上 下
27 / 240
ボーンネルの開国譚

第二十七話 バーガル王国の使者

しおりを挟む
翌日、総合室。私とゼフじい、そしてクレースは椅子に座って話をしていた。

「話ってどうしたの? クレース」

「インフォルからの情報だが、どうもバーガル王国のやつが閻魁の復活を勘づいたらしくてな。流石にまだここにいることは知られていないと思うが、バレるのは時間の問題だ。エルシアの取引に影響が出てしまうとこちらとしても困るからどうしたものかと思ってな」

「まあ余程のことがなけりゃあ大丈夫だろう。わしからも閻魁に目立たないよう言っておく、心配はするな」

そう話しているとドアが開いてボルが入ってきた。

「ジン、バーガル王国から使いがキテル」

「えっ」

「まさかもうバレたのか」

「あいつは人型の時それほど魔力も妖力は出てないんだがな」

「······あっ 、昨日」

三人は同時に昨日閻魁が巨大な姿になり、異様な量の魔力を放っていたことを思い出した。

「わかった。とりあえず、使いの人を部屋に連れてきて」

「リョウカイ」

先に部屋へ行き来客用の椅子と机で待機して、念のためにゼグトスとパールも来てジンの護衛についた。そしてしばらくするとボルが使いの者を連れて入ってきた。
部屋に入ってきたのはヒゲを生やした男が一人とその護衛と思われる剣を携えた男が二人であった。

「お初にお目にかかる。私はバーガル王の側近でありブルファンという。この度は一つ其方たちに尋ねたいことがあり参った」

淡々と落ち着いた様子で話すブルファンという男は自分のヒゲを触りながらそう言った。

「初めまして、ジンと言います。早速ですけど尋ねたいことというのは?」

できればあの人が来る前に話を終わらせたいジンはそう言った。そしてブルファンは静かに頷くと真剣な顔で話し始める。

「ああ、単刀直入に言わせてもらうが、このボーンネルでかつて鬼帝ゲルオードが封印した閻魁という魔物の存在が確認されたのだ」

(やっぱりもうバレてる。まあそれはバレるか。確かにクレースとかが魔力を出せば閻魁の魔力量は裕に超えるけど、普段はみんな隠してるし)

クレースの方をチラッと見ると言おうとしていることがすぐわかった。

「そうなんですね。ですが少なくとも、悪い魔物は見てませんよ」

「そうか、それならばよかった。王国に仕える者に妖力を感知できるものがいるのだが、突然強力な妖力が発生したと言ったのでな。調査した結果、閻魁門が壊れていたという情報が入ったのだ」

なるほど、確かに妖力ならバレるか。

「仮に閻魁が暴れても私がなんとかしますから大丈夫ですよ」

その言葉を聞いてブルファンはヒゲを触っていた手をピタリと止める

「其方本気か? あの鬼帝でも苦戦した魔物であるぞ、あまり無茶なことを言ってはいけない」

クレースはそれを聞いて少しイラッとするが、そこにある人物が入ってきた。

「ガハハッ客人が来たと聞いたぞ、我も混ぜろ!」

一番悪いタイミングで話題の人が入ってきてしまったのだ。

「ああーーごめんなさい少しお待ちを」

ジンは閻魁が入ってくると慌ててその声を掻き消すようにして閻魁を無理矢理部屋の外に押し出した。

「えっ、ちょ我も」

「後で遊んであげるから」

そう言うと閻魁は渋々部屋を後にした。

「今のは?」

「いや気にしなくていいですよ。私の友達です」

部屋の外で小さく聞こえたその声に閻魁は嬉しそうにして少し照れるようにニヤけた。

「そうであったか、突然押しかける形になってしまってすまなかったな。では私はこれで帰るとしよう」

「では帰りは転移魔法でお送りしますね」

「······」

「······」

「えっ、転移魔法使えるの?」

ブルファンは驚いて突然口調が変わった。
それと同じように護衛の二人も驚いた様子で互いに見つめ合う。

「ゼグトス」

「了解しました」

そして三人の足元に魔法陣が展開される。

「ではまた~」

「えっ、ちょっまッ」

ブルファンは何かを言おうとしていたが、その前に3人とも一瞬にして姿を消してしまった。

「······っ!!」

一瞬プチンッと意識が消えたブルファンたちが再び目を開けると目の前にはバーガル城があった。

「えっ······えっ!?」

三人は何が起こったかわからなかったが、互いにほっぺたをつねりあいこれが現実であるということを確認する。そして護衛の二人は一気に緊張が解けたかのようにため息をついた。

「正直、あの部屋にいた誰と戦っても勝てる気がしませんでした」

「俺もだ。あのような辺境には大きすぎる戦力に感じるが」

「誰だったんだ、あの者たちは······」

そして三人は夢でも見ていたような気分になりながらも王国に帰って行った。

そしてボーンネル。

ブルファンたちを見送った後、ジンは久しぶりに自分の家でゆっくりすることにした。ジンの家には珍しくガルもパールもいない状態でロードだけが置かれていた。

「ジン、最近いつにも増して楽しそうだね」

ゆっくりと椅子に腰掛けているとそうロードが語りかけてきた。

「うん、でも今の私があるのはロードに出会えたからっていうのもあるよ。今更だけど本当にありがとう」

「お礼を言うべきは僕の方だね。君は武器である僕に親友のように接してくれている。それが僕にはどんなことよりも嬉しんだよ。ジン、覚えてるかい? 初めて出会った時のことを。僕は昨日のように覚えているよ。楽しかったなあ」

そして二人は初めて出会った時のことを思い出す。ジンがまだロードと契約していなかった小さな頃の記憶を、そしてジンとロードの始まりの物語を
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...