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本編

春のように暖かい

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「はんばーぐ!」
林田と母親が作った料理を目の前に、涼介は大喜び。
小さめに丸めたハンバーグは、涼介の大好物だ。
「おかわりもあるよ~、多かったら残してもいいからね」
林田の母親は涼介に麦茶をついでやると、にこりと笑って全員でいただきますをした。
「啓太くんは受験生だよね、大事な時にお邪魔しちゃってごめんね」
西條はさっき挨拶をしたきり部屋にこもっていた次男に話しかける。
あまり笑わないが、弟や妹の世話をさらっとやっているあたりいい子なのだろうと見て取れた。
「いえ、むしろ狭くて騒がしい家ですみません」
林田が前に言っていた通り、背が高くて顔立ちがはっきりとしている。
ふんわりとした雰囲気の林田とはあまり似ていないが、透き通ったような声はそっくりだ。
「久しぶりに見たらまたおっきくなった?今何cmあるの?」
林田が話しかけると、啓太は少しだけ微笑んで答える。
「4月に測った時は177だったよ、でも西條さん背高くて驚いた」
西條は182cmと、林田よりも11cm高い。
団地の低い天井の下にいると、余計に圧迫感がある。
「俺も中3の頃はそのくらいだったから、もしかしたら啓太くんも高校で更に伸びるかもね」
西條がコロッケを食べながら言う。
「そういえば京の昔の写真見たことないかも。どんなだったの?」
林田が気になって聞くと、西條はスマホを開いて写真フォルダを見せた。
「これがちょうど中3かな、生徒会長やってた時の」
学ランを着て、見るからに頭が良さそうな生徒たちと一緒に写っている一際目立った少年。
「なにこのイケメン!?もう絶対俺の写真見せられない…」
見せられる写真はどれもモデルのような美しいものばかりで、ただのデジカメで撮った写真とは思えない。
大口を開けて笑っている写真も、白くて綺麗な歯がキラリと光っているように見える。
「本当に俺と同い年…?こんなのが学年にいたら男でも好きになっちゃうよ」
啓太はそう言ってから、そういえばこの人は兄の婚約者だった、と気がつく。
「でしょ?こんな綺麗な顔でお願いされたらいくらでも子供育てちゃうよ」
会話を聞いていた母親がわははと笑い、
「さすが私の子だね」
と言う。
林田家は全員、美形好きなのだ。
「でも京のいいところはそれだけじゃないよ、いくら兄の子とはいえ独り身で引き取ろうって思えるのすごいと思う。
出かけない休日でも必ず公園に連れて行ったり、俺のことも気にかけてくれる」
料理はいくら練習しても下手なままだが、それ以外のことで補えるよう努力を欠かさない。
林田はそんな西條の姿を一番近くで見て、この人とずっと一緒にいたいと思った。
そして今日改めて、家族と仲良く話している西條を見て自分の選択が間違っていなかったことを再確認した。
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