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ボーンネルの開国譚2

二章 第三十四話 ヘリアルの真意

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「ジン。あのような邪竜今の我の敵ではないぞ、すぐにでも蹴散らしてやろうか?」

すっかりといつもの調子を取り戻した閻魁は自信満々な顔で胸を張った。

「コラっ、調子に乗ってるとまたさっきみたいになっちゃうよ」

(よかった、いつもの閻魁だ)

「し、仕方なかったのだ。アイツが我に無理矢理魔魁玉を投げられて準備ができてなかっただけであるぞッ我は悪くない! うむ、悪くない」

閻魁は人型の姿に戻ると焦って慌てふためきながら身振り手振りでジンに説明してきた。
しかし諦めたように大きく溜息をつき、閻魁はジンから目を逸らしてぎこちなさそうにそっぽを向いた。

「······その、迷惑をかけたな」

「大丈夫。もし次また暴走しても何回だって助けに行くから。ずっと見とくから」

「······そうか、ならば我のこともいつか頼るがよい。それで我は何をすればよいのだ?」

「じゃあ閻魁はレイお姉ちゃ······」

「ん? 誰だこやつは?」

突然、閻魁の胸に意識を失い白目をむいたトウライが飛んできた。
トウライの持っていた刀の頭身は粉々になり、レイに完全なる敗北を喫していたのだ。

「ジン、終わったぞ。閻魁の方も大丈夫そうだな」

「お前は誰だ?」

「こちらはレイお姉ちゃん。安心して味方だよ」

「よろしく頼む。思っていた感じとは違うな」

「ああ、そうであろう。やはり我の威厳は隠しきれんな」

(いや、想像以上に子どもだ)

「ッ! 来るぞ!」

その時、龍化したヘルメスの巨大な爪な振り下ろされた。それに伴い地面は抉り取られ、ギリギリのところでジンたちはその場から離れた。

「少しはやりおるな」

龍化状態のへリアルは先ほどまでの魔力を大きく上回り、劣勢の状況を覆すほどの力を秘めていたのだ。しかしながら魔力の波動は穏やかで完全に龍化状態の自身の力をコントロールしていた。

(ジン、聞こえるか?)

そんな中、ジンの頭の中にクレースの声が聞こえてきた。

(うん、聞こえるよ。そっちは大丈夫?)

(ああ、一度敵は降参したんだがな。色々あってまだかかりそうだ。閻魁は正気に戻ったか?)

(大丈夫、もう元に戻ったよ)

(そうか、それともう一つ········)

(····分かったじゃあ閻魁に向かってもらうね)

(だが一人で大丈夫か?)

(うん、大丈夫。昔話してたレイお姉ちゃんって覚えてる? さっき会って手伝ってもらってるんだ)

(······そうか、了解した)

クレースは何か言おうとしたがその思いを我慢し、魔力波を切った。

「閻魁、クレースたちを手伝いに一度一階に向かって。ここは大丈夫だから」

「おう、そうか。我の力が必要か。任せろ」

そして閻魁は五階から飛び降り、地上へと向かった。

「閻魁は必要ないとは、随分となめられたものだな」

「一つ聞きたかったんだけど、どうしてこんなことをしたの」

その言葉にヘリアルはふとある人物のことを思い出した。

「理由か。·····俺はアイツと同じく力を求めたからだろうな」

「アイツっていうのは、······ヘルメスのこと?」

「———ッ!?」

「やっぱりそうだったんだね」

「何故お前が弟のことを知っているッ!」

「ヘルメスも同じようにウィルモンドまで力を求めてやってきたんだ。その時のヘルメスにとっても似てるから」

数年前、意思の世界の一つであるニュートラルドまで攻めてきたヘルメスとヘリアルは兄弟であったのだ。

「······そうか」

龍人族にとって力というものは自身の強さを表す全てである。そのためヘルメスとヘリアルは小さな頃から互いに競う合うように力を求めていたのだ。

(俺たちは生まれた時から良きライバルとして互いに切磋琢磨しあっていた。だがいつからだ、本当の目的を失った俺は一族の元から、アイツの元から離れ、この鬼幻郷に力を求めてやってきた。ただ自分が力を手に入れるために。
だがそんな俺のことを嘲笑うかのように、数年前弟の魔力は消え失せた。それからだ、心はぽっかりと空いたようになって、ただ盲目的に力を求めるようになったのは。だが、この十年、俺は同時にあることをずっと考えていた。
······これは本当の俺なのかと)

そして気づけば、ヘリアルは心に生まれた多くの翳りを紛らわすように、ジンたちに向かってブレスを繰り出していた。

(俺はただッ!)

その心は混ざり合い、多くの感情がヘルメスの頭を行き来する。
そしてヘリアルは自分が本当に求めたものを思い出したのだ。
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