83 / 240
ボーンネルの開国譚3
三章 第四話 龍の里
しおりを挟む
「どの国も今まで一切接点がなかった国ばかりだな。こんな辺境までどういう風の吹き回しだ」
手紙はどれも一度も交流のない国からのものであり、小国から大国まで様々だった。
「ちょっと見てみるね」
手紙の内容は、ボーンネルと友好関係を結びたいという言葉やぜひ一度お会いしたいと丁寧に書かれたものから、一度国に招いて話をしてやろう、王である我が直々に話し合いの席を設けてやろう、自分の国の支配下に入れてやろうといった強引で上から目線のものもあった。
「突然どうしたんだろ。誰か知ってる?」
「いいや、心当たりがないな」
「あっ、ブルファンからも来てる。近く話がしたいだって」
「まさかとは思うが、ゲルオードが何かしたのか?」
「確かに最近で考えるとしたらそれか。トキワ、ゲルオードに繋げられる?」
「おう、任せとけ············よしっ大丈夫だ、つなげるぜ」
(おはようゲルオード、今ちょっといいかな)
(おお、ジンか我も一度話をしたかったところだ。鬼幻郷の礼がまだ言えてなかったな、感謝するぞ。それで要件はなんだ、何でも話してみよ)
(ここに色んな国から手紙が届いてるんだけど何か知らない?)
(そうか、すまんが知らぬな。関係することといえば、近国にお前たちの功績を言いふらしたぐらいだが)
(それだよ)
(おいゲルオード、具体的には何を言ったんだ)
(お前たちが鬼帝ゲルオードを救ったと言っただけだ。我も鬼幻郷の問題はいずれ処理すべきことだと思っていたからな、事実を言ったまでだ。いずれ王となれば外交関係も複雑になってくる。経験することも大切であるぞジン)
(まあそうかあ。でもどうして全部こんな辺境にきたんだろ)
(ああ我がお前の家を調べ、部下に言いふらした)
(このストーカーッ!!)
(申し訳ありませんジン様、追いかけたのですが振り切られました。ですがご安心を怪しいものがいれば全員殺りますから)
(ハッハッハッ、あの時は本気で焦ったな。まあ良いではないか。ああ、そういえば閻魁は破壊衝動に呑まれたか? かなり凶暴化しただろ)
(うん、結構暴れてた。でもすぐ元に戻ったよ。やっぱり根はいい子なんだよ)
(フゥ、全く、あの時お前が入ればだいぶと楽だったであろうな。やはりお前に任せて正解だった。まあ取り敢えずは一刻もはやく国をまとめ上げ正式な王となれ、そこが始まりだ)
(分かった、ありがとう。じゃあまたね)
「あいつだったか、閻魁と似てるところがあるな」
「でもどう返そう、王様でもないのに何か変だよね」
「取り敢えずこの上から目線の国は無視だな、腹が立つ。会えば殺してしまいそうだ」
「そ、それは確かにダメだね」
「じゃが先に龍人族の問題を解決するのが早そうじゃの」
「そうだね、建国も忙しいけどまずはそれかな」
一方、ボーンネルのジンたちの住む場所から北東、ここには多くの龍人族が暮らしている。
ボーンネルの国の中でも龍の里と呼ばれるこの場所では魔力濃度が非常に高く、龍人族は日常的に龍化した巨大な姿をしている。
そのため普通の人間がその場に立ち入ると魔力濃度の激しい差で最悪の場合絶命してしまうことまであるのだ。
この龍の里はエルバトロスという者が長きに渡り治めている。そして現在、エルバトロスは悩んでいた。
「うむ、どうしたものか······」
「どうされましたか? 鱗が剥げてきたのは仕方ありませんよ、歳ですから」
「違うわ、そんなことで悩んでおらん。問題は南側の存在だ。予想よりも力が強大すぎる、もしここに攻め込まれでもすれば危ういかもしれん。できれば友好的に行きたいものだが······」
「一度話し合いだけでもしてみませんか? その場合、事前に私が偵察に向かいますが」
「そうだな、では頼むぞラルカ」
「了解」
ラルカと呼ばれるその女の龍は龍の里から出ると人型の姿に戻った。艶やかな紫色の髪の毛をしたラルカは芸術品のような美しい容貌をしている。その顔には笑みが浮かび、久しぶりの人間との交流を少し楽しみにしていた。
(でも人間と会うのは本当に久しぶりね、怖がられないかしら)
そしてラルカは龍人族であることがバレないように大きなローブを着てジンたちのいる場所へと向かっていった。
手紙はどれも一度も交流のない国からのものであり、小国から大国まで様々だった。
「ちょっと見てみるね」
手紙の内容は、ボーンネルと友好関係を結びたいという言葉やぜひ一度お会いしたいと丁寧に書かれたものから、一度国に招いて話をしてやろう、王である我が直々に話し合いの席を設けてやろう、自分の国の支配下に入れてやろうといった強引で上から目線のものもあった。
「突然どうしたんだろ。誰か知ってる?」
「いいや、心当たりがないな」
「あっ、ブルファンからも来てる。近く話がしたいだって」
「まさかとは思うが、ゲルオードが何かしたのか?」
「確かに最近で考えるとしたらそれか。トキワ、ゲルオードに繋げられる?」
「おう、任せとけ············よしっ大丈夫だ、つなげるぜ」
(おはようゲルオード、今ちょっといいかな)
(おお、ジンか我も一度話をしたかったところだ。鬼幻郷の礼がまだ言えてなかったな、感謝するぞ。それで要件はなんだ、何でも話してみよ)
(ここに色んな国から手紙が届いてるんだけど何か知らない?)
(そうか、すまんが知らぬな。関係することといえば、近国にお前たちの功績を言いふらしたぐらいだが)
(それだよ)
(おいゲルオード、具体的には何を言ったんだ)
(お前たちが鬼帝ゲルオードを救ったと言っただけだ。我も鬼幻郷の問題はいずれ処理すべきことだと思っていたからな、事実を言ったまでだ。いずれ王となれば外交関係も複雑になってくる。経験することも大切であるぞジン)
(まあそうかあ。でもどうして全部こんな辺境にきたんだろ)
(ああ我がお前の家を調べ、部下に言いふらした)
(このストーカーッ!!)
(申し訳ありませんジン様、追いかけたのですが振り切られました。ですがご安心を怪しいものがいれば全員殺りますから)
(ハッハッハッ、あの時は本気で焦ったな。まあ良いではないか。ああ、そういえば閻魁は破壊衝動に呑まれたか? かなり凶暴化しただろ)
(うん、結構暴れてた。でもすぐ元に戻ったよ。やっぱり根はいい子なんだよ)
(フゥ、全く、あの時お前が入ればだいぶと楽だったであろうな。やはりお前に任せて正解だった。まあ取り敢えずは一刻もはやく国をまとめ上げ正式な王となれ、そこが始まりだ)
(分かった、ありがとう。じゃあまたね)
「あいつだったか、閻魁と似てるところがあるな」
「でもどう返そう、王様でもないのに何か変だよね」
「取り敢えずこの上から目線の国は無視だな、腹が立つ。会えば殺してしまいそうだ」
「そ、それは確かにダメだね」
「じゃが先に龍人族の問題を解決するのが早そうじゃの」
「そうだね、建国も忙しいけどまずはそれかな」
一方、ボーンネルのジンたちの住む場所から北東、ここには多くの龍人族が暮らしている。
ボーンネルの国の中でも龍の里と呼ばれるこの場所では魔力濃度が非常に高く、龍人族は日常的に龍化した巨大な姿をしている。
そのため普通の人間がその場に立ち入ると魔力濃度の激しい差で最悪の場合絶命してしまうことまであるのだ。
この龍の里はエルバトロスという者が長きに渡り治めている。そして現在、エルバトロスは悩んでいた。
「うむ、どうしたものか······」
「どうされましたか? 鱗が剥げてきたのは仕方ありませんよ、歳ですから」
「違うわ、そんなことで悩んでおらん。問題は南側の存在だ。予想よりも力が強大すぎる、もしここに攻め込まれでもすれば危ういかもしれん。できれば友好的に行きたいものだが······」
「一度話し合いだけでもしてみませんか? その場合、事前に私が偵察に向かいますが」
「そうだな、では頼むぞラルカ」
「了解」
ラルカと呼ばれるその女の龍は龍の里から出ると人型の姿に戻った。艶やかな紫色の髪の毛をしたラルカは芸術品のような美しい容貌をしている。その顔には笑みが浮かび、久しぶりの人間との交流を少し楽しみにしていた。
(でも人間と会うのは本当に久しぶりね、怖がられないかしら)
そしてラルカは龍人族であることがバレないように大きなローブを着てジンたちのいる場所へと向かっていった。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる