サレ妻♂になりまして、イチから恋愛始めます。

虚無

実家に戻って6日目、優斗は現れた。
インターホンが鳴り、ちょうど宅急便を待っていたこともあって、何気なく開けてしまった。
「ゆき！」
途端、優斗は俺を抱きしめ涙を流す。
意味がわからない。
母親は友達とでかけていて、父親はゴルフに行っている。
今この家には俺と優斗だけ…。
気持ちが悪いので抱きしめられた腕を必死に振り払い、
「帰って！帰って！いいから帰って！」
と必死に叫ぶ。
しかし優斗は泣きながら玄関先で土下座を始め、流石にご近所さんに怪しまれると思い家に入れてしまった。
「で、何しに来たの？」
できるだけ隙を見せないように構える。
優斗は正座で必死に意味の無い弁解と謝罪をするばかりで、埒が明かない。
「ごめん…俺、おれ…あの子と身体の関係はないから！信じて、ゆきなら信じてくれるよね…お願い…許してください…お願い…」
「ちょ、ちょっと…やめて…」
大好きな旦那に縋られて、揺らいでしまう。
それでも、今許したら終わりだ。
一度浮気したやつは、改心などしない。
バレないように、次はもっと上手くやろうと思うのだ。
わかっていても、いざ目の前にしてしまうと、拒むことが出来ない。
「許してくれる…？ゆき…お願い、俺が好きなのはゆきだけだから…お願い…浮気なんてしてない…食事してただけだから…ね…？」
唇を塞がれ、拒めないまま結局身体を許してしまう。
「んっ…んぁ…ぁ…ぅ…うぅ…」
抱かれてる最中も、優斗は謝ってばかり。
もういやだ。
愛する夫に抱かれて、気持ちよくて堪らない。
それなのに、心だけは苦しくて。
「はぁっ…ぁ、あ…んっ」
達すると、一気に虚無感に襲われた。
優斗は果てると寝てしまう癖があって、いつものように俺の上ですやすやと寝始めた。