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プロローグ
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薄暗くなった長いトンネルの中。
チカチカと点滅する古い蛍光灯。大抵、いつもここのトンネルの蛍光灯は
どこかが切れかけている。
駅から家まで帰るには
このトンネルを必ず通らねばならない。
地元でも有名な幽霊トンネルだ。
心霊スポットとして
良く雑誌やテレビの取材も来ている。
中川麻美は、ガードレールで仕切られた歩道を
ゆっくりスマホの画面をタッチしながら歩いていた。
バタバタと騒がしく走る足音に
顔を上げて音のする前方を見る麻美。
前方から大学生くらいの若い男が
髪の毛を振り乱し、もの凄い形相で走ってくる。
ーーー何? あの人。
だんだん近づいて来るその男は
「来る!……来るぞー!!!」
と叫んでいる。
麻美の肩に
ドンッと思いきり、
ぶつかって通り過ぎていった。
肩を抑えながら
後ろを振り返って
不審な男を睨んだ。
ーーーもう少しでスマホを
おっことすところだったじゃん!
ムッとする麻美。
男は、なおも何かに
追いかけられているように
何度も振り返っては必死に走り続けていた。
「うわあああああああああーー!」
狂ったように声を上げている。
麻美は怪訝な顔で
「えっ!? なんなのよ」
そう言いながらも
妙な男の視線を辿ってみる。
麻美の目の前に
大型バスが猛スピードで
バックして来ている。
テールランプが
赤く点滅していた。
「バックします」
無機質な声が響き渡る。
「バックします」
「バックします」
機械的な女性の声が
トンネル内に響いていた。
エンジンをフル回転させ
ドンドン勢いを増す路線バス。
ガシャン!
バスの右後ろ部分が
ぶつかった衝撃で
ヘコみガラスが飛び散る。
トンネルの壁に
ぶつかっても勢いは
止まらなかった。
それどころか、
壁に車体を押し付けてガリガリとその身を削り続けている。
トンネル内にある
歩道と車道との仕切りのガードレールさえも
乗り越えなぎ倒す勢いは、
何かに取り付かれたようでもあった。
呆然として
立ち尽くす麻美の目前に
バスのバックライトが
眩しく光を放ち
向かってきていた。
壁の方へ後ずさりする麻美。
「い、いやぁ! 助けてーー!」
ドンッ
何かがぶつかる鈍い音も
構わずにどんどん
バックするバスは、
決してスピードを緩めなかった。
麻美の前方にいた人達や
全てのものを次々にはねてゆく。
「きゃあああああぁ――――」
バキッ
ガシャン!
麻美の体は
大きく跳ね飛ばされて
壁に激突した。
ずるずると壁に沿って血を壁に塗りつけるようにして落ちていく麻美の体。
変形したバスは
血まみれになりながら、
まるで血を追い求める
化け物のように尚更、
スピードを増したようだった。
さっき叫んで走っていた男にも
追いついたバス。
「うぎゃーーーーっ」
という叫び声を上げた男。
ゆっくりとスピードを緩めた
バスのタイヤが
男の背中に徐々に乗っかり
ボキボキッ
骨が砕ける音が
トンネル内に響いた。
男の体が
バスの下に吸い込まれて行き、
やがて見えなくなった。
おびただしい鮮血が
トンネル内の壁、
天井、床に
飛び散り
バスは真っ赤な色に
車体を染めていた。
チカチカと点滅する古い蛍光灯。大抵、いつもここのトンネルの蛍光灯は
どこかが切れかけている。
駅から家まで帰るには
このトンネルを必ず通らねばならない。
地元でも有名な幽霊トンネルだ。
心霊スポットとして
良く雑誌やテレビの取材も来ている。
中川麻美は、ガードレールで仕切られた歩道を
ゆっくりスマホの画面をタッチしながら歩いていた。
バタバタと騒がしく走る足音に
顔を上げて音のする前方を見る麻美。
前方から大学生くらいの若い男が
髪の毛を振り乱し、もの凄い形相で走ってくる。
ーーー何? あの人。
だんだん近づいて来るその男は
「来る!……来るぞー!!!」
と叫んでいる。
麻美の肩に
ドンッと思いきり、
ぶつかって通り過ぎていった。
肩を抑えながら
後ろを振り返って
不審な男を睨んだ。
ーーーもう少しでスマホを
おっことすところだったじゃん!
ムッとする麻美。
男は、なおも何かに
追いかけられているように
何度も振り返っては必死に走り続けていた。
「うわあああああああああーー!」
狂ったように声を上げている。
麻美は怪訝な顔で
「えっ!? なんなのよ」
そう言いながらも
妙な男の視線を辿ってみる。
麻美の目の前に
大型バスが猛スピードで
バックして来ている。
テールランプが
赤く点滅していた。
「バックします」
無機質な声が響き渡る。
「バックします」
「バックします」
機械的な女性の声が
トンネル内に響いていた。
エンジンをフル回転させ
ドンドン勢いを増す路線バス。
ガシャン!
バスの右後ろ部分が
ぶつかった衝撃で
ヘコみガラスが飛び散る。
トンネルの壁に
ぶつかっても勢いは
止まらなかった。
それどころか、
壁に車体を押し付けてガリガリとその身を削り続けている。
トンネル内にある
歩道と車道との仕切りのガードレールさえも
乗り越えなぎ倒す勢いは、
何かに取り付かれたようでもあった。
呆然として
立ち尽くす麻美の目前に
バスのバックライトが
眩しく光を放ち
向かってきていた。
壁の方へ後ずさりする麻美。
「い、いやぁ! 助けてーー!」
ドンッ
何かがぶつかる鈍い音も
構わずにどんどん
バックするバスは、
決してスピードを緩めなかった。
麻美の前方にいた人達や
全てのものを次々にはねてゆく。
「きゃあああああぁ――――」
バキッ
ガシャン!
麻美の体は
大きく跳ね飛ばされて
壁に激突した。
ずるずると壁に沿って血を壁に塗りつけるようにして落ちていく麻美の体。
変形したバスは
血まみれになりながら、
まるで血を追い求める
化け物のように尚更、
スピードを増したようだった。
さっき叫んで走っていた男にも
追いついたバス。
「うぎゃーーーーっ」
という叫び声を上げた男。
ゆっくりとスピードを緩めた
バスのタイヤが
男の背中に徐々に乗っかり
ボキボキッ
骨が砕ける音が
トンネル内に響いた。
男の体が
バスの下に吸い込まれて行き、
やがて見えなくなった。
おびただしい鮮血が
トンネル内の壁、
天井、床に
飛び散り
バスは真っ赤な色に
車体を染めていた。
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