小説家お兄さんの家で養われることになった話

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それからの二人

ピクニック

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今日は晴天で、絶好のピクニック日和だ。
俺は朝からサンドイッチを作り、前から揃えていたピクニックセットを玄関に出して、榊さんを起こした。
三度くらい起こして、やっと起きてきた。
顔を洗って、サッと汗を流しにシャワーを浴びて…。
「ピクニックしよ!」
誘うと、榊さんはにこっと笑って抱きついてきた。
「かわい~…しの」
ぎゅう、とするので少し苦しい。
榊さんに軽食を取らせ、いざ二人で外に出る。
日傘もしっかり用意してあるし、事前に日焼け止めを塗っていたので焼ける心配はない。
「暑いね~」
荷物は全部、榊さんが持ってくれている。
遊び道具もいっぱい入れたので、相当重いだろう。
芝生の広い公園につくと、早速日陰にレジャーシートを広げる。
周りには俺たち以外にも家族連れや、カップルらしき男女が、仲睦まじくピクニックを楽しんでいる。
小さめのテーブルを出し、そこに今朝作ったサンドイッチを出した。
もちろん、お菓子もたくさん持ってきている。
「うっま」
榊さんはお腹がすいていたのか、たまごサンドを口いっぱいにしている。
「じゃあ俺はね~」
レタスとハム、チーズを挟んだサンドイッチを手に取る。
他にも、照り焼きを挟んでガッツリ食べられるサンドイッチもあるし、
デザート風にクリームと苺を挟んだものもある。
二人でゆっくり、それらでお腹を満たしていく。
「最高だね~」
なんて言って、持ってきたお菓子を広げていると。
「ちょ~らいっ!」
3歳くらいの、かわいい帽子を被った男の子が俺たちのところまで来ていた。
すぐにお母さんらしき人に謝られたが、
食べられるなら、とクッキーをあげる。
「ふふ、おいしい?」
男の子をレジャーシートに座らせ、一緒にお菓子を食べる。
男の子のお母さんは、申し訳ないから…とお昼ご飯のからあげや、卵焼きなどをおすそ分けしてくれた。
「おいちっ」
かわいいなあ…。
思わず撫でたくなる。
榊さんも、微笑ましそうに男の子を見ている。
もし、俺たちに子供ができたなら、こんな感じだったのかな、なんて。
そんなこと、いくら願ったって無理なんだけど。
ただこの瞬間は、そう思ってしまうほど幸せ。
男の子はクッキーに満足すると、お母さんと一緒に自分のレジャーシートに戻って行った。
お母さんからはもう一度謝られたけれど、俺たちも楽しかったから、と逆にお礼を言った。
それから、二人で広いところまで行ってバドミントンをする。
榊さんは思った以上に運動神経がいい。
一度も羽根を落とすことなく、俺に圧勝した。
むむむ…と今度は凧揚げをする。
これはさすがに俺が…と横を見ると、俺以上に高く揚げている…。
どんだけ出来のいい人間なんだ?と悔しいを超えて尊敬する。
「は~たのしかったね、休憩しよっか」
レジャーシートに戻ると、近くにいた先程の親子はもういなくなっていた。
代わりに、ミニテーブルの上に小さいオモチャが置いてある。
「これ、お菓子についてくるオモチャかな?」
もしかすると、さっきの男の子がくれたのかも。
オモチャの隣には、パッピーターンの小さいやつが置かれている。
「本当にもらっちゃっていいのかな」
お昼ご飯もおすそ分けしてもらったのに、なんていい人なんだろう。
人の優しさに触れ、なんだか心がぽかぽかした。
帰り道、榊さんとたのしくおしゃべりしながら手を繋いだ。
俺よりも大きくて、逞しい手。
赤ちゃんは産んであげられないけれど、こうやってずっと一緒にいようね。
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