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出会い〜恋人になるまで
兄の家
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榊さんの家でお世話になってから、沢山増えた俺の荷物を抱え、迎えに来た兄の車に乗せてもらった。
全部ではない。
もちろん、帰るつもりでいる。
でもこのまま榊さんと生活を続けるには、少しだけ心の整理が必要だと思った。
曖昧になった境界線を、またしっかりと区別する必要がある。
「急にごめんね、兄ちゃん」
兄は早朝、仕事へ行く前に榊さんのマンションまで迎えに来てくれた。
連絡をすると、すぐ迎えに行くと言った。
「それはいいんだ。
久しぶりだな、柚季」
すごく久しぶりに名前を呼ばれた。
榊さんからは店で使っていたあだ名で呼ばれていたし、そもそも榊さん以外との交流がほとんどなかった。
「うん、なかなか会えなくてごめんね。
スーツのことも、ありがとう」
兄には数ヶ月前、就活するからと帰省した際にスーツを送ってもらうように頼んだ。
結果、就活は上手くいかなかったが。
車で一時間ほど走ると、兄の住むマンションに着いた。
「じゃ、俺は仕事行くから。
好きにしてていい。
夕飯は二人で食べに行こう」
俺のために、早起きして車で来てくれたんだ。
兄の部屋は独身とは思えないほどお洒落で、家具も統一されている。
榊さんの部屋は二人ともこだわりが無いから、とりあえずシンプルな物を揃えていた。
冷蔵庫を開けると、やっぱり食材はない。
ペットボトルの水と、プロテインバーが数本。
あとは牛乳があって、横の箱にはシリアルや牛乳に溶かすプロテインが入っている。
早速、荷物を置いて財布を持ち、家を出た。
鍵は合鍵を預かっている。
近所のスーパーに向かい、明日の朝用に食パン、卵、ソーセージ、切られている野菜。
あとは使えそうな食材を色々買って、腕がちぎれそうになりながら家へ戻った。
冷蔵庫はほとんど使わないからか小さくて、買ってきた食材を詰めるとパンパンになってしまった。
それが終わると、荷物からエプロンを取り出し、洗濯機を回す。
綺麗にしているとは言っても、一人暮らしだからか隅々までとは言えない。
洗面台やお風呂、トイレまで掃除を終えると、先程回した洗濯機が鳴った。
兄の服を干し、一通り家事が終わった。
あとはもう、帰ってくるまでゆっくりしていよう。
後ろの準備をしなくていいだけで、こんなにも気が楽とは。
榊さん、今頃何してるかな。
原稿は今日までだし、きっと終わって、俺がいないことに気づいてるかも。
携帯は置いてきたから、手がかりになるものは何もないはず。
そんなことを考えながら、心地の良い陽射しを浴び、昼寝についた。
全部ではない。
もちろん、帰るつもりでいる。
でもこのまま榊さんと生活を続けるには、少しだけ心の整理が必要だと思った。
曖昧になった境界線を、またしっかりと区別する必要がある。
「急にごめんね、兄ちゃん」
兄は早朝、仕事へ行く前に榊さんのマンションまで迎えに来てくれた。
連絡をすると、すぐ迎えに行くと言った。
「それはいいんだ。
久しぶりだな、柚季」
すごく久しぶりに名前を呼ばれた。
榊さんからは店で使っていたあだ名で呼ばれていたし、そもそも榊さん以外との交流がほとんどなかった。
「うん、なかなか会えなくてごめんね。
スーツのことも、ありがとう」
兄には数ヶ月前、就活するからと帰省した際にスーツを送ってもらうように頼んだ。
結果、就活は上手くいかなかったが。
車で一時間ほど走ると、兄の住むマンションに着いた。
「じゃ、俺は仕事行くから。
好きにしてていい。
夕飯は二人で食べに行こう」
俺のために、早起きして車で来てくれたんだ。
兄の部屋は独身とは思えないほどお洒落で、家具も統一されている。
榊さんの部屋は二人ともこだわりが無いから、とりあえずシンプルな物を揃えていた。
冷蔵庫を開けると、やっぱり食材はない。
ペットボトルの水と、プロテインバーが数本。
あとは牛乳があって、横の箱にはシリアルや牛乳に溶かすプロテインが入っている。
早速、荷物を置いて財布を持ち、家を出た。
鍵は合鍵を預かっている。
近所のスーパーに向かい、明日の朝用に食パン、卵、ソーセージ、切られている野菜。
あとは使えそうな食材を色々買って、腕がちぎれそうになりながら家へ戻った。
冷蔵庫はほとんど使わないからか小さくて、買ってきた食材を詰めるとパンパンになってしまった。
それが終わると、荷物からエプロンを取り出し、洗濯機を回す。
綺麗にしているとは言っても、一人暮らしだからか隅々までとは言えない。
洗面台やお風呂、トイレまで掃除を終えると、先程回した洗濯機が鳴った。
兄の服を干し、一通り家事が終わった。
あとはもう、帰ってくるまでゆっくりしていよう。
後ろの準備をしなくていいだけで、こんなにも気が楽とは。
榊さん、今頃何してるかな。
原稿は今日までだし、きっと終わって、俺がいないことに気づいてるかも。
携帯は置いてきたから、手がかりになるものは何もないはず。
そんなことを考えながら、心地の良い陽射しを浴び、昼寝についた。
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