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本編
緊急事態
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林田が西條家に越してきて約2週間、それまでトイレで夜中に起きることはあっても夜泣きをしなかった涼介が、突然ダムの崩壊のようにわーわーと泣き出した。
そしてそれは、自室に布団を敷いて寝ている林田の耳にも届き、目を覚ます。
「涼介くん!どうしたの!?」
聞いたこともない声で泣く涼介に、林田は最初ベッドから落ちてどこか怪我をしたのでは?と焦った。
しかし、駆けつけた時には西條が既に起きて座ったまま抱え、落ち着かせようとしているところだった。
林田はひとまず安心し、隣に座って様子を見る。
「どうしたんだろう…寂しくなっちゃったかな」
林田も一緒に背中をさすり、泣き声が弱まるのを待つ。
耳を劈くような涼介の泣き声は、5分経ってようやく弱まってきた。
それは悲しみが癒えたというわけではなく、単に疲れて声が出なくなっているようだった。
声が枯れ、けほっ、けほっ、と咳をしながらすすり泣く。
「起こしちゃってごめんな、林田。明日も仕事だし寝てていいよ」
西條は、涼介を落ち着かせるように揺らしながら、背中を優しく撫で続けている。
林田は何も出来ないけれど、ただこのまま部屋に戻って寝ようという気にはなれなかった。
「一旦リビングで休まない?ホットミルク入れてさ。西條も疲れてるだろ」
林田がそう言ってリビングに移動し、マグカップに牛乳を入れてレンジで温める。
西條が涼介の涙で濡れた服を着替えるために林田にバトンタッチした瞬間、林田はあることに気がついた。
「あれ、なんか熱くない?」
おでこを触ると、明らかに熱い。
汗もたくさん出ているし、呼吸も荒い。
意識もぼーっとしていて、ぐったりと林田に身体を預けている。
「え、ほんと?泣いて熱くなってるだけじゃなくて?」
子育て経験の浅い西條には、子供は普段から体温が高くて泣くと熱くなるのが当たり前、という認識しかない。
今日も林田の作ったシチューをもりもりと食べ、おかわりまでしていたので、まさか具合が悪いとは思わなかったのだ。
「それもあると思うけど絶対熱あるよ。服着替えて落ち着いたら測ってみよう」
林田は急いで服を着替えさせ、お茶を飲ませる。
20分ほど様子を見たが、やはり熱は引かなかった。
西條は涼介を引き取ってから初めての熱に、慌てているようで落ち着きがない。
一方林田は、母親が夜勤の間熱を出した弟妹のお世話を数ヶ月に1回は行っていたので慣れている。
「大丈夫。熱もそれほど高くはないし、今は落ち着いて受け答えもできてるから夜の間は様子見よ。一応こまめに起きて異常がないか確認しながら、朝になったらすぐ病院連れて行こうか」
保険証ある?と朝になったらすぐに行けるようテーブルの上に準備するよう伝える。
西條は言われた通り、近くの小児科を検索して7:30から受付可能なところを見つけた。
「7時半か、午前休取れるかな」
西條が明日のスケジュールを確認しながら眉間に皺を寄せる。
「いや、俺休むから西條はちゃんと行って。午後は大事な会議だろ」
林田は涼介を抱っこしたまま立ち上がり、林田の部屋へ運んだ。
「こんな時に会議なんか言ってられないだろ。林田にも悪いし」
本当の親じゃないとはいえ、涼介を引き取ったのは西條だ。
そのくらいの覚悟ができていないと親は務まらない。
「何言ってんの、俺も一応涼介くんのママなんですけど?もういいから、西條は今のうちにゆっくり休んで。もし本当になにかあったら起こすからさ」
はいはい、と西條の背中を押し、寝室へ行かせる。
「おやすみ」
と言って寝室の戸を閉め、林田は涼介いる自室へ戻った。
そしてそれは、自室に布団を敷いて寝ている林田の耳にも届き、目を覚ます。
「涼介くん!どうしたの!?」
聞いたこともない声で泣く涼介に、林田は最初ベッドから落ちてどこか怪我をしたのでは?と焦った。
しかし、駆けつけた時には西條が既に起きて座ったまま抱え、落ち着かせようとしているところだった。
林田はひとまず安心し、隣に座って様子を見る。
「どうしたんだろう…寂しくなっちゃったかな」
林田も一緒に背中をさすり、泣き声が弱まるのを待つ。
耳を劈くような涼介の泣き声は、5分経ってようやく弱まってきた。
それは悲しみが癒えたというわけではなく、単に疲れて声が出なくなっているようだった。
声が枯れ、けほっ、けほっ、と咳をしながらすすり泣く。
「起こしちゃってごめんな、林田。明日も仕事だし寝てていいよ」
西條は、涼介を落ち着かせるように揺らしながら、背中を優しく撫で続けている。
林田は何も出来ないけれど、ただこのまま部屋に戻って寝ようという気にはなれなかった。
「一旦リビングで休まない?ホットミルク入れてさ。西條も疲れてるだろ」
林田がそう言ってリビングに移動し、マグカップに牛乳を入れてレンジで温める。
西條が涼介の涙で濡れた服を着替えるために林田にバトンタッチした瞬間、林田はあることに気がついた。
「あれ、なんか熱くない?」
おでこを触ると、明らかに熱い。
汗もたくさん出ているし、呼吸も荒い。
意識もぼーっとしていて、ぐったりと林田に身体を預けている。
「え、ほんと?泣いて熱くなってるだけじゃなくて?」
子育て経験の浅い西條には、子供は普段から体温が高くて泣くと熱くなるのが当たり前、という認識しかない。
今日も林田の作ったシチューをもりもりと食べ、おかわりまでしていたので、まさか具合が悪いとは思わなかったのだ。
「それもあると思うけど絶対熱あるよ。服着替えて落ち着いたら測ってみよう」
林田は急いで服を着替えさせ、お茶を飲ませる。
20分ほど様子を見たが、やはり熱は引かなかった。
西條は涼介を引き取ってから初めての熱に、慌てているようで落ち着きがない。
一方林田は、母親が夜勤の間熱を出した弟妹のお世話を数ヶ月に1回は行っていたので慣れている。
「大丈夫。熱もそれほど高くはないし、今は落ち着いて受け答えもできてるから夜の間は様子見よ。一応こまめに起きて異常がないか確認しながら、朝になったらすぐ病院連れて行こうか」
保険証ある?と朝になったらすぐに行けるようテーブルの上に準備するよう伝える。
西條は言われた通り、近くの小児科を検索して7:30から受付可能なところを見つけた。
「7時半か、午前休取れるかな」
西條が明日のスケジュールを確認しながら眉間に皺を寄せる。
「いや、俺休むから西條はちゃんと行って。午後は大事な会議だろ」
林田は涼介を抱っこしたまま立ち上がり、林田の部屋へ運んだ。
「こんな時に会議なんか言ってられないだろ。林田にも悪いし」
本当の親じゃないとはいえ、涼介を引き取ったのは西條だ。
そのくらいの覚悟ができていないと親は務まらない。
「何言ってんの、俺も一応涼介くんのママなんですけど?もういいから、西條は今のうちにゆっくり休んで。もし本当になにかあったら起こすからさ」
はいはい、と西條の背中を押し、寝室へ行かせる。
「おやすみ」
と言って寝室の戸を閉め、林田は涼介いる自室へ戻った。
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