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本編
美味しい朝ごはん
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林田はアラームを止め、そっとリビングに出る。
まだ2人は起きていないようなので、静かに歩いて顔を洗い、朝食の準備をする。
テーブルロールの真ん中に、ウインナーが挟めるように切り込みを入れる。
ウインナーを何本か炒め、お皿に移してそのままのフライパンで甘めのスクランブルエッグを作った。
昨日スーパーで買った無地のマグカップにコンスープの粉を入れ、用意したものをテーブルに置く。
テーブルロールは食べる直前に少しだけ焼くので、まだキッチンに置いたままだ。
林田は2人の眠る寝室をそっと開けると、涼介はすでに起きて西條の上に乗っかってゴロゴロしていた。
「涼介くん、おはよう」
涼介は林田に気がつくと、嬉しそうにベッドから降りて林田に抱っこをせがんだ。
「よく眠れた?パパも起こそうか」
林田は涼介を片手で抱えたまま、西條の掛け布団を剥がして起こす。
「西條ー、おはよ。朝ごはんできてるよ」
朝に弱い西條は、眠そうに目を擦りながら弱々しい声で
「…おはよ」
と言った。
心の中では片思いの相手が息子を抱えながら起こしてくれる、なんていい目覚めだろうと騒いでいる。
しかし身体は朝に抵抗し、再び眠ってしまいそうになった。
林田は西條が起きるまで涼介の顔を洗ってうがいをさせ、椅子に座らせる。
子供は大抵牛乳が好きだが、涼介も例に漏れず毎朝牛乳を飲みたがると昨日聞いたので、目覚めの一杯を差し出す。
ごくごく、と喉を鳴らし、涼介の小さな体に牛乳が流れ込んでいく。
最近はなくなったが、少し前までは朝起きるとまず
「ととは?ととどこー」
と言って家の中を隅々まで探していた。
それでいないのがわかると大号泣し、毎朝腫れぼったい目で牛乳を飲み、保育園に通う。
保育園は元々通っていた場所ではなく、西條が涼介を引き取ってからマンション近くの保育園に転園してきた。
延長保育で20時までは預かってくれるが、なるべく涼介に寂しい思いはさせたくないので西條は毎日定時に上がって急いでお迎えに行く。
元々月一で会っていたので西條に懐いてはいるが、それでもふとした瞬間
「ととは?」
と西條の兄を探し始めるので、大切な兄を亡くしたばかりの西條は帰宅後涼介と2人で泣いて夕飯も食べずに朝まで寝てしまうことがよくあった。
「ママもぎゅーにゅのむ?」
涼介はそんな様子など1mmも感じさせない笑顔で、林田にコップを差し出す。
「ありがと~」
子供のコップに口をつけるのは良くないと聞いたことがあるので、林田は飲んでいるふりをし、残りを涼介に返した。
そんなやりとりをしていると、ようやく目覚めた西條がふらふらと起きてくる。
「ちょ、寝癖すご」
あはは、と林田が笑う。
いつも完璧な西條の、こんなに気が抜けた姿を見たのは社員旅行以来だ。
毎年同じ部署のみんなで社員旅行に行くのだが、同期ということで林田と西條は同室になる。
部屋に洗面所があるので他のみんなと顔を合わせる時にはいつもの完璧にセットされた状態になっているが、朝食の時間まで部屋でだらだらしている西條はこんな感じだったな、と思い出す。
「ほら、朝ごはんできてるから顔洗ってうがいしてきな」
「いただきま~す」
3人で手を合わせ、それぞれ好きなように朝食を食べ始める。
今日の朝食はテーブルロールにセルフでウインナーやスクランブルエッグ、レタスを挟みケチャップやマヨネーズをかけたミニホットドッグや、コーンスープ、ミニトマト、ヨーグルトにオレンジだ。
涼介のは西條と林田で手伝いながら挟む。
涼介が大きな口でパクっ、とかぶりつき、その様子を西條がスマホのカメラにおさめた。
「かわい~、西條それあとで送って」
涼介は今日もママのとなりがいい!と言って林田の隣に座っている。
西條はもちろん涼介が食べる様子を見守る林田のことも画角に入れているわけで、林田に送ったら引かれるかも、と思ったが切り取るのも不自然なのでそのまま送信した。
3人でゆっくり朝食をとっていると、いつもより時間が無いことに気づき焦って支度をする。
涼介の歯を磨き、お皿は食洗機に入れる。
さすが独身貴族の西條家、家事を効率よく時短で済ませる家電が備わっているのだ。
2人は急いでスーツに着替え、西條が涼介の保育園リュックに必要なものを入れている間に林田が着替えさせる。
ギリギリで支度が間に合った3人は、一緒に家を出て西條は涼介を連れて保育園へ、林田は電車の定期券の区間変更があるので先に駅へ向かった。
まだ2人は起きていないようなので、静かに歩いて顔を洗い、朝食の準備をする。
テーブルロールの真ん中に、ウインナーが挟めるように切り込みを入れる。
ウインナーを何本か炒め、お皿に移してそのままのフライパンで甘めのスクランブルエッグを作った。
昨日スーパーで買った無地のマグカップにコンスープの粉を入れ、用意したものをテーブルに置く。
テーブルロールは食べる直前に少しだけ焼くので、まだキッチンに置いたままだ。
林田は2人の眠る寝室をそっと開けると、涼介はすでに起きて西條の上に乗っかってゴロゴロしていた。
「涼介くん、おはよう」
涼介は林田に気がつくと、嬉しそうにベッドから降りて林田に抱っこをせがんだ。
「よく眠れた?パパも起こそうか」
林田は涼介を片手で抱えたまま、西條の掛け布団を剥がして起こす。
「西條ー、おはよ。朝ごはんできてるよ」
朝に弱い西條は、眠そうに目を擦りながら弱々しい声で
「…おはよ」
と言った。
心の中では片思いの相手が息子を抱えながら起こしてくれる、なんていい目覚めだろうと騒いでいる。
しかし身体は朝に抵抗し、再び眠ってしまいそうになった。
林田は西條が起きるまで涼介の顔を洗ってうがいをさせ、椅子に座らせる。
子供は大抵牛乳が好きだが、涼介も例に漏れず毎朝牛乳を飲みたがると昨日聞いたので、目覚めの一杯を差し出す。
ごくごく、と喉を鳴らし、涼介の小さな体に牛乳が流れ込んでいく。
最近はなくなったが、少し前までは朝起きるとまず
「ととは?ととどこー」
と言って家の中を隅々まで探していた。
それでいないのがわかると大号泣し、毎朝腫れぼったい目で牛乳を飲み、保育園に通う。
保育園は元々通っていた場所ではなく、西條が涼介を引き取ってからマンション近くの保育園に転園してきた。
延長保育で20時までは預かってくれるが、なるべく涼介に寂しい思いはさせたくないので西條は毎日定時に上がって急いでお迎えに行く。
元々月一で会っていたので西條に懐いてはいるが、それでもふとした瞬間
「ととは?」
と西條の兄を探し始めるので、大切な兄を亡くしたばかりの西條は帰宅後涼介と2人で泣いて夕飯も食べずに朝まで寝てしまうことがよくあった。
「ママもぎゅーにゅのむ?」
涼介はそんな様子など1mmも感じさせない笑顔で、林田にコップを差し出す。
「ありがと~」
子供のコップに口をつけるのは良くないと聞いたことがあるので、林田は飲んでいるふりをし、残りを涼介に返した。
そんなやりとりをしていると、ようやく目覚めた西條がふらふらと起きてくる。
「ちょ、寝癖すご」
あはは、と林田が笑う。
いつも完璧な西條の、こんなに気が抜けた姿を見たのは社員旅行以来だ。
毎年同じ部署のみんなで社員旅行に行くのだが、同期ということで林田と西條は同室になる。
部屋に洗面所があるので他のみんなと顔を合わせる時にはいつもの完璧にセットされた状態になっているが、朝食の時間まで部屋でだらだらしている西條はこんな感じだったな、と思い出す。
「ほら、朝ごはんできてるから顔洗ってうがいしてきな」
「いただきま~す」
3人で手を合わせ、それぞれ好きなように朝食を食べ始める。
今日の朝食はテーブルロールにセルフでウインナーやスクランブルエッグ、レタスを挟みケチャップやマヨネーズをかけたミニホットドッグや、コーンスープ、ミニトマト、ヨーグルトにオレンジだ。
涼介のは西條と林田で手伝いながら挟む。
涼介が大きな口でパクっ、とかぶりつき、その様子を西條がスマホのカメラにおさめた。
「かわい~、西條それあとで送って」
涼介は今日もママのとなりがいい!と言って林田の隣に座っている。
西條はもちろん涼介が食べる様子を見守る林田のことも画角に入れているわけで、林田に送ったら引かれるかも、と思ったが切り取るのも不自然なのでそのまま送信した。
3人でゆっくり朝食をとっていると、いつもより時間が無いことに気づき焦って支度をする。
涼介の歯を磨き、お皿は食洗機に入れる。
さすが独身貴族の西條家、家事を効率よく時短で済ませる家電が備わっているのだ。
2人は急いでスーツに着替え、西條が涼介の保育園リュックに必要なものを入れている間に林田が着替えさせる。
ギリギリで支度が間に合った3人は、一緒に家を出て西條は涼介を連れて保育園へ、林田は電車の定期券の区間変更があるので先に駅へ向かった。
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