上 下
17 / 240
ボーンネルの開国譚

第十七話 剛人族

しおりを挟む
 ー総合室。

 机を囲むように座り話し合う内容は今後についてのことだった。

「とりあえずシュレールの森の一件は解決したけど、次はどうする?」

「私としてはまず剛人族を仲間にするのが良いと思うぞ」

 そうクレースは提案してきた。剛人族はボーンネルに住む種族の一つあり、女性であっても人族の男の力を上回るほどの怪力を持つ。国を作るに際し今必要なのは人手だった。それも剛人族ならば一層のこと作業効率が上がるのだ。

「ええ、剛人族ならば国づくりの面から考えても大いに力になるでしょう」

「ゼグトスの言う通り剛人族は力だけ見れば、他の種族に比べても強い。じゃがな、最近はどうも荒っぽいみてえだぞ。各地での争い事は剛人族によるものらしいからな」

 しかしゼフはそう考え込むように返した。

「でも、剛人族って怖い見た目の割には温厚な種族って聞いたことがあるよ」

「ああ。剛人族には古い知り合いでエルダンという者がいるが、そいつは仲間思いのいいやつだった······」

「······どうしたの」

 クレースは息がかかるほどジンの顔に近づきその呼吸は乱れた。それと同時にジンの横にべったりとくっついて離れないパールを横目に見る。最近パールに嫉妬しているようで以前にも増してジンに対する好きの気持ちが全面に出てしまっていたのだ。

「とりあえずは剛人族について調べてみた方が良さそうだね」

「そう思い、インフォル殿に剛人族の調査を依頼しておきました」

 ゼグトスは、待ってました! と言わんばかりにドヤ顔で言ってきた。それでも流石だ。

「さすがゼグトス、ありがとう」

「いえいえ、ジン様のためならばなんなりと」

「それでインフォルはいつ戻ると?」

「昨日には伝達しましたので、おそらくもうすぐ帰ってこられるでしょう」

 ゼグトスはまるでこうなることを予知してようだった。
 するとその時ドアが開く。だがそこには誰の姿も見えない。
 ガルが「バウっ」とドアの方を吠えると、下の方に小さなモグラがいた。

「インフォル殿か? 本体を見たのは初めてだな」

 リンギルは少し驚いてインフォルを見る。
 インフォルは普段土の中にいるがたまに外に出てくることがあるのだ。

「よっ、みんなそろっとんな。ゼグトスはんから言われた通り剛人族の様子見てきたで」

 インフォルは小さな足でテクテク歩いて来ると、ゼフに抱っこされて椅子の上に座らせてもらった。

「お疲れ様、どんな感じだった?」

「それがなあ、どうも様子が変やねん。なんというか雰囲気がガラッと変わっとるは。ワシの知っとる剛人族と違うっちゅうかな」

「違うとはどういうことだ?」

「今のあいつらには自我っちゅうもんが感じ取れんかった。なんや仲間同士で会話しとる感じもなかったしな」

「裏で操ってる黒幕がいるって考えるべきかな」

「ああ、だが一度エルダンと会ってみるのがいいやもしれんな。あいつほどのものなら簡単に操られはせんだろう」

 そうして一度剛人族の集落に向かうことにしたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

処理中です...