが机の上に立って中央に向かって手をかざした。すると今度は文字ではなく設計図が出てきたのだ。
「「おおぉ」」
設計図を見て皆が目を輝かせて思わず声が漏れた。
「これが今回完成した建物の設計図や。水圧にも暴風にも、それと外部からの攻撃にも耐えられる設計になっとる。設計図がここにあるから今ここで説明させてもらうで。まずここからは少しだけ距離を置いた海面に設置予定で向こうへは転移魔法陣で移動する。外観としては海面に中心が置かれた球形や。半球が海の中に沈んどるが周りに不可視の結界を張っとるから動かず球形がどこかに行くことはない。もちろん、海洋に影響が出んようにしっかり対策もした。中には扉が複数あって開けると広い部屋に繋がっとる。耐久性はゼグトスはんお墨付きや、安心しい。内装は出来とるが設置後安全性の為少しの間点検させてもらう。一度海の底から引っ張り上げて結界を張らなあかんからな、今のタイミングで言おう思ったんや」
「今から見れるのか !?」
閻魁は話を聞いてからもう落ち着きがない。
「もうジンちゃんからの許可は出とるからある程度の準備は終わったで。球形の設置をまず初めにする。お前さんらには点検が終了次第中に物を運ぶんを手伝うてもらう。今中には一切何も無い、中は安全やさかいうちっ側に入っても全く問題ない。そいでや、今から全員集めて球形のお披露目会と行こうやないか。建物の名前は名付けて『モンド』や。きっとこの国の名所の一つになんで」
「「おおおおぉ」」
再び歓声が部屋に溢れた。
そして外に出て皆が海の近くに集まった。皆が見守る中、ゼグトスが空中に浮遊して海上に留まる。
「ジン様、よくご覧になられてくださいね」
「うっ、うーん! 気をつけて!!」
かなり見て欲しそうでゼグトスのすごく興奮している様子が伝わってきた。設計図は見ているものの未だに完成した外観は見ていない。
「では、いきます」
ゼグトスが指をパチンっと鳴らすと海から地響きのような音が聞こえてきて近くの地面が揺れ始めた。海面から陽の光に照らされて光る物体に大量の海水が持ち上げられながらその姿を現した。現れたのは海の色に溶け込む半球で出現と同時に結界が張られその場に留まった。
建物自体は中の様子が見えないが透明で周りの環境に合わせて色を変化させられるらしい。それにしてもすごい。みんなは口をポカンと開けたまま、目の前のモンドに釘付けになっていた。
「じゃあそういうことや、転移魔法の設置はもうしばらく待っといてくれ」
インフォルはそう言い残すと一度土の中へと帰っていった。そしてしばらく見てみんなは笑顔で元いた場所へと戻っていった。こうしてモンドのお披露目会は無事皆の期待と共に大成功したのだった。
その後しばらくして三日に一度くらいのペースで魔力波を飛ばしてくるゲルオードから会談の日時が決まったという知らせを聞いた。そして現在、総合室に集まり円卓を囲みながら全員で話し合いをしているという状況だ。いつもは外にいる閻魁も、他に便乗して来たという感じで椅子に座っている。
「ジン、ぼくやっぱり行くのはやめておいた方がいいと思うんだよね」
「ジン様、恐れながら私もゼステナと同意見です。危険が伴うかもしれません」
そう言っていつになく真剣な顔で口を開いたゼステナにクリュスも続いた。
「ゼステナ、クリュス。あなた達にしては随分とらしくない考えですね。本来なら喜んで付いてきそうですが」
「べ、別に何も無いけどさ。ゼグトスこそ······心配じゃないの?」
「ええもちろん心配ですとも、ですがジン様の強さはあなた達の想像を遥かに超えます。帝王如きでは及びませんよ。それにもしものために私達がいるのでしょう。それともあなたもようやくジン様に心酔しましたか?」
「····あっ、ああそうだよ!! 何か悪いか!!」
顔を赤らめながら叫んだゼステナを見て周りからは笑い声が起こった。
「ともあれだ、帝王連中と良好な関係を築いておくのは必要だ。ジン、じいちゃんも心配だが頑張って来い」
「うん、それと言い忘れてたけど会談は三日後だって」
「それでだ、誰が護衛に向かうかをこの場で決める。私とガルは確定だ。ゼフは防衛のためここに残ってもらう。ここの安全を確保する必要もあるが、護衛に手を抜くつもりはない。それで聞くが、今現在で護衛として付いてくるつもりの奴は手を挙げろ」
クレースの言葉を聞いて周りにいたもの達はかなりの人数が手を挙げた。
「えっ」
素で声が出た。
「流石に多すぎだ。何人かは妥協しろ」
「そうですね、おそらく帝王は後ろに三人ほどの護衛をつけているでしょう。ですが私の特殊空間を用いればそれに加えて他の方もすぐに出られるようには出来ます」
「パール、危ないからお留守番できるかな」
「で、でもジンといっしょにいきたい」
「すぐに帰ってくるから」
「······うん」
優しく抱っこすると落ち着いた。まだまだ甘えたい時期なのかもしれない。私もお母さんがいれば今になっても離れないくらいに甘えている自信がある。
「ではゼグトスもだな。あともう一人は······」
すると閻魁が再び手を挙げ、キリッとした顔をする。
「そうだな、我とかどう?」
「却下だ、静かに座っていられないだろう」
「まあそう言うではない、我ならば多少の顔見知りもいる。それに我は強いからな、もしものことが起きても全員我を前にして恐れ慄くだろう。どうだジン」
「そうだッ—」
「待って、ぼくとクリュス姉が行く」
ゼステナは言葉を遮って机をバタンと叩いて立ち上がった。
「三人も四人も一緒だよ、ガルも行くんだからさ、いいでしょ?」
「我は」
「ジン様、ぜひお供させて下さい」
「じゃあ閻魁はまた今度ね。留守番よろしく。ボル、申し訳ないんだけど一日だけ二人の仕事を引き継げないかな?」
「モチロン。安心して行ってキテ」
ということで行く護衛のメンバーはガル、クレース、ゼグトス、ゼステナ、クリュスということになった。ゼグトスのいう特殊空間を使えば転移魔法を少しだけ応用したものらしく必要に応じて魔力波で呼び出した相手をすぐに転移させられるらしい。
「そうだジン。この際だからさ、昨日決め終わったやつだけでもみんなに発表しようよ」
「そうだね」
元々は位や称号を考えるつもりだったが、そこから派生して部隊の編成まで決めてしまった。ちなみに位はほとんど決まらず称号に至っては一旦は保留し、また今度ということになった。
「それじゃあぼくから説明させてもらうよ。この国はまだ多くの国から小国と言われて舐められているみたいだね。部隊編成や位は他国への戦力の誇示だけでなく全員の士気にも関わってくる。とは言っても今決まった位は幹部だけだね。ということでまずは部隊について。
これは戦闘面のバランスや相性の良さを考慮して考えたよ。戦闘能力に大きく左右されるね」
ゼステナが円卓の中心に手を向けると魔力によって空中に文字が現れた。
「一番上が部隊名だよ」
ー黒金の槌ー
・幹部 ボル
・構成員 傭兵軍団 エルダン 他剛人族
—骸の軍団—
・幹部 クシャルド
・構成員 ハバリ ギルス 他骸族
「まず第一、第二部隊。ボルが率いる部隊とクシャルドの率いる部隊だ。第一部隊は力と機動力を備えた構成になっていて第二部隊は持久力重視になっている。どちらも地上戦に良い部隊だと思うよ」
「えっ、ボク幹部ナノ」
「ボルお願い」
「ワカッタ」
「わ、私が幹部でもよろしいのでしょうか」
クシャルドはとても申し訳なさそうに気まずい表情をした。
「クシャルドは骸族のみんなの統率も取れるし経験も豊富だからさ。きっと大丈夫」
「はい······それでは慎んで勉めさせて頂きます」
そう、骸族を完全に統率できるのはクシャルドしかいないのだ。
「次行くね」
ゼステナが瞬きをすると文字が変化し次の内容が表示された。
ー炎の槍ー
・幹部 トキワ
・構成員 ゼステナ リンギル ガルミューラ他ヒュード族
—ガルドのカラクリ—
・幹部 ギルバルド
・構成員 機械兵
「次に第三、第四部隊だね。第三部隊はトキワが幹部だ。ぼくもこの前戦って強さは分かってる。三人が意思持ちの武器を所有している部隊だね。それと機械兵のことはぼくもよく分からないんだけど、ゼグトスが制作に協力したみたいだからね。機械兵には防衛や遠距離攻撃の役割をしてもらうよ」
「分かったぜ、任せな」
ギルバルドはその場にいなかったが後で伝えよう。大丈夫、きっと了承してくれるはず。
「次が最後だよ」
ー龍星群ー
・幹部 エルバトロス
・構成員 クリュス ラルカ 他龍人族
ー癒す者ー
・幹部 リエル ルース
・構成員 エルフ族
「第五部隊にはクリュス姉他、エルバトロスやラルカ達龍人族だ。クリュス姉もいるから戦力的にはかなり大きな部隊にはなるけど正直奥の手みたいなところもあるね。クリュス姉は外交関係の仕事を兼任しているから幹部はエルバトロスに頼むよ。最後の第六部隊は回復部隊だ。幹部には二人についてもらう。戦闘に直接参加はほとんどしないけど治癒魔法をこれからさらに習得してていってもらうよ」
「うむ、任せてくれ」
「ええ、分かりましたわ」
「とまあ、こんな感じだけど何か質問はある?」
「わ、我は?」
閻魁は立ち上がり、まるで子どもがおもちゃを買ってくれなかった時のように悲しそうな瞳でゼステナを見つめた。
「ああ、言い忘れてた。今表示されなかった人で戦闘系の人は基本的には全員ジンの護衛だ。必要に応じて出陣するといった感じだけど今は戦争中でもないから具体的にはいざという時に適宜対応してほしい。それと各部隊の番号に優劣はないからね」
「ほう、ならばよい」
「まあ分からないことがあれば適宜聞いてくれ」
そして中央に表示されていた文字はスッと消え去った。
「みんな一ついいかな」
その声とともに全員の注目がジンへと移る。
「ボルとゼグトス、それにインフォルが考えてくれて作成までしてくれたんだけどゼグトスのつくった海上の特殊空間を増築する形で全員が安全に利用できる訓練施設を作ってくれたんだ。それ以外でも使おうと思うんだけど」
「もう完成したのか」
「ウン。魔法を使用したのと構造が少し特殊だカラネ。」
ゼフの膝の上に静かに座っていたインフォルが机の上に立って中央に向かって手をかざした。すると今度は文字ではなく設計図が出てきたのだ。
「「おおぉ」」
設計図を見て皆が目を輝かせて思わず声が漏れた。
「これが今回完成した建物の設計図や。水圧にも暴風にも、それと外部からの攻撃にも耐えられる設計になっとる。設計図がここにあるから今ここで説明させてもらうで。まずここからは少しだけ距離を置いた海面に設置予定で向こうへは転移魔法陣で移動する。外観としては海面に中心が置かれた球形や。半球が海の中に沈んどるが周りに不可視の結界を張っとるから動かず球形がどこかに行くことはない。もちろん、海洋に影響が出んようにしっかり対策もした。中には扉が複数あって開けると広い部屋に繋がっとる。耐久性はゼグトスはんお墨付きや、安心しい。内装は出来とるが設置後安全性の為少しの間点検させてもらう。一度海の底から引っ張り上げて結界を張らなあかんからな、今のタイミングで言おう思ったんや」
「今から見れるのか !?」
閻魁は話を聞いてからもう落ち着きがない。
「もうジンちゃんからの許可は出とるからある程度の準備は終わったで。球形の設置をまず初めにする。お前さんらには点検が終了次第中に物を運ぶんを手伝うてもらう。今中には一切何も無い、中は安全やさかいうちっ側に入っても全く問題ない。そいでや、今から全員集めて球形のお披露目会と行こうやないか。建物の名前は名付けて『モンド』や。きっとこの国の名所の一つになんで」
「「おおおおぉ」」
再び歓声が部屋に溢れた。
そして外に出て皆が海の近くに集まった。皆が見守る中、ゼグトスが空中に浮遊して海上に留まる。
「ジン様、よくご覧になられてくださいね」
「うっ、うーん! 気をつけて!!」
かなり見て欲しそうでゼグトスのすごく興奮している様子が伝わってきた。設計図は見ているものの未だに完成した外観は見ていない。
「では、いきます」
ゼグトスが指をパチンっと鳴らすと海から地響きのような音が聞こえてきて近くの地面が揺れ始めた。海面から陽の光に照らされて光る物体に大量の海水が持ち上げられながらその姿を現した。現れたのは海の色に溶け込む半球で出現と同時に結界が張られその場に留まった。
建物自体は中の様子が見えないが透明で周りの環境に合わせて色を変化させられるらしい。それにしてもすごい。みんなは口をポカンと開けたまま、目の前のモンドに釘付けになっていた。
「じゃあそういうことや、転移魔法の設置はもうしばらく待っといてくれ」
インフォルはそう言い残すと一度土の中へと帰っていった。そしてしばらく見てみんなは笑顔で元いた場所へと戻っていった。こうしてモンドのお披露目会は無事皆の期待と共に大成功したのだった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
婚約破棄をしてきた元婚約者さま、あなただけは治せません。
こうやさい
ファンタジー
わたくしには治癒の力があります。けれどあなただけは治せません。
『婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。』から連想した、病気を婚約破棄のいいわけに使った男の話。一応事実病気にもなっているので苦手な方はお気を付け下さい。
区切りが変。特に何の盛り上がりもない。そしてヒロイン結構あれ。
微妙に治癒に関する設定が出来ておる。なんかにあったっけ? 使い回せるか?
けど掘り下げると作者的に使い勝手悪そうだなぁ。時間戻せるとか多分治癒より扱い高度だぞ。
続きは需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/206551)で。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/423759993
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします
リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。
違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。
真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。
──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。
大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。
いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ!
淑女の時間は終わりました。
これからは──ブチギレタイムと致します!!
======
筆者定番の勢いだけで書いた小説。
主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。
処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。
矛盾点とか指摘したら負けです(?)
何でもオッケーな心の広い方向けです。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる