上 下
12 / 44
本編

パパお願い!

しおりを挟む
とある日の夕方、いつも通り西條が保育園に涼介を迎えに行くと、涼介のお友達のりくくんとその母の相田さん、そして涼介が3人で西條を待っていた。
「え、お泊まり会?」
涼介とりくは目をキラキラさせ、西條が了承するのを待っているようだ。
「うん、今度長女がお友達の家でお泊まり会するんだけど、それを話したらりくが羨ましがってさ。ちょうどいいし涼介くん誘ってうちでお泊まり会したいねってことになったんだ」
西條と同い年の相田は、気さくな人柄で初めて会った時から壁を作ることなく接してくれた。
涼介を引き取ってすぐ、社内のトラブル対応と電車の遅延でお迎えが間に合わないかもしれないという時に、1人残っている涼介を心配して
「うちであずかってましょうか?」
とわざわざ園の電話で連絡をくれた人だ。
それから何度か公園でばったり会って話をするうちに、こうして親子同士で仲良くなったのだ。
しかし西條は正直、涼介を自分も林田もいない空間で寝させるのはどうだろうと悩む。
この間久しぶりに激しい夜泣きをしたばかりだし、迷惑をかけるのではないかと。

「それで一旦保留にしたんだ?」
帰宅後、夕食中にそのことを林田に話す。
今日は涼介がリクエストしたオムライスで、チキンライスをねこちゃんの形に成形してお布団のように薄焼き卵をかけたスペシャルオムライスになっている。
「うん、楽しそうだし行かせてあげたいけど、流石に泊まりは厳しいかなって。普段と違う場所で俺らもいないってなったら、またああなるんじゃないかな」
うーん、と林田はねこちゃんの耳をスプーンですくった。
「まあでも、いいんじゃない?あれは熱で悪夢を見ただけだと思うし。あれからは一度も夜泣きしてないよ」
林田の言う通り、ここ数週間様子を見ているが一度も夜泣きはしていない。
保育園のお昼寝でも特に変わりはないらしいので、もう安心してもいいのではないだろうか。
「パパ~りょーちゃんりっくんとおとまりしゅる…」
涼介がねこちゃんのほっぺにスプーンを刺しながら、困り眉で西條に訴えかける。
「あはは、ほら、涼介くんもこんなに行きたがってることだし、相田さんに事情説明して大丈夫ってことならお願いしようよ」
いざとなったら夜中に迎えに行くくらいの心構えでいよう?と、林田も一緒に西條を説得する。
弟と妹のお世話で友達と遊びに出かけたりお泊まり会をした経験のない林田は、涼介のやりたいという気持ちを尊重したかったのだ。
「うん、わかった。じゃああとで相田さんに電話しとく」
西條は悩んだ末、夜中に涼介を迎えに行く覚悟でOKした。
その返事を聞いた2人は、
「「やった~!」」
と言って小さくハイタッチをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

浮気疑惑でオナホ扱い♡

恋愛
穏和系執着高身長男子な「ソレル」が、恋人である無愛想系爆乳低身長女子の「アネモネ」から浮気未遂の報告を聞いてしまい、天然サドのブチギレセックスでとことん体格差わからせスケベに持ち込む話。最後はラブラブです。 コミッションにて執筆させていただいた作品で、キャラクターのお名前は変更しておりますが世界観やキャラ設定の著作はご依頼主様に帰属いたします。ありがとうございました! ・web拍手 http://bit.ly/38kXFb0 ・X垢 https://twitter.com/show1write

大好きな幼馴染は僕の親友が欲しい

月夜の晩に
BL
平凡なオメガ、飛鳥。 ずっと片想いしてきたアルファの幼馴染・慶太は、飛鳥の親友・咲也が好きで・・。 それぞれの片想いの行方は? ◆メルマガ https://tsukiyo-novel.com/2022/02/26/magazine/

「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。

古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。 まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。 ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。 ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

今ならもれなくもう一本ついてきます!!

丸井まー(旧:まー)
BL
ド淫乱淫魔のアーネは、男狩りが趣味である。ある日、魔王城の訓練場で美味しそうな男達を観察していると、警備隊隊長のリザードマン・ヴィッレに捕まった。訓練場から放り出されたアーネは、ヴィッレを喰おうと決意する。 リザードマン✕淫魔。 ※♡喘ぎ、イラマチオ、嘔吐、鼻から精液、男性妊娠、産卵、お漏らし、潮吹き、ヘミペニス、前立腺責め、結腸責め、フィスト、ピアッシング注意。 ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

離縁しようぜ旦那様

たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』 羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと? これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである

処理中です...